「組織の要諦は仲間裏切らない」山尾志桜里氏 公認見送り、玉木氏は一言メッセージ(下)
参院選(7月20日投開票)に国民民主党から出馬予定だった山尾志桜里元衆院議員は、産経新聞のインタビューで、国民民主が新人議員も含めた両院議員総会で公認取り下げを決めた過程について「経緯も事情も知るすべのない新人に責任を転嫁するやり方は適切とは思えない」と、党のガバナンスのあり方を疑問視した。一連の経緯を振り返って「組織の要諦は仲間を裏切らないこと」と述べた一方、玉木雄一郎代表ら同党のメンバーに対して「同志のような気持ちは消えない」とも語った。
村八分、演出された
──玉木氏は、山尾氏の公認取り消しを決めた翌12日、SNSで「山尾さんに対して(中略)本人にお詫びしました」と明かしたが、どのような謝罪だったのか
「(フェイスブック傘下の通信アプリの)メッセンジャーで、一言謝罪の言葉があった。具体的な中身は避けたいが、玉木代表が『お詫びした』と公に発信していることを知り、これが公党としての謝罪という趣旨なのであれば違和感があった。公認取り消しという重い決断の言葉は、メッセンジャーではないはずだ。対面でちゃんと話すことが大事だと思う」
──国民民主は公認候補の選考基準など党のガバナンスコードの整備を進める
「今回の件を振り返ると、党の指示系統が統一されていない印象を受ける。一連の経緯の全体像を知っている人はおらず、限界があるのでは。私の件のみならず、検証すべき事案はほかにもあるはずだ。そうした事実確認から逃げて、ガバナンスコードを持ってきても、魂は入らない。政党法を作る必要性も感じるし、公認過程で第三者のチェック体制を組み込む必要もあると思う」
──両院議員総会で公認見送りを決めた
「正直、知らない方々による村八分を演出された感覚があった。今の党内は(昨年の衆院選で初当選した)新しい人がほとんどだ。一連の経緯や私自身を知る党役員の責任で判断すべきではなかったか。公認内定を巡る経緯も、理由も、背景事情も知るすべのない新人に責任を転嫁するやり方は、組織として、リーダーとして適切とは思えない」
「公認内定後にSNSで候補者が『炎上』したり、そうした動きを(特定の勢力に)作り出されたりした後に、政党が、候補者に辞退を迫ったり、候補者側の責任による取り消しを模索したりすることは今後もありえるだろう。水面下で候補者にリスクを背負わせる構造が続けば、政治参画を目指す人材は先細る。ぜひ改善してほしい」
「山尾姓」出馬に批判の声、違和感
──実際、公認辞退は考えたのか
「玉木代表だけでなく、榛葉幹事長や伊藤孝恵広報委員長など、結党時の仲間であり現在の党幹部から、『戻ってきてほしい』と繰り返しあたたかいお声がけを頂戴した。それでもなお、家族への影響も含めて悩んで悩んだ末に決断し、後援会や支援者らに国民民主から出馬すると約束した。その責任において、私の側から辞退するという選択肢はなかった」
会見で令和3年10月に行われる衆院選に比例東京ブロックから出馬を表明する国民民主党の山尾志桜里氏。右後方は玉木雄一郎代表=3年1月24日、国会内(春名中撮影)「SNS上の世論は世論の『一部』であって『全部』ではない。そういうことも、玉木代表はじめ党幹部には申し上げていた。もともと玉木代表から『憲法や人権外交、安全保障など実務的な仕事をやってほしい』として、出馬の打診をいただいた。党として出馬を要請した具体的理由を、執行部から党内外に直接説明する努力をしてくれないかともお願いしていた」
──戸籍名の菅野姓ではなく山尾姓で出馬することに、一部から批判が上がった
「『山尾』でないと議事録で過去の質疑は検索できない。過去の実績も指摘も含めて、有権者の審判を誠実に仰ぎたいと考えて選択した。姓に対し個人の選択を尊重する立場にあるはずのリベラルの側から、あくまで一部からの声だったとは思うが、その選択を批判する意見があったことについては二重基準ではないかと違和感があった」
「山尾姓は元夫の姓だが、結婚を契機に自分で選び取った姓だ。人生の一部だ。旧来型の一部のリベラルは、女性に対し『制度と戦う女性像』を期待し過ぎているのではないか」
今の国民民主は「保守しぐさ」
──国民民主は公約に『日本人が払った税金は日本人のために使う』と掲げた
「右のレッテルを奪いに行くしぐさに感じてしまう。国民民主は改革中道だったはずだ。保守的な安定感は必要だが、『保守しぐさ』は求められていない。東京都議選で(地域政党の)都民ファーストの会が議席を増やしたが、そうした左右に偏らない受け皿が必要とされていることの表れではないか」
──国民民主と一線を画すのか
「離党し無所属に戻ったので、当然一線は画す。一切交流しないというのではなく、ニュートラルだ。国民民主党であれ、他の政党であれ、国をよくしたいと思い、人生をかけてリスクを取って政治をやっている集合体なので、尊敬の念は今もある。玉木代表も何年も党代表として代わりがいない中、苦しみながら走り続けている。同志のような気持ちは消えない」
──伝えたいメッセージは
「仲間になった人に対し、公認辞退の圧力をかけたり、あら探ししたり、責任転嫁したりすべきでない。組織の要諦は仲間を裏切らないことだ。私自身、今は無所属だが、国政を目指すに当たっては、政治も人生も仲間抜きでは成し遂げられない。私の中にも、どこか一匹おおかみのような部分があったかもしれないが、これからは、仲間とともに日本のために汗をかけるような政治家になっていきたい。これは一連の経緯からの学びです」(聞き手・奥原慎平)