早くも出てきた高市首相退陣説 キングメーカー麻生副総裁の頭にある「次のタマ」は

4月6日の参院予算委員会で答弁のため挙手する高市早苗首相 この記事の写真をすべて見る

トランプと会談してやり方が伝播したのか、Xが見逃せないよ」

【写真】キングメーカー麻生副総裁の頭にある「次のタマ」と言われるのはこの人

 スマートフォンを手に苦笑するのは、自民党で旧安倍派だった衆院議員のA氏だ。スマホで高市早苗首相のXのポスト(投稿)をチェックするのが日課になっているのだという。

 政府の重要な事項や外交、内政での反論などをXで自ら発信するトランプ米大統領にならったのか、高市首相もメディアや国会で指摘されたことへの反論をXで発信している。4月5日には、メディアで「参議院の集中審議に応じない」「ナフサの供給不足が懸念される」などと指摘されたことについて、次のようにXで反論した。

〈私が参議院予算委員会の集中審議に応じない意向を示していたとの報道は、全く事実ではありません〉 〈昨日の一部報道番組で、ナフサの供給について、「日本は6月には供給が確保できなくなる」との指摘がありました。(略)指摘は事実誤認であり、そのようなことはありません〉

 官邸にはメディアに対応する官房長官がいるのに、首相が自らSNSで記事に反論するのは異例だ。官邸関係者のB氏がこう話す。

「高市首相がイライラしている様子なのがよくわかります。とりわけあの記事以来はね」

 B氏が指摘する「あの記事」とは、月刊誌「選択」4月号(4月1日発売)に掲載された

〈高市が「退陣」を口にした夜 幹部が嘆く官邸機能「崩壊」〉

 という記事のことだ。

 選択の記事によれば、高市首相はトランプ大統領の要請に応じてホルムズ海峡に自衛隊を派遣する腹積もりだったが、それに反対した内閣官房参与の今井尚哉氏と激論になった。今井氏から「あんた、何考えているんだ」などと“恫喝”めいた反論をされた高市首相は恨みに思い、政府関係者に「あいつに羽交い絞めにされた。許せない。切るつもりでいる」と息巻いた。結局、自衛隊派遣はしないことになったが、日米首脳会談後、高市首相は「休むべきかもしれへん」と退陣をにおわせた、という。

 選択の記事を意識したのか、高市首相の5日のポストには、こんな記述もある。

〈それにしても、他の事も含めて、最近は事実と全く異なる報道が増え過ぎている事は残念です〉

 4月7日の参議院予算委員会では、立憲民主党の杉尾秀哉氏から選択の記事について質問され、高市首相はこう述べている。

「今井さんの名誉のために言いますが、そのような話を私にしに来られたことはありません。完全な誤報です」


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安倍政権時代、安倍首相の秘書官だった今井尚哉氏(左)=2019年2月

 今井氏は、高市首相が敬愛する安倍晋三元首相の首相秘書官だった人物で、長期政権を支えた敏腕ぶりに定評がある。高市氏が首相に就任すると、すぐに今井氏を官房参与に迎え入れた。それが選択の記事のように、高市首相と今井氏がバチバチと対立する関係になったのなら、政権を揺るがしかねない一大事だ。

「選択の記事のように、高市首相がすぐ退陣するなんてことはないよ。ただ、先はわからない」

 こう話すのは冒頭のA氏だ。

 高市氏は昨年9月の自民党総裁選を勝ち抜いて総理総裁の座をつかみ、今年に入ると電光石火の解散・総選挙を仕掛け、衆院選で過半数をはるかに超える316議席獲得という歴史的な勝利を飾った。その後、米国・イスラエルとイランが戦闘を始め、原油供給の不安や物価高など懸念材料も多い中、メディアの世論調査では今も60%を超える内閣支持率をキープする。トランプ大統領との会談も、世論調査の評価は高い。

「支持率はずっと高いままで安定している。もっとも、支持率は一度下降基調になると止まらなくなるのがこれまでの歴史。国会での高市首相の姿は、関節リウマチのためか黒い手袋をつけ、げっそりとやせた感じで、とてもじゃないが健康そうには見えない。好きなタバコの本数も増えるばかりらしいしね。支持率が落ちてくると、突然、辞めちゃう可能性はあるんじゃないか。第1次政権の安倍元首相がそうだったように……」(A氏)

 2006年9月、安倍元首相は高い支持率を誇った小泉純一郎元首相の“後継”として第1次政権を発足。「美しい国日本」をキャッチフレーズに高い内閣支持率を誇った。だが、閣僚の失言や「消えた年金」問題などで支持率が急降下。安倍氏は07年7月の参院選で過半数割れと大敗した後も首相続投を表明したが、同年9月、持病などを理由に突然辞任した。

「高市おろし」が始まる可能性も

 高市内閣の支持率が下がってきた場合、党内基盤の弱い高市氏が「おろされる」可能性も出てくる。黙っていられないのが“生みの親”である麻生太郎副総裁だろう。昨年の総裁選では、麻生氏のバックアップがなければ高市氏が総理に駆け上がることはなかった。高市氏は麻生氏を副総裁に起用するだけでなく、麻生氏の義弟の鈴木俊一衆院議員を幹事長に、麻生派の有村治子参院議員を総務会長に起用して恩義に応えたが、その後は次第にワンマンぶりを見せ始める。麻生氏や鈴木幹事長に相談しないで物事を決めるようになり、衆院解散という大事な決定すら事前に麻生氏に相談せず、今井氏のアイデアに従ったと報じられている。


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キングメーカー麻生氏の“次のタマ”という声がある茂木敏充外相

 麻生派幹部のCさんはこう話す。

「麻生会長は、高市首相について、『なんもいってこない』『どうなんだろう』と言ってました。麻生会長としては『わかってんだろうな』って感じですよ。口にはしないが、誰が総理総裁にしたんだと言いたいのではないか。麻生会長が見限れば、高市首相の天下も長くないんじゃないですか。それどころか、高市おろしに動くかもしれない」

麻生氏の頭に「つなぎの茂木氏」?

 麻生氏がキングメーカーとしてにらみを利かせ続けるためには、次の総理候補が必要となる。そこで名前があがるのが、高市首相とトランプ大統領の首脳会談の場にもいた茂木敏充外相だ。昨年の総裁選前から、茂木氏はしばしば麻生氏と会食をして、アピールを続けている。

「麻生氏の頭には、高市首相を降ろして、茂木氏でつないで、その次に長期政権をはれるタマを、という考えはありますよ」(前出・Cさん)

 自民党で長く政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信氏はこう話す。

「高市首相は派閥の長ではないのに、総理になった。大きな派閥の支えがあれば党内外で守ってくれるが、そうはいかない。そこが弱みで『早期退陣説』みたいな報道にもつながっている。Xの反論ポストも、支える人が少ないので、自ら世論形成に動いているところもあるのだろう。高市首相が長期政権を目指すのならば、過半数の議席がなくアキレス腱となっている参議院。そこにきちんと手当てできるかどうかが大事だと思います」

(AERA編集部・今西憲之)

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大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。
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