【解説】 プーチン氏とネタニヤフ氏、トランプ外交における二つの困難

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アメリカのドナルド・トランプ政権が多くの時間と労力を費やしている二大外交分野に、24時間で二つの重大な課題が持ち上がった。

これらはまた、トランプ大統領の権威に対する重大な侮辱とも言える。

というのも、ウクライナとパレスチナ・ガザでの二つの紛争について、トランプ氏は迅速かつ断固として対処すると述べていたためだ。

それぞれの紛争で、問題はあるものの当然、同盟者だとトランプ氏がみなしている指導者たち、つまり、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、ホワイトハウスの和平努力を台無しにした。

考慮すべきはそのタイミングだ。ドーハでの急襲は、トランプ政権がガザ戦争終結に向けた最新の提案を提示してから、わずか2日後に実行された。

トランプ氏はソーシャルメディア上で、ガザのイスラム組織ハマスに対し「これが最後の機会だ」と警告していた

「ハマスには、受け入れなかった場合の結果について警告している」とトランプ氏は7日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。「これが最後の警告だ。次はない!」と。

ドーハでは、ハマスの幹部らが対応を協議するために集まっていたが、イスラエルはその返答を待たなかった。この攻撃は、アメリカの最新案を吹き飛ばしただけでなく、トランプ政権が大きく依存していた、ガザ外交の繊細な枠組み全体を破壊した可能性がある。

アメリカがイスラエルの急襲をいつ、どのように把握したのか、また阻止するために何かできたのかについて、議論が巻き起こっている。カタールには、世界でも有数の重要なアメリカ空軍基地が存在している。そのため、アメリカがイスラエルの戦闘機の接近を把握していなかったとは考えにくいとの見方が広がっている。

しかし、もしアメリカ政府からの「ゴーサイン」が出ていなかったとすれば(多くの関係者は出ていたと見ているが)、それは、トランプ氏がネタニヤフ首相の行動に影響を与える能力について、何を語っているだろうか。

2023年10月7日にハマスの武装勢力によって屈辱を受けて以降、イスラエルは2年間にわたり、中東全域で軍事力を誇示してきた。これらの行動の多くは、アメリカの黙認または明白な承認のもとで行われている。

イスラエルは、イエメンやイランといった遠方の国々に対しても自由に攻撃を加えることができる、地域の覇権国家としての地位を確立した。

ただし、これらのケースでは、アメリカも作戦に関与しており、目的を共有していた。具体的には、イスラエルや紅海の海上交通に対するイエメンのフーシ派の攻撃を阻止すること、そしてイランの核開発を妨げることだ。

しかし、カタールへの攻撃はまったく異なる。カタールはアメリカの重要な地域同盟国だ。

トランプ氏は、この件について「非常に不満に思っている」と述べた。ホワイトハウスの説明によれば、イスラエルによる急襲の情報が届いたのは遅すぎて、カタールに対して有効な警告を行うことはできなかったという。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、「カタール国内で一方的に爆撃を行うことは、主権国家でありアメリカの親密な同盟国でもあるカタールが、平和の仲介に向けて非常に努力し、勇敢にリスクを取っている状況を踏まえれば、イスラエルやアメリカの目標達成にはつながらない」と、記者団に語った。

アメリカが共謀していたとの疑念を払拭するには不十分だが、この発言には本物の怒りが感じられた。

一方、ネタニヤフ首相は、この作戦は「完全に独立した行動」だと強調した。

米紙ワシントン・ポストのデイヴィッド・イグナティウス氏によれば、イスラエルが「炎の頂上作戦」と名付けた今回の攻撃は、ハマス幹部がカタールで標的にされることはないという、アメリカおよびイスラエルの保証にもかかわらず実行されたという。

仮にそうした保証があり、それがこれほど公然と無視されたのなら、湾岸諸国におけるアメリカの弱体化の兆候として受け止められるのは避けられない。

ロシアの飛翔体がポーランドに着弾したのは今回が初めてではないが、これまでの事例は国境付近であり、偶発的なものと見られていた。

しかし、9日未明に発生した領空侵犯は、偶発的なものとは到底言えない。ポーランド当局によると、ロシアのドローン19機がポーランド領内に飛来し、一部は深く侵入したという。

ポーランドのドナルド・トゥスク首相は議会で、「第2次世界大戦以降で最も、直接的な衝突の危機に直面している」と述べた

ロシア側は関与を否定している。だが、大方は今回の行動について、ロシアによるNATOの対応力を試す意図的な試みだとの見方で一致している。

そして、アメリカが依然としてNATO最大の軍事力を持つ加盟国である以上、これはトランプ氏の対応力を試すことも意味している。

ドーハでの攻撃には即座に反応したトランプ氏だが、ポーランドの件に関しては、明らかな消極姿勢を示しており、その沈黙は注目を集めた。

ウクライナ紙キーウ・ポストは、「NATO加盟国が初めてロシアの軍事資産を迎撃・撃墜したというニュースに対し、ホワイトハウスは驚くべき沈黙で応じた」と報じている。

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画像説明, ロシアのドローンは、ポーランドで住宅の屋根を破壊した。周辺にはポーランド兵らが出動した

「トゥルース・ソーシャル」への投稿は、最終的に、そして予想通り行われた。

「ロシアがドローンでポーランドの領空を侵犯?」とトランプ大統領は書き込み、やや曖昧な表現で「さあ、始まるぞ!」と付け加えた。

しかし、当初の沈黙と、自らの制裁発言を実行に移す意思が見られない姿勢は、ウクライナを支援する西側諸国に、これまでと同様の疑念を抱かせている。つまり、トランプ氏の真意がどこにあるのかわからないのだ。

ただし、状況は変わりつつある。ヨーロッパの当局者らはアメリカ側と連携し、トランプ氏がホワイトハウスに復帰して以来、初となる制裁パッケージの策定を進めている。

とはいえ、トランプ氏が過去にNATOに対して示してきた曖昧な姿勢を踏まえて、加盟諸国は、同盟国の主権が脅かされた際にアメリカが確実に対応することの保証を改めて求めている。

最近では、NATO加盟国がウクライナ向けにアメリカ製の軍事装備を購入できるようにする合意が成立し、加盟国が自国の防衛費を増額する動きも見られるなど、同盟内の関係改善が進んでいる。トランプ氏も、大統領1期目で見せたNATOへの敵対的な言動を控えている。

一方、NATOのヨーロッパ加盟国は、自分たちの安全保障を守るため、さらなる取り組みが必要なことを認識している。ポーランドの領空監視はその好例だ。

それでも、アメリカの軍事力と政治的影響力は依然として同盟の基盤であり、トランプ氏がそれを行使する意思があるかどうかについては疑問が残る。

2日間で二つの紛争、そして二つの難題。挑戦されることを好まず、予期もしていないトランプ氏にとって、今回の事態は試練となっている。各国は、彼がこの局面で対応に乗り出すのか注視している。

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