マクロスコープ:高市氏の円安巡るホクホク発言、「配慮が足りない」と専門家

高市早苗首相(自民党総裁)による為替相場を巡る発言が物議をかもしている。資料写真、1月撮影(2026年 ロイター/Issei Kato)

[東京 1日 ロイター] - 高市早苗首相(自民党総裁)による為替相場を巡る発言が物議をかもしている。長引く物価高の要因ともなる円安だが、高市氏は衆院選(2月8日投開票)の応援演説でメリットを認識しているかのように発言した。2月1日になって自身のソーシャルメディア(SNS)で弁明したものの、時の首相が足元の為替水準を評価するのは異例。専門家からは「配慮が足りない発言だ」との指摘も出ている。

<「ものすごく助かりました」>

高市氏は1月31日、神奈川県川崎市内での演説で国内投資の強化を目指す自身の政策を紹介し、国内投資が伸びれば「為替変動にも強い経済構造を作れる」と主張。「円高が良いのか、円安が良いのか、どっちが良いのかみんなわからないですよね」と述べた上で、「いま円安だから悪いって言われるけれども、輸出産業にとっては大チャンス。食べ物を売るにも、自動車産業も、米国の関税があったけれども、円安がバッファーになった。ものすごくこれは助かりました」と発言した。

さらに外国為替資金特別会計(外為特会)の運用状況に触れ、「円安でもっと助かっているのが、外為特会っていうのがあるんですが、これの運用、今ホクホク状態です」と述べた。「だから円高が良いのか、円安が良いのかわからない。これは総理が口にすべきことじゃないけれども」と断った上で、「為替が変動しても強い日本の経済構造を私は作りたい。だから国内投資をもっと増やしたい」とも語った。

<「強い経済構造作りたい趣旨」>

この発言がメディアで報じられると、高市氏は2月1日、自身のSNSに「昨日の個人演説会での私の為替に関する発言について、一部報道機関で誤解があるようです」と発信。「私は、円高と円安のどちらが良くてどちらが悪いということはなく、『為替変動にも強い経済構造を作りたい』との趣旨で申し上げました」とした上で、「日本の『供給力』を強くするための国内投資の必要性を述べました」と釈明した。

また、「為替を含めた金融市場の動向については、政府として常にその動向を注視しておりますが、個人演説会でも申し上げた通り、総理としては、具体的にコメントはしないようにしております」とも付言。「かつては急激な円高で国内産業が空洞化し、大きな問題となりました。足元の円安ではエネルギーや食品など物価高が課題であり、そうした課題に政府として対応すべきなのは当然のことです」とした。

円安が経済に与える影響については、「一般論として、輸入物価の上昇を通じて、国民生活・事業活動の負担を増加させるといったマイナス面」がある一方で、「国内投資が進み、国内で生産した製品が海外に輸出しやすくなることを通じ、企業の売上げが改善し、外為特会の外債の運用等、利子・配当などの海外からの収入も改善するといったプラス面」があると説明。「一部報道にあるように『円安メリットを強調』した訳ではありません」と結んだ。

<「どっちの方を向いているのか」>

高市氏の発言を受け、中道改革連合の野田佳彦共同代表は同日、東京都内の街頭演説で「(高市氏は)外為特会の運用益を『ホクホク』と言った。輸出型の企業が儲かっている、政府が儲かっている『いいね』でとどまっている」と指摘。「円安は輸入物価を引き上げる。国民にとって苦しくなるということだ。家計簿を付けながらホクホクしている人がいるか。資材価格が上がりホクホクしている中小企業の人がいるか。どっちの方を向いているのかよくわかった」と批判した。

高市氏の発言を専門家はどう見ているのか。野村総合研究所エグゼクティブエコノミストの木内登英氏は「確かに円安はプラスとマイナスがあるが、足元は個人には物価高を通じてマイナスが大きく、配慮が足りない発言だろう」と話す。

「高市氏の発言の裏には、円安が進み外為特会の剰余金が膨らめば、消費減税の財源に使えるとの考えがあると推察する」と指摘。「剰余金は一般会計に入れるのが原則で、減税の財源にはならない」とした上で、「剰余金を財源にするには米国債などを円換算する必要がある。事実上の為替介入になり、相手国との調整が必要で実際は難しい」とも述べた。

また、「円安や債券安による金利上昇は国民生活に悪影響を与え、物価対策など経済対策の効果をそぐ可能性がある。そのため、高市政権としても選挙後を含め、今後は円安や債券安に対して配慮が必要ではないか。積極財政政策は選挙後、修正されると思う」と見通した。

(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)

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2025年6月からロイターで記者をしています。それまでは朝日新聞で20年間、主に政治取材をしてきました。現在、マクロ経済の観点から日々の事象を読み解く「マクロスコープ」の取材チームに参加中。深い視点で読者のみなさまに有益な情報をお届けしながら、もちろんスクープも積極的に報じていきます。お互いをリスペクトするロイターの雰囲気が好き。趣味は子どもたち(男女の双子)と遊ぶことです。

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