イラン攻撃でトランプが見誤る支持層の認識、もはや世論は追随できない…(Wedge(ウェッジ))

 イラン情勢は、ハメネイ師の殺害という衝撃的な事件で動き始めたが、これに対するイランの作戦は湾岸などの親米国を攻撃してホルムズ海峡を人質に取るというものであった。以降は、和平交渉が進めば原油価格が下がり株価が上がる、反対に対立が厳しくなれば原油が上がり、株が下がるということの繰り返しとなっている。 【写真】トランプが気づいていないキリスト教保守主義の疑問  一連の情勢の変化は、トータルで見れば混乱に他ならず、これを反映してトランプ政権への支持率は低下を続けている。その一方で、トランプ政権は宗教色を強調したり、激しい言葉を使ったり対応は迷走しているように見える。  一連の問題だが、全体像を整理するのは容易ではない。例えば、攻撃に至った当初の動機についても、以下などが複合していたことは推察できる。 ・強いアメリカ、強い政権をアピールしたい ・イスラエル主導が先行して、アメリカが受け身となる事態は避けたい ・ベネズエラ超重質油やシェールの損益分岐点を超える原油価格は政権としては許容できる  けれども、ここまで決定的な関与に至った動機や計算については、計り知れないものがある。  事態を理解するために、ここでは一旦、政権の視点から事態を見てみることにしてみよう。もちろん、今述べたように、政権が攻撃を決断した背景には伺い知れないものがある。けれども、現在のアメリカの状況と政権の試行錯誤がどのようなものであるかを推し量るには、政権の視点から考えるという思考実験は有用であると思われる。

 まず、イランの問題は1979年の革命以降、武闘路線を放棄したパレスチナ多数派であるファタファに変わって、パレスチナ解放機構(PLO)の武闘路線を継承したレバノンのヒズボラと、ガザのハマスを支援し続けたことにある。この両者の動きは、反米テロとも連携しており、米国としては直接の脅威とみなしてきた。  そんな中で、イランが核武装に至ればこれは米国にとっても脅威のはずであり、政権はこの点に関してはあまり疑わずに攻撃に至っていたと思われる。けれども、この論理は、限りなくブッシュ政権の「反テロ戦争」の正当化と重なってくる。そして、2016年に、そして24年にも2回にわたってドナルド・トランプ氏を合衆国大統領に選んだ民意は、この「反テロ戦争」に代表される「介入主義」に反対するトランプ氏の選挙運動に喝采を送っていたのであった。  政権としては、選挙時に自分たちが訴えたこの「非介入主義」がどこまで民意の中に浸透しているのか、手探りの状況であるようだ。一方でアメリカの保守主義の中には、強いアメリカという理念が確かにあるからだ。レーガンはこれによって冷戦に勝利し、ブッシュ親子が中東で存在感を見せようとしたのも、そのためという認識がある。  アメリカは確かに旧大陸のトラブルには距離を置くことで、新大陸ならではの栄誉ある孤立を享受する、そんな孤立主義を保守の旗印としている。けれども同じアメリカが、いざという時は圧倒的な強さを見せれば、内外ともに屈服し追随する、そのような「強さ」もまた保守主義の一部という考え方がある。  つまり、戦後の、特にアイゼンハワー以降のアメリカ保守というのは、「栄誉ある孤立」を志向する部分と、「世界の中における圧倒的な強いアメリカ」を誇示したいという二重性を抱えている。トランプ主義においては、大統領自身は「より極端な形でこの二重性を追求」することが自身の求心力になると考えていたのであろう。  そうした姿勢からは、「実際に戦火を交えれば」世論は自分たちを支持してくれるという計算があったのは間違いない。にもかかわらず、現状としては現在進行形の、しかも自国に有利に展開している(ように見える)イランでの戦争に対して、保守世論の一部は「徹底した孤立」「不介入」という原則にこだわって反対をしてくる。その世論の真意に対して、政権の側には明らかに困惑の色が見える。

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