ノリス一転「ピアストリ擁護の姿勢」に変化…マクラーレン首脳も”素人批判”を撤回─米スプリント同士討ちの責任はどこに
マクラーレンにとって2025年F1第19戦アメリカGPはこれまでのところ、悪夢の週末となっている。土曜のスプリントレースで、オスカー・ピアストリとランド・ノリスがターン1で接触し、両車ともリタイアに追い込まれたのだ。
この事故により、ドライバーズ選手権争いでマクラーレン勢を追うマックス・フェルスタッペンが大きくポイントを詰める結果となり、タイトル争いの構図がまた一つ揺らぐこととなった。
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ターン1で発生した多重クラッシュにより停止したマクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、2025年10月18日(土) F1アメリカGPスプリント(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
今回の接触事故は、前戦シンガポールGPでの出来事の記憶が生々しい中で起きた。マリーナベイ市街地コースでは、ノリスがオープニングラップでピアストリをオーバーテイクしようとした際に接触。ノリスは後日、チームからシーズン末まで続く制裁措置を科されることになった。
ドライバーもチームもこの“制裁”の具体的な内容を明かしていないが、ザク・ブラウンCEOが「レースには一切影響しない」と語っていることから、ガレージ内での出走順など、予選時にピアストリへわずかなアドバンテージを与える形の措置とみられている。
実際、オースティンで行われたスプリント予選と本予選の両セッションでは、そのような対応が確認されている。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)でのスプリントでは、3番手スタートのピアストリが、ターン1でノリスのオーバーテイクを試みた際、イン側にいたニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)と激しく接触した。ピアストリのマシンは宙に浮き、その反動でノリスに激突する形となった。
ブラウンとアンドレア・ステラ代表は当初、ヒュルケンベルグを厳しく非難。ブラウンは「アマチュアじみた運転だ。ニコ・ヒュルケンベルグがオスカーに突っ込んだ」と憤慨した。
しかしながら数時間後には「見直した結果、考えを改めた。ニコに非があるとは言えない」と前言を翻した。
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リタイヤを経てスクーターでガレージに戻るランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月18日(土) F1アメリカGPスプリント(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
当初、ノリスは「オスカーがぶつけられたのに、なぜ彼のせいになるんだ?」と、ピアストリを強く擁護していた。だが予選後のインタビューではトーンが変化。「チームとして全てを見直すことになる。まだ分からない部分がある」と、より慎重な表現に切り替えた。
ピアストリ本人は「レーシングインシデント」との見解を示しつつも、「後続のマシンが3ワイドになっていると分かっていたら、違う行動をしたかもしれない」と語り、別のアプローチを取る余地があったと認めた。
ステラによれば、この件については今週末後に両ドライバーを交えて詳細なレビューが行われる予定だ。
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予選後のパルクフェルメで会話するポールポジションのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と2番手ランド・ノリス(マクラーレン)、2025年10月18日(土) F1アメリカGP予選(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
この事故で最も得をしたのは、スプリントレースを圧倒的な速さで制したフェルスタッペンだ。4度のF1王者は首位ピアストリとの差を55ポイント、ランキング2位ノリスとの差を33ポイントにまで縮めた。さらに本予選でもポールポジションを獲得し、タイトル争い復帰への勢いを一段と強めた。
もしマクラーレンの2台がターン1を無傷で通過していた場合、フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインを飾れていたかどうかは分からない。それだけに、この同士討ちはマクラーレンにとって最悪の展開であり、シーズン終盤のタイトルレースに痛手を残す結果となった。