米株最高値更新の原動力、利益予想の引き上げ加速-持続性は不透明
S&P500種株価指数の最高値更新が続いているのは不思議ではない。ウォール街のアナリストが7-9月期の利益予想を約4年ぶりのペースで引き上げているためだ。
シティグループが算出する米企業の1株利益予想における上方修正と下方修正の比率を示す指数は、2021年12月以来の高水準にある。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによれば、企業の見通しと市場予想を比較したガイダンス指標も、過去約4年で2番目に高い水準にある。
こうした状況は、トランプ関税懸念で同指標が過去10年の最低水準にあった今年前半からの劇的な反転を示す。
もっとも、この楽観ムードには留意点がある。トランプ大統領の貿易戦争が企業のサプライチェーンや利益率に本格的な影響を及ぼすまでには、数カ月かかる可能性があるからだ。
PNCアセット・マネジメント・グループのチーフ投資ストラテジスト、ユンユ・マー氏は「アナリストは数カ月前、関税を巡る数多くの『もしも』を懸念して利益予想を引き下げた」と指摘。「今では、当初懸念されていたほど経済に壊滅的な打撃を与えることはないとの見方が強まっている。ただ問題は、今後数カ月の関税動向を誰もが注視している点だ」と語った。
通年の利益見通しがなお回復していない理由もそこにありそうだ。アナリスト予想では、2025年の利益成長率は9.2%と見込まれており、年初時点の約13%を依然として下回っている。BIが集計したデータによれば、アナリストはS&P500種採用企業の2025年の1株当たり利益を約269ドルと予想。これは年初の273ドル、1年前の279ドルを割り込む水準となっている。
業績予想の引き上げトレンドが続く保証もない。NEIRGウェルス・マネジメントのニック・ギアクマキス社長によると、今後数カ月でセルサイドのアナリストや企業が予想を下方修正する可能性もある。
そうした展開はトランプ政権1期目にも見られた。2018年初めに米中貿易戦争が激化したものの、企業利益への打撃が表面化したのは約1年後だった。当時についてギアクマキス氏は、大規模な法人減税が景気の追い風となっていたと指摘した。
今回もトランプ氏の看板政策である大型減税・歳出法が、通商政策が経済に与える影響への懸念を和らげている。ただBIによれば、同法がS&P500種採用企業の税負担を軽減する効果は、2017年の減税措置の半分程度にとどまる見通しだ。
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・コスティン氏は15日付の顧客向けリポートで、アナリストによる業績予想引き上げの流れは「今後弱まる」との見方を示した。その上で「コンセンサス予想に織り込まれている増益幅は非現実的に見える」と付け加えた。
市場参加者は今週、ウォルマートやターゲットなど大手小売企業の決算発表を通じ、トランプ関税が個人消費に与える影響を見極めることになる。
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企業業績はここ数年、急激なインフレから数十年ぶりの高金利といった逆風に直面しながらも底堅さを示してきた。投資家の多くは、企業利益が圧迫される前にトランプ氏が関税措置を緩和あるいは撤廃することに期待を寄せている。
NEIRGのギアクマキス氏は「企業は世界貿易の行方が不透明な中で、関税発動前に積み上げた分を取り崩している状況だ」と指摘。「企業への影響が本格的に見えるようになるまでには数四半期を要するだろう」と語った。
原題:The Magic Force Driving US Stocks to Records? Earnings Upgrades(抜粋)