富国生命、国債購入枠を6100億円に上方修正-金利上昇でさらに増額も
富国生命保険は2025年度の国債の残高積み増し予定額を当初計画の300億円から6100億円に上方修正した。金利の上昇を受けて利回りが高い超長期債の保有を増やし、収益力を強化する。
森実潤也財務企画部長は15日の運用説明会で、超長期金利と同水準程度の外貨建て公社債を売却し、その資金を円建ての超長期債に振り向けると述べた。
外債から円債へのシフトは金利が「上がれば上がるほど規模が拡大する状況になっている」とし、30年債や40年債の利回りが3%台後半まで上昇すれば、円債残高をさらに1000億円程度積み増すことも「一つの戦略」だとの考えを示した。
富国生命を皮切りに、今週から大手生命保険会社の25年度下期運用説明会が始まる。巨額の資産を運用する生保の投資判断は世界市場を動かす可能性があり、市場の関心は高い。
4日の自民党総裁選で高市早苗氏が大方の予想に反して勝利し、同氏が主張する積極財政への警戒から30年債利回りは過去最高を更新した。財政拡大懸念を背景に世界的に超長期債利回りが急騰する中、他の生保でも国内債券への資金シフトが確認されれば、日本国債市場に安定感をもたらす可能性がある。
森実氏は超長期金利について、「自民党総裁候補の中で最も財政拡大派だった高市氏の首相就任を織り込み早めに上昇したことに加え、日本の成長率や物価上昇率を考えるとそれほど上がらない」とみている。
自公の連立解消により「これだけ政治勢力が分散すると、どのような政権になっても大規模な財政拡大には動けなくなったのではないか」と話す。日本銀行の利上げについても「政局がこれだけ混沌(こんとん)としていると10月に動くのは難しい」として、12月を見込んでいる。
含み損
今年に入ってからの急激な金利上昇(債券価格下落)により、投資家が抱える国債の含み損は大幅に拡大している。生保各社は基本的に満期まで保有することを前提に購入しているが、保有債券の時価が取得価格を50%以上下回るなど回復の見込みがない場合は、評価差額を損失として計上することが現状の会計基準で定められている。
大手4社の国内債券含み損は6月末時点で計9兆8300億円超まで拡大した。国内債で1兆7103億円の含み損を抱える住友生命保険は一部国債について、簿価の水準に回復するまで保有する「保有継続」の措置を取ることを決めた。
関連記事:住生が一部国債を「保有継続」、含み損拡大で減損リスク回避-関係者
富国生命では、保有国債の含み損は「株の含み益でカバーできる水準にとどまっているため、有価証券全体で見れば十分な含み益を確保できている」と森実氏は説明。「他社と比べてそれほど気にしていない」とした。
【10月時点の25年度運用計画(残高の増減、▲は減少)、単位:億円】
国債 オープン外債 国内株 外国株 オルタナティブ 富国 6100 ▲4000 300 300 300【25年度下期の金融環境見通し(年度末)】
国内10年金利
(%)
国内30年金利
(%)
米国10年金利
(%)
日経平均株価
(円)
S&P500
(ポイント)
ドル・円
(円)
ユーロ・円
(円)
富国1.4~2.0
(1.8)
2.9~3.8
(3.4)
3.6~4.7
(4.3)
3万7000~5万4000
(5万)
6000~7500
(7000)
135~160
(145)
157~186
(168)
関連記事 富国生命、円債の購入枠を大幅拡大-超長期金利上昇で外債からシフト— 取材協力 Nao Sano and Mia Glass