地球衝突リスクがほぼなくなった小惑星、月衝突の確率がちょっと上昇
NBAのダラス・マーベリックスは、ドラフト1位指名権獲得の確率が1.8%だったのに、当てちゃったんだよ。4.3%は決して低くないぞ…。
NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、2032年に10階建てのビルほどの大きさの小惑星が月にぶつかる確率が、ほんの少しだけ高くなったようです。
6月5日、NASAは小惑星「2024 YR4」の月に衝突する確率が、これまでの3.8%から4.3%に上昇したと発表しました。
月への衝突確率上昇も、NASAは冷静
不安にさせたり安心させたり忙しいこの小惑星は、今年初めの初期データで約8年後に地球に衝突する可能性を示唆していたため、大きな話題になりました。
しかし、科学者がより多くのデータを収集するにつれて、この小惑星が地球に脅威を与えないことが判明しました。
しかし、2024 YR4が月に衝突する可能性はまだ残っているようです。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以下ウェッブ望遠鏡)の新たな観測結果によって、科学者が小惑星の軌道をより正確に算出したところ、月に衝突する確率がわずかに上昇したとのこと。
NASAは声明のなかで「データが集まるにつれて衝突の確率が変化するのは自然なことです」と説明しています。
2024 YR4の軌跡
チリのATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)が2024年12月に2024 YR4を初めて発見したとき、NASAはすぐに潜在的に危険な天体として警告しました。
初期の計算では、この小惑星が2032年12月22日に地球に衝突する確率は約1%でしたが、その後の数週間で、この確率は驚くべきことに3%近くまで上昇し、2月後半には最終的にゼロになりました。 たしかに慌ただしかった、あの時期は。
発見時に地球から82万9000kmの地点にいた2024 YR4は、そこから離れていったため、4月中旬には地上望遠鏡で観測できなくなったそうです。
2028年6月まで地球に再接近することはありませんが、ウェッブ望遠鏡の赤外線機能によって、地球上の技術では届かなくなったあとも、この小惑星を約1カ月間にわたって観測できたといいます。
ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所の惑星天文学者であるAndy Rivkin氏が率いる研究チームは、ウェッブ望遠鏡の近赤外カメラを使用し、2024 YR4が視界から消えていくなかで、その損傷の可能性を評価するために観測を続けてきました。
そして5月に、太陽の向こう側に小惑星が隠れてしまう前に行なった最後の観測によるデータを追加した結果、地球に衝突するといわれた2032年12月22日に小惑星が到達する位置の予測精度が20%向上したそうです。
衝突しても月への影響は小さい
さて、2024 YR4が月にぶつかる確率ですが、上昇したとはいえ、依然として比較的低いままです。また。たとえ月に衝突したとしてもその衝撃で月の軌道が変わることはないとNASAは説明しています。
さらにウェッブ望遠鏡の新たな観測データによって、小惑星のサイズを測定する精度も向上しています。3月の観測データでは、2024 YR4のサイズは直径60mとされていましたが、今回のアップデートでは直径53~67mと推定されています。
小惑星としては比較的小さいほうに分類されるみたいで、月に衝突した場合でも新たなクレーターができる程度で済むだろうとのこと。
もし衝突したら科学にとって貴重な機会に
じゃあ、月への衝突は重要な事象じゃないのかというと、そういうわけではないそうです。地球から見える場所に衝突した場合、科学者はクレーターが形成される様子をリアルタイムで観察する極めてまれな機会を得られます。
また、2024 YR4の地球への脅威がなくなったといっても、この小惑星を発見したことで、地球防衛戦略のシミュレーションを可能にしています。この経験が、将来的に人命を救うことにつながるかもしれません。
NASAは、小惑星が地球に再接近する2028年に向けて、すでに準備を始めているといいます。先述の声明によると、地上望遠鏡とウェッブ望遠鏡からのさらなる観測データは、2024 YR4の形状や組成に関するより多くの情報を収集するのに役立つと思われます。
こういったデータは、小惑星の挙動や潜在的な衝突の影響を予測するうえで重要な手がかりになるといいます。
2028年の再接近までお静かに願いますね、2024 YR4さん。また会う日まで、安全な宇宙の旅を!