ネタバレ解説&感想『今際の国のアリス』シーズン3 ラストの意味は? シーズン4はある? その後と続編を考察
© 麻生羽呂・小学館/ROBOT
『今際の国のアリス3』配信開始
2020年よりNetflixで配信されているドラマ『今際の国のアリス』は、麻生羽呂の同名漫画を実写化した人気シリーズで、世界90ヶ国でNetflixの視聴数ランキングTOP10入りを果たすなど、世界的な人気を得た作品だ。シーズン1とシーズン2では全18巻の原作漫画をベースとした物語が描かれた。
2025年9月25日(木) からは待望の『今際の国のアリス』シーズン3の配信がスタート。これまでのシリーズからは一転して、漫画では描かれなかった完全オリジナルのストーリーが展開される。今回は、ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3の物語について、結末までのネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末に関する重大なネタバレを含むため、必ずNetflixで本編を視聴してから読んでいただきたい。また、本作は16歳以上向けの作品となっている。なお、劇中には自殺、DV、薬物、地震、津波に関する描写があり、本記事でも触れているのでご注意を。
ネタバレ注意 以下の内容は、ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3の内容に関するネタバレを含みます。
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3では、シーズン2で現世に帰ってきた有栖良平(アリス)と宇佐木柚葉のその後、4年後の姿が描かれる。原作漫画の本編完結後、2020年から2021年にかけて連載された続編『今際の国のアリス RETRY』では、全2巻と短いながらもアリスのその後が描かれた。『RETRY』でアリスはウサギと結婚してスクールカウンセラーになっていたが、ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3ではその一歩手前で、アリスは大学院に通いカウンセリングの会社の実習を受けている。
そんな二人の前に現れるのが、賀来賢人演じる新キャラでありドラマオリジナルキャラの松山隆二(リュウジ)である。リュウジはシーズン2で登場したバンダの誘いに乗り、ウサギを再び今際の国に導き、そうすることでアリスを今際の国へと誘い出したのだった。
シーズン2のラストでは、“今際の国”は隕石落下に巻き込まれて生死の境を彷徨った人々が共に経験した今際(死に際)の世界であったことが明らかになった。今際の国で死んだ人々は現世に帰ってこれず、最後まで生き延びた人々は現実への生還を果たした。
一方、そのどちらでもなく、最後の「今際の国の国民になり永住権を手にするかしないか」という選択で「手にする」を選んだのがヤバとバンダだった。この二人は「げぇむ」を運営する国民になることを選び、今際の国に残っている。
ある日ウサギは死の世界について研究していたリュウジに誘われ、死んだ父への未練を口にすると、リュウジに薬を使われ生死の境を彷徨うことに。つまり、今際の国へと導かれたのだ。さらにウサギの妊娠も発覚。それを知ったアリスは、前回生き延びたアンの助力を得て、薬の力で自ら臨死状態となりウサギを連れ戻すために今際の国へと旅立ったのだった。
シーズン2ではアンは死んだかに思われたが、最後の最後にクイナが寄り添う形で生き延びることができた。『今際の国のアリス』シーズン3では三吉彩花が演じるアンが嬉しい再登場を果たし、アリスにウサギを助けるチャンスをもたらしている。
バンダの今際の国
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3における“今際の国”は、シーズン2までの姿とは若干異なる。前回まではフィールドを自由に歩き回れる、ゲームでいうところの“オープンワールド”的な世界だったが、シーズン3では参加者が挑戦できるゲームは決まっており、ゲームをクリアすると次の会場へと案内される。作中では、ゲームが一方通行のトーナメント形式になっていることが指摘されている。
今回、アリスやウサギ&リュウジが参加したステージはバンダが運営しているステージのようだ。第4話ではバンダと同じく国民になったヤバが「俺のステージでも骨のある奴がいない」と発言していることから、ヤバはまた別のステージを運営しているものと考察できる。
バンダの狙いは前回の隕石事故の回でゲームをクリアに導いたアリスを今際の国の国民にすることだった。前回のチャンピオンがデスゲームにカムバックするというコンセプトは、韓国から爆発的な人気シリーズとなったNetflixドラマ『イカゲーム』の展開と重なる部分もある。
バンダが運営する今際の国の特徴は、全てひらがなの幼稚な表記があまり登場しないという点だ。これまでよりもゲームに派手な演出が多いという点もバンダの好みだったのかもしれない(現実的にはシリーズが人気になり大きな予算がついたのだろうけど)。
初実写化の「おみくじ」
『今際の国のアリス』シーズン3では、主に五つの「げぇむ」が描かれる。なお、ゲームの内容については文章量が多くなってしまうため別記事で解説することにしたい。本気記事では、ゲームの簡単な概要とキャラクターに与えた影響などを解説していく。
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3最初のゲームは「おみくじ」で、これは原作漫画でアリスがカルベ、チョータ、シブキと共に最初に挑んだゲームだ。ドラマ版シーズン1ではビルを舞台にした「生きるか死ぬか」に差し替えられていた。
「おみくじ」では引いた運勢に応じた難易度で数字が答えになるクイズが出され、答えの誤差の分だけ火の矢が飛んでくる。アリスはここで炎を見て、前回のげぇむの記憶を取り戻している。最後に1億本の火矢は飛んでくるシーンはド派手でシネマティック。シーズン3まで取っておいた甲斐があるというものだ。
ここでアリスは薬物依存症のテツや夫からDVを受けていたサチコといった参加者と出会い、仲間になっていく。今回のゲームは過去に今際の国に来たことがある人が集められ、クリアしていないジョーカーのゲームに挑むというコンセプトになっている様子。しかし、隕石で今際の国に来た人物もいるものの、各人が今際の国に来た理由はバラバラだ。バンダは単にゲームクリア者をかき集めていたということのようだ。
生と死を彷徨うリュウジ
二つ目のゲームは「ゾンビ狩り」。ゾンビ狩りはのルールはやや煩雑で、ざっくり言うと各人はトランプのカードと共に相手を感染させる「ゾンビ」のカード、「ゾンビ」を殺せる「ショット」のカード、「ゾンビ」を人間に戻せる「ワクチン」のカードを持ち、1対1で対戦していくという内容。最後にゾンビと人間、数が多かった方が勝ち上がりという仕組みになっている。
ここで登場した玉木ティナ演じるレイがキープレイヤーになる。ゲームを恐怖が支配していく中でアリスはゾンビを増やしていき、最後には「漁夫の利」を得ようとしていたレイをもゾンビにしてやることで多数派を形成。テツ、カズヤ、ノブ、サチコらと共にゲームをクリアしている。
一方、ウサギはリュウジと共にレーザーが飛んでくるゲームをクリアしている。ウサギとアリスが別行動でトーナメントを勝ち上がっていくというのが『今際の国のアリス』シーズン3の特徴だ。
ウサギは前回生き延びて現世に帰ったものの、死という観念から抜け出せていなかった。死んだ父のそばに行きたかったという思いがあったが故に、リュウジの誘いに乗ってしまったのだ。シーズン1第3話では、ウサギは出会ったばかりのアリスに「こんなことまでして生き残りたいなんて、自分でも不思議。イヤなら死ねばいいのにね」と言っている。
原作漫画ではより色濃く描かれていたが、ウサギは元々現世に未練がなく戻りたいと思っていなかった側の人間だ。ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3では、そのウサギの闇にフォーカスされることになる。
三つ目のゲームは「暴走でんしゃ」で、アリスとウサギは別グループながら同じゲームに臨む。このゲームはシーズン1第2話でシブキが「地下鉄で毒ガスを使ったゲーム」をクリアしたと言うセリフでのみ登場していたが、原作漫画ではシブキが挑む姿が描かれている。
「暴走でんしゃ」では8つの車両のうち4つの車両で毒ガスが出てくるが、毒ガスから生き延びるためのボンベは一人5本しか与えられない。その車両で酸素が出てくるか毒ガスが出てくるかを予想し、最後の車両まで生きて辿り着き暴走する電車を止めればゲームクリアだ。
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3第3話では、ウサギが早まってボンベを使ってしまいクリアが不可能に。だが第4話ではトーナメント制であるが故に並走していた別の車両に飛び移ってゲームクリアに成功している。
このゲームでは、死に向かっているはずのリュウジとウサギが「生」と「死」の二択を繰り返していくところに醍醐味がある。二人はゲームをクリアするために「生」を選ぼうとして、絆を強めていくのだ。
そうして「暴走でんしゃ」をクリアした後、死に魅せられたリュウジの過去が明らかになる。過去に矢野という助手が臨死体験ができる薬を試したいと懇願し、リュウジはそれを許したが矢野は死亡。自殺の扱いとなりリュウジは証拠不十分で不起訴に。その後、リュウジは事故で車椅子になったが自殺を試みたのではないかと噂されていた。
リュウジのその心の隙間に目をつけたのがバンダで、バンダはリュウジに死の世界を知ることができると誘惑して今際の国にリュウジを誘い込んだのだ。そんなリュウジにウサギは「戻れるよ」「一緒に元の世界に戻ろう」と語りかける。その呼びかけは奇しくもかつてアリスがウサギを現世に連れ帰ろうとした姿に重なる。
シネマティックなセミファイナル
一方のアリスは電車の横転で重傷を負っていたが、「おみくじ」や「ゾンビ狩り」で助けられていた他の面々はアリスを置いていけないと言う。今回のアリスにはウサギはいないが仲間がいる。少ない話数で新キャラが「アリスの仲間」として存在感を発揮できている理由はひとえに俳優陣の実力だろう。
セミファイナルゲームは、ウサギ側は東京タワーでの「東京びんごたわー」。東京タワーに設置されたボタンを押してビンゴを目指すゲームだが、鉄球が落ちてくるという危険極まりないゲーム。ウサギのロッククライミングスキルが披露されるコースでもある。
アリスの方は缶蹴りをモデルにした「かんけり」。10個の缶を缶蹴りの容量で回収して拠点に戻したらクリアだが、缶はカウントダウンの最後に爆発してするため、その前に拠点に設置しなければならない。両ゲームともフィジカル最重視のゲームである。
「かんけり」ではシオンやナツが死亡する一方で、「ゾンビ狩り」でアリスに助けられたカズヤが、借りを返して手負いのアリスをクリアさせる。刺青を披露して鬼神のような最後の戦いを見せるカズヤの姿は『今際の国のアリス』シーズン3の中でもハイライトに入るシーンだ。カズヤ役の池内博之の演技が光っていた。
缶蹴りと東京タワーの映像は非常にシネマティックで、ドラマ『今際の国のアリス』の集大成という感じがした。『イカゲーム』にも劣らない日本の遊びとランドマークを活用したクールな演出だった。
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3ラストを解説&考察
「ミライすごろく」の結末
ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3のラストでは、最後のゲームを前にバンダとリュウジが密会。バンダは次のゲームでウサギを殺し、アリスにこの国に残ることを決意させられれば、本当の死の世界を知れるとリュウジを誘惑。アリスに固執するバンダと、死とウサギに魅了されたリュウジの奇妙な四角関係もクライマックスを迎える。
アリスとウサギが再会して迎えた最後のゲームは「ミライすごろく」。ここでウサギはアリスから妊娠していることを告げられる。ウサギのお腹の中の子どもを入れて10名がゲームの参加者となる。この展開も赤ん坊をプレイヤーとしてカウントした『イカゲーム』のシーズン4と重なる展開である。
「ミライすごろく」では、プレイヤーに15ポイントが割り当てられ、ポイントが0になったらGAME OVER、プレイヤーの未来の映像が映し出される部屋で扉の向こうに進んでいくが、選んだ扉の壁に映っている未来は「本当に起こる」という留意点がある。部屋によっては自動的に減点される部屋があり、ポイントがなくなる前に出口を見つければゲームクリアとなる。
このゲームに進んだのは、アリス、ウサギ、リュウジの他に、イツキとユナの兄妹、夫からDVを受けていたサチコ、「ゾンビ狩り」のキープレイヤーだったレイ、薬物中毒のテツ、そして最年少で引きこもりだったノブだ。
「ミライすごろく」では、助け合ってゴールである可能性が高い角部屋を目指すべきだという理論と、より良い未来の方へと進みたいという欲望がぶつかり合う。次第に集団行動は崩れ、イツキとテツはマイナスポイントが重なり死亡。テツを演じた大倉孝二の絶望に瀕したときの演技は見事だった。
最後は、腕輪の移行が許されたシーズン2の「すうとり」をヒントに、アリスらは赤ん坊の分の腕輪を活用。兄を失ったユナと車椅子を持ち込むことができていたリュウジの協力もあり8人が生き延びた状態で出口にたどり着いたのだった。
あの人は誰?
だが、ドラマ『今際の国のアリス』シーズン3の最後のゲームはここでは終わらなかった。出口では7人が脱出し一人が犠牲になることを求められ、アリスが自分が犠牲になることを選択。しかし、アリスは全員に託したアリスにこそ未来があると告げられ、ゲームの唯一の勝者とされてしまったのだった。
外に出た7人が地震と洪水に襲われる中、そこに現れたバンダはアリスに国民になるよう迫る。アリスは前回ステージをクリアしたが故にバンダを魅了し、どうやら前回と比べるとすっかり人材不足となっている今際の国の管理職を依頼されてしまったのだ。
ポイントは、シーズン2でバンダが女性4人を殺した死刑囚だったとされていたことだ。明らかに倫理観が異なる上に現世に戻る動機がないバンダは、ウサギを助けようと外に出たアリスを現実世界でも窒息させようとする。リュウジを今際の国へと誘うシーンなど、バンダが現実世界に姿を現すシーンが何度かあるが、国民になれば死神のように現世に影響を与えられるということなのだろうか。
現実世界でのアンの活躍もありアリスは今際の国の世界で復活するが、バンダはさらにアリスに対して国民になるか死ぬかの選択肢を与える。アリスは死を目の前にしても国民になることを拒否しバンダがアリスを殺そうとするが、そのときバンダはレーザーで頭を撃ち抜かれて死んでしまう。そこに現れたのは「彼にはこの役目は早すぎたようだな」と語る老紳士だった。
そしてこの老紳士を演じているのは渡辺謙。『ラスト サムライ』(2003)、『バットマン ビギンズ』(2005)、「ゴジラ」シリーズなどで世界的にも知られる大物俳優がまさかのサプライズ出演だ。この演出も『イカゲーム』でのイ・ビョンホン登場を思わせるサプライズである。
この老紳士は、ジョーカーかという問いかけに対して、「それは神か、それとも——」と返す。実はこの“ジョーカー”を司ると考えられる人物、原作漫画には終盤でわずか4頁だけ登場している。漫画では全身黒に覆われた人物だったが、「私が…神に見えるか? それとも……悪魔に見えるか?」と、ドラマ版と近いセリフも吐いている。アリスとテーブルに向き合って対話するというのも同じ構図だ。
ジョーカーの意味は?
だが、そこから老紳士がゲームを要求してくる展開はドラマオリジナル。52枚の記号の札に加えて2枚のジョーカーを合わせた54枚の中からランダムに引いた2枚のトランプから、アリスがジョーカーを引けば、アリスの運命は老紳士のものになるという内容だ。しかし、引かれた2枚のカードはいずれもジョーカーで、老紳士曰くこれは偶然だという。
ここで老紳士が語る、トランプの数字は全て足すと364枚で、そこにジョーカーを足せば1年の日数と同じ365になる、もう一枚のジョーカーを足せば4年に一度のうるう年の日数と同じ366になる、という話は、トランプの起源として知られている俗説の一つだ。
老紳士が言いたいのは、ジョーカーはカードの隙間、時間の隙間、生と死の隙間を埋める存在だということだった。この話は原作漫画でアリスがジョーカーに対して言い放った「アンタはただの、中間管理職だろ?」というセリフがベースになっている。漫画では三途の川で人間を乗せた船を漕ぐ鬼の姿も描かれていた。
ドラマ版ではそれをよりドラマティックに描いた格好だが、そもそも“今際の国”自体が“狭間”を舞台としており、ジョーカーの役目と作品の世界観をうまく重ね合わせた結論になっている。その狭間に残りたかったのがバンダ、狭間を超えて死の世界に行きたがっているのがリュウジ、生の世界に戻りたいのがアリスなのだ。
老紳士は、偶然にも2枚のジョーカーを引き当てたアリスはただものではないと判断。濁流に身を任せれば落ちていく死の世界か、苦難に満ちた生の世界か、どちらを目指すか選択の自由を与えるという。このシーンで1対1で渡辺謙と対峙する山﨑賢人の風格が凄い。シーズン1から5年、“世界”と渡り合える俳優として堂々たる演技を見せている。
また、老紳士は今際の国の番人をしているだけで、番人をしている限りは死の門を潜らずに済むと明かしている。老紳士が「苦しみに満ちた元の世界に戻りたいか?」とアリスに聞いたのは、死線を潜り抜けながら生の世界へと戻るアリスに対し、老紳士は“狭間”にいることを心地良く思っていたからなのかもしれない。
あの人たちが登場
選択肢を与えられたアリスは、死の渦に飲まれそうになるウサギを助けに行く。リュウジはウサギを道連れに死の穴に飛び込もうとするが、リュウジは自分が死なせてしまった助手の矢野のこと、ウサギが元の世界に戻ろうと言ってくれたこと(=ウサギに生きる意思があること)、アリスがウサギを自分に託したことを思い出し、ウサギをアリスに託して自分だけが死ぬことを選ぶのだった。
そうしてアリスとウサギは助かると、ウサギは未練を持っていた父の姿を見て、父は幸せだったこと、娘にも幸せになってほしいと思っていることを告げ、ウサギが生きていくために背中を推したのだった。ウサギの父への想いを深堀りするドラマオリジナルの展開だ。ウサギを再び今際の国へと導いた父の幻影とも決着をつけ、二人は再び現世に生還できたのだった。赤ん坊も大事だが、ウサギが現世に戻る理由を安易に「母になるから」としなかった点は良かった。「母は生きなくてはならない」もまた女性に課される呪いだからだ。
生まれてくるアリスとウサギの子どもが女の子というのは、漫画続編『今際の国のアリス RETRY』の内容を踏襲している。アリスが、名前が運命を決めてしまうのでは、と心配しているのは、「アリスという少女がウサギを追いかけて不思議の国に迷い込む」という『不思議の国のアリス』の展開を、シーズン3でアリスが体現してしまったからだ。
現世ではやはりリュウジは死んでいた他、兄イツキをゲームで亡くしたユナは彼氏にイツキの墓参り兼挨拶に行こうと話している。ノブは大学を卒業して母を幸せにすると約束、サチコは息子と仲良く歩いている。サチコが幸せそうにしている姿が一番泣ける。「未来スゴロク」で過労で倒れる映像を見たレイも、アニメーターとして活躍している様子だ。
そして最終話のラストではアリスがカウンセリングを行うシーンが挿入されるのだが、ファンには嬉しいサプライズが待っている。原作マンガの最終回で「なぜ生きていると思うか」という問いに様々な人が答えていく演出を踏襲し、ドラマ版ではアリスが「生きてる意味を実感する瞬間」をクライアントに聞いていく。そしてそのクライアントがシーズン2までに登場した、隕石事故で今際の国を訪れた面々なのだ。
関西弁の「生きてる意味?」でピンと来るクイナは、父と和解して空手教室の先生を始めたという。髪と髭を伸ばしたアグニはボーシヤの店を継いだようだ。「帽子屋/ボーシヤ、つぶさないように頑張るためかな」という言葉には、ボーシヤから継いだ店と、ボーシヤが生きた証を無くしてしまわないようにという二重の意味が読み取れる。ヘイヤはインフルエンサーとして活躍している様子。ニラギには子どもができて更生した様子だが、こいつは性加害者なのでもっと苦労してほしい。
最後に登場したのはチシヤだが、チシヤらしくアリスに「生きてる意味を実感する時」を逆質問する。「子どもの名前を考えている時」という答えを聞いたチシヤはどこか感慨深げな表情を浮かべている。高校で一緒にやんちゃした同級生に子どもが生まれると聞いたときのような雰囲気だ。もしかするとチシヤは今際の国の記憶を取り戻しているのかもしれない。
ラストの意味は?
『今際の国のアリス』シーズン3のラストには、更なる展開が待っていた。アリスが事務所にいると地震が起きて、最近地震が頻発していることが報じられる。地震はカリフォルニアやヨーロッパでも起きており、世界規模の地殻変動が予想されている。地球環境の変化が影響を与えているもいい、現実における気候危機に対するメッセージでもあるだろうが、ここで舞台はロサンゼルスに移る。
ロサンゼルスのカフェで客同士が話していると、ウェイターが注文を取りレジへ向かう。その店員が振り返ると、胸には「Alice(アリス)」の名札が。その文字がタイトルロゴへと変化してドラマ『今際の国のアリス』シーズン3は幕を閉じるのだった。
今際の国では、渡辺謙演じる老紳士は隕石落下よりも大きな出来事があり、大勢が今際の国に来ると予言していた。大きな地殻変動によって、多くの人が生死の境を彷徨うことになるのだろう。果たしてその物語がシーズン4となるのか、それとも……。
『今際の国のアリス』シーズン3ネタバレ考察&感想
シーズン4 or ハリウッドリメイクはある?
『今際の国のアリス』シーズン3のラストは、アリスとウサギにはハッピーエンドを用意しつつも、今後、今際の国ではより大規模なゲームが行われることを示唆するエンディングだった。ドラマ『今際の国のアリス』は今後も続いていくのだろうか。
『今際の国のアリス』シーズン3が配信された時点では、シーズン4は発表されていない。原作漫画の続編としてはウサギの出産直前から始まる『今際の国のアリス RETRY』があるが、こちらは全2巻で映像化すると短編で済む内容になっている。
そうなると、原作:麻生羽呂、作画:黒田高祥で刊行されたスピンオフ兼続編『今際の路のアリス』の実写化も考えられる。しかし、同作はゲーム要素よりも京都から東京までのサバイバルを中心としており、ドラマで国際的に受けたデスゲーム要素がないとシリーズ化は難しいかもしれない。
となると、一番あり得るのはハリウッドリメイクである。韓国のデスゲームを描いた『イカゲーム』はシーズン3でメインキャラのストーリーを終え、ハリウッドでのリメイクが報じられている。『今際の国のアリス』のアリス(有栖)は苗字だったが、「アリス」をファーストネームとする女性主人公でハリウッド版が制作される可能性もあるだろう。ちなみに『今際の路のアリス』の主人公の名前のアリスはファーストネームだ。
『イカゲーム』に似てる…?
その点も踏まえると、『今際の国のアリス』シーズン3は『イカゲーム』との類似点が目立つ。シーズン2までは原作の内容を踏まえていたが、シーズン3はドラマオリジナルの内容だ。その中で、ゲームクリア者がゲームに戻る展開や赤ん坊を取り入れたデスゲーム、大物ゲストのサプライズ登場、キャラクターの物語は完結させながらより大きな物語へと繋げる展開など、『イカゲーム』と重なる部分が多かった。一部はNetflixで共有されている戦略なのだろう。
一方で、『イカゲーム』と比べるとカードやポイントを用いたゲームはまあまあ複雑で難易度が高かった。妊婦や赤ん坊を連れた人物の扱いについては『イカゲーム』の方があからさまで、本作よりも社会的なメッセージが強かったように思う。
それでも、東京の施設を舞台にしたゲームの映像はゴージャスで、VFXは『今際の国のアリス』が上回っていると言っていいだろう。ラストに登場した渡辺謙もこれ以上ない人選で、『イカゲーム』のイ・ビョンホン以来の衝撃だった。
原作+シーズン1&シーズン2の財産も惜しみなく投じた『今際の国のアリス』シーズン3は、これまで作品を追いかけてきたファンにとってはご褒美的な作品でもあった。各キャラのその後を知れたのは嬉しかった。同時に新キャラにも実力派の俳優を起用することで、新キャラに馴染む時間がないのではないかという懸念もクリアできていた。
今後はどうなる?
ドラマ版『今際の国のアリス』が今後も続いていくのであれば、余白が残されている点がいくつかわる。一つはヤバの存在だ。老紳士はバンダを排除したが、ヤバはまだ国民としてゲームの運営を続けているはずだ。
シーズン2までの今際の国では、クズリュー、ミラ、キューマ、シーラビ、アモン、リサが国民として登場。原作に登場したエンジの代わりにリサがドラマ版に加わっている。前回の国民がこれだけタレント揃いだった背景には、その前の国民によるゲームが魅力的で、プレイヤーが国民になりたいと思う動機があったのかも知れない。
前回のステージは悪かったわけではないが、アリスという確変によって多くの才能が帰還を選んだ。ゆえに今際の国に残ったのは死刑囚のバンダと詐欺師のヤバだけだったということだろう。だからこそバンダはシーズン3でアリスを国民にしようとしたのだ。
だが、場所が変われば話も変わってくるだろう。ロサンゼルスの街の今際の国にはまた別の国民がいて、災害と共に大規模なゲームが開催されることになるかもしれない。渡辺謙演じる番人ならハリウッド版もそのまま対応可能だ。
また、シーズン3ではアンやリュウジをはじめ、今際の国の存在に気づいている人々も登場したことから、ロサンゼルスでは今際の国から人々を連れ戻そうとする動きが起こる可能性もある。そうなったときに駆り出されるのは、二度も今際の国から生還したアリスとウサギということになるかも知れない。
果たして、「今際の国のアリス」フランチャイズは今後どんな展開を見せるのか、それともこれにて完結となるのか、シリーズの行方は今まさに“狭間”にある。
ドラマ『今際の国のアリス』はシーズン3までがNeflixで独占配信中。
ジョーカーを司る番人が登場する『今際の国のアリス』最終巻の18巻は発売中。
続編『今際の国のアリス RETRY』も発売中。
スピンオフ兼続編『今際の路のアリス』は全8巻が発売中。
【ネタバレ注意】『イカゲーム』シーズン3ラストの解説&感想はこちらから。
【ネタバレ注意】『イカゲーム』シーズン4とスピンオフについて監督が語った内容はこちらから。
『イカゲーム』英語版制作についての情報はこちらの記事で。