米ドルが対アジア通貨で急落、市場に衝撃-為替協定巡る思惑も浮上

週明け5日の外国為替市場では、米ドル売りが再び強まり、主要通貨に対しほぼ全面安となっている。通商協議を巡る臆測から台湾ドルが異例の急騰を演じ、世界の市場に影響が波及した。

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は午後の取引で約0.1%低下。トランプ大統領の関税政策を懸念した「米国売り」で、同指数は依然として年初来、約7%下落している。また米商品先物取引委員会(CFTC)の直近データによると、投機筋のドルに対する弱気なポジションは、昨年9月以来の高水準に達した。

  一方、台湾ドルは取引時間中としては1980年代以来の大幅な上昇率を記録。ブルームバーグが追跡する主要16通貨の中で最も上げが目立った。円も対ドルで約0.6%上昇し、主要10通貨の中で値上がりが特に顕著だった。ユーロは対ドルで1.13ドルを上抜けた。なお、中国本土市場は祝日のため休場だった。

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  JPモルガン・チェースのグローバルFXストラテジスト、アリンダム・サンディリア氏は、足元で上昇基調が鮮明となっているアジア通貨について「誰もがやや衝撃を受けている」とポッドキャスト番組で発言。「このように通貨が一斉かつ大幅に上昇する状況は、アジア諸国・地域の中央銀行の間で何らかの為替協定があるのではとの臆測を呼んでいる」と語った。

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  台湾ドルは前週末2日以降に急伸。米国との貿易合意には為替レートの再調整が含まれる可能性があるとの思惑が少なくとも一因となっているようだ。通商政策を巡る不透明感を背景に米国資産からの資金引き揚げが続く中で、通貨高は各国の政策担当者が直面するジレンマを浮き彫りにしている。

  ジェフリーズの為替ストラテジスト、ブラッド・ ベクテル氏は、台湾ドル高は、他の新興市場国にも波及する可能性があると指摘。「米国と中国、もしくは米国とアジア地域との間で何らかの為替合意が成立し、結果としてアジア通貨全体が上昇する予兆かもしれない」と述べた。

  一方、ベッセント米財務長官は、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」だと述べ、トランプ政権の政策はその地位を確固たるものにすると主張。トランプ政権の経済政策に対して米国資産への売りが膨らんでいるとの見方に反論した。

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原題:Dollar’s Fall in Asia Stuns Investors, Spreads Across Globe (1)(抜粋)

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