無印良品、巨艦店で古着販売の「ReMUJI」快走 ユニクロに先行
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3月に奈良県橿原市で開業した世界最大の無印良品、「無印良品 イオンモール橿原」。広さは約8200㎡に上り、銀座の旗艦店の2倍近い。社内で「売り場がちゃんと埋まるのか」と不安視する見方が出たほどだ。
良品計画の清水智社長は「ライフスタイルを前面に押し出す店舗で、無印良品の全てを見られる」と強調する。店内には子ども用の遊び場や飲食スペースもあり、週末は家族連れなどでにぎわう。目玉は古家具や古着、中古の収納用品などを販売する「ReMUJI(リムジ)」のコーナーだ。
9月上旬に店舗を訪れると古着を自分の体に当てたり、中古の食器棚を開けたりする来店客の姿があった。回収スペースには来店客が持ち込んだ古着や家具、プラスチック容器などが集まっていた。
ReMUJIは良品計画が展開するリユースやリサイクルなど資源循環活動の総称だ。清水社長は「ReMUJIはきちんとビジネスとして回っている、成功した取り組みだ」と強調する。資源循環を統括する松枝展弘執行役員も「事業性との両立が何よりも重要だ。衣料品のリユースには大きな可能性を感じている」と語る。
良品計画は服のリサイクルを2010年に始め、15年には衣料品のリユース販売にも乗り出した。23年に古着の試験販売を始めたファーストリテイリングと比べても一日の長がある。
代表的な商品は古着に染色加工を施した「染めなおした服」や、使用済みのシャツやジーンズをつなぎ合わせた「つながる服」だ。24年8月期は古着やリメークした服を約5万6000枚販売した。
染めなおした服シリーズは顧客から着なくなった無印良品の衣料品を回収し、染色工場で染めなおす。主に黒や藍色の商品を扱うが、橿原の店舗では奈良県内の農家から引き取った柿の皮で薄いオレンジ色に染めたシャツも売っている。10月には、バターチキンカレーの生産工程で出る玉ねぎの皮を使って染めた黄色いシャツも、橿原など一部店舗で発売した。
アパレル企業による古着販売は回収や選別、加工、輸送などにコストや手間がかかり採算を確保するのが難しいとされる。それでも松枝氏は「衣服のリユース販売は、新品の衣料品と同等か、それ以上の利益を出せている」と語る。
背景には回収量の増加がある。24年8月期に約97トンになり、4年前の5.7倍に増えた。回収量が増えればスケールメリットでコストを抑えられるほか、品ぞろえも増やせる。「勝ちパターンが見えてきた」と松枝氏は言う。
25年には地域の中核店舗を中心に、リユース・リメーク品の販売店舗を30店舗から45店舗に増やした。顧客の認知度を高め、衣料品の回収量も増やしたい考えだ。
ただし回収した衣料品は全てをリユース・リメークして販売できるわけではない。残った衣料を焼却処分せず、有効活用することが重要になる。そこで使用済み衣料のリサイクルに向け、帝人の繊維子会社の帝人フロンティアと準備を進めている。
24年8月、堂前氏ら良品計画の役員が松山市にある帝人フロンティアの拠点を訪れた。見学したのはポリエステルをリサイクルする実験プラントだ。良品計画は回収した衣料のポリエステルをリサイクルし、衣料品原料に使うことを検討中だ。
資源循環は規制対応の観点からも重要度が増している。アパレル産業に詳しいA.T.カーニーの福田稔シニアパートナーは「欧州では拡大生産者責任(EPR)の概念が一般的になり、法体系のベースになっている」と指摘する。
EPRは企業が自社商品について廃棄や循環まで責任を持つべきだという考え方だ。フランスが衣料品などの資源循環を促す法整備で先行しており、日本でも経済産業省が24年に繊維製品の資源循環などについて取り組むべき項目を定めたガイドラインを出した。
衣料品をリユース・リサイクルすれば新品の生産量を減らせて、温暖化ガスの排出削減にもつながる。米トランプ政権は気候変動対策などに消極的だが、福田氏は「一時的な逆風はあるが、気候変動の深刻さを考えると不可逆的な流れだ」とみる。
良品計画の清水社長は「ESGは当社の本業だ」と言い切る。環境や人権への配慮を経営の根幹に据え、それを事業の経済合理性とも両立させる。「大量消費社会へのアンチテーゼ」として生まれた同社が業界の模範となれるか。真価が問われている。
我々は複合された繊維を分離しリサイクルする技術も検討しています。実用化できれば良品計画にも活用してもらいたいと思っています。(談)
(日経ビジネス 梅国典)
[日経ビジネス電子版 2025年10月6日の記事を再構成]
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