ムーディーズの米格下げ、香港年金基金に米国債強制売りのリスク

Greg Ritchie、Echo Wong

  • 資産10%超配分はAAA格付け前提、現在は日本のR&I1社のみ
  • 投資ファンド協会、米国債は例外扱いするよう規制当局に提言

香港の年金基金運用者はムーディーズ・レーティングスが米国の格付けを引き下げたことを受け、保有する米国債の強制売却に追い込まれる可能性を指摘している。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  香港の年金制度、強制積立基金制度(MPF)の下で運営される合計1兆3000億香港ドル (約24兆円)相当のファンドは、米国が承認された格付け機関からAAAまたは同等の格付けを受けている場合にのみ、資産の10%超を米国債に投資することを認められている。先週のムーディーズによる格下げ後、AAA級格付けを付与しているのは日本の格付投資情報センター(R&I)のみとなった。 

  香港投資ファンド協会(HKIFA)は香港強制積立基金制度管理局(MPFA)と財経事務・庫務局(FSTB)に、運用会社の懸念を伝えたと、関係者らは非公開情報であることを理由に匿名で述べた。米国債については例外的にAAAより1段階低い格付けであっても10%を超える配分を認めるよう、当局に提言したという。

  香港法の定める非常に厳格な投資規制に、米国債が抵触するリスクが浮き彫りになった。MPFAによると、米国債へのエクスポージャーを持つ可能性のある債券ファンドと混合資産ファンドは、2024年末時点での運用資産が4840億香港ドルに達している。

  MPFAの報道官は米国債が依然として格付け会社1社から最高格付けを受けているため、特別待遇の対象となることを確認した。

  FSTBの広報担当者は「MPFAとともに今後も市場の最新動向を注視し、必要に応じて加入者利益を保護するための適切な対応を講じる」と述べた。HKIFAはコメント要請に応じなかった。

  日本のR&Iは今のところ米国債の格下げは検討していないとしている。チーフアナリストの原一樹氏は、2月にAAA格付けを見通し「安定的」で据え置いたと指摘し、現在の格付けを維持するというのが基本的な考えだと述べた。

原題:US Downgrade Sounds Alarm for Hong Kong Funds in Treasuries (2)(抜粋)

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