軌道上でロシアの「核攻撃リスク」急増、宇宙防衛急ぐ西側 トランプのゴールデンドームは切り札になるか?
ロシアが地球低軌道上の西側諸国の人工衛星を標的に、核武装した宇宙機(スペースクラフト)の開発を急ピッチで進めているとの証拠が積み上がる中、米国と西側同盟国は宇宙防衛体制の加速と拡大に動いている。これは、米首都ワシントンきっての宇宙安全保障の専門家による分析だ。 米国有数の宇宙防衛シンクタンク、セキュアワールド財団(SWF)で宇宙安全保障・安定化担当チーフディレクターを務めるビクトリア・サムソンは、戦時下のウクライナへの支援で衛星通信インフラや高解像度衛星画像を提供している欧米の人工衛星に対し、ロシアの同時多発的な脅威が迫っていると指摘。これが動機となり、ますます多くの同盟国が宇宙での衝突に備えて武装を始めていると語る。 世界の宇宙軍事大国や競合する開発・刷新の動きに詳しい専門家として国際的に高い評価を得ているサムソンによると、宇宙防衛の点では依然として米国が世界をリードしているものの、ロシアの脅威の攻勢を受けて「初の宇宙戦争」への備えについて口にする米軍指揮官が増えている。 ロシアでは3種類の衛星攻撃兵器(ASAT)を開発中だが、サムソンは筆者とのインタビューで、最も警戒すべきは対衛星ミサイルシステム「Nudol(ヌードリ)」だと述べた。 2021年にロシアが旧ソ連時代の人工衛星を破壊してその能力を実証したヌードリは、超高速で飛散した破片の雲が国際宇宙ステーション(ISS)の軌道と交差して危険をもたらしたことで知られる。現在は改良されて核弾頭の搭載が可能になり、地球を周回する西側の衛星にいつなんどき襲い掛かってもおかしくない状態だという。 サムソンは、世界各国の宇宙防衛能力について分析したセキュアワールド財団の年次報告書『Global Counterspace Capabilities Report』2026年版で、「少なくとも一部の状況下において、ヌードリの核武装が検討されている可能性がある」と指摘している。 「ヌードリTEL(輸送起立発射機)の外観を見ると、ミサイル発射筒に環境制御システムと思しき特徴がある。これは核ミサイルの典型的な特徴だ」とサムソンは続ける。「ロシアにはこうした決定を行った前例がある。非核ミサイル防衛の有効性と信頼性をめぐる根強い懐疑論から、(弾道弾迎撃ミサイル)51T6 Gorgon(ゴルゴン)に核弾頭を搭載した」 核兵器の専門家で、ワシントンに拠点を置く軍縮NGO連合体「Coalition to Reduce Nuclear Dangers(核の脅威を減らすNGO連合)」に所属していた研究者でもあるサムソンは、「旧ソ連やロシアの軍事戦略家の中には、信頼性が高く、高速で、広範囲に運動エネルギー攻撃(キネティックストライク)と電磁パルス攻撃をもたらす核ASATこそ望ましいとの議論がある」と説明。一部の防衛アナリストはすでに「ロシアは核ドクトリンを戦術核兵器の戦時使用へと転換したと主張している」と付け加えた。