世界経済は今年3.2%成長と堅調維持、2026年に関税リスク-OECD予測
経済協力開発機構(OECD)は23日公表の最新経済見通しで、世界経済は足元で想定以上の底堅さを示しているが、トランプ米大統領の通商政策による打撃は今後もなお避けられないとの見方を示した。
最新見通しでは、関税引き上げを見越した前倒しの動きを背景に、2025年の世界経済と主要国の成長予測が上方修正された。世界の成長率は3.2%と、前回6月の見通しから0.3ポイントの上方修正。日本は1.1%と、前回から0.4ポイント引き上げられた。米国の成長率は0.2ポイント引き上げられ、1.8%が見込まれている。米国では活発な人工知能(AI)分野への投資が見られている。
OECDは2026年の予測に大きな修正を加えず、関税引き上げと不透明感の高まりを背景に、世界の成長率は2.9%、米国は1.5%への鈍化見通しを据え置いた。
米国の実効関税率は19.5%と、1933年以来の高水準に達したが、当局者によれば、高関税の影響はまだ全面的には表れていない。
OECDのアルバロ・サントス・ペレイラ主席エコノミストはインタビューで「これは米国経済にとって重大な打撃だ。また、米国は世界にとって極めて重要な経済であるため、その影響は多くの国々に波及している」と述べた。
輸入前倒しの効果は薄れつつあり、実体経済への影響はなお見極めが必要だが、一部の消費者物価や支出行動にはすでに影響が表れているとOECDは指摘。失業率の上昇と求人件数の減少により労働市場が軟化し、最近の企業調査でも減速の兆しが見られるとした。
ペレイラ氏は「通商の拡大が経済成長に寄与することは明白であり、各国が対話を続け、貿易障壁の削減に向けて合意を形成することが重要だ」との考えを述べた。
OECDは、成長の減速と雇用面での圧力の弱まりを背景に、主要国の多くでインフレ率が低下すると予想した。一方で中央銀行に対しては「警戒を怠るべきではない」と警鐘を鳴らした。また、追加関税の発動や物価上昇の再燃の可能性を挙げ、見通し全体には「重大なリスク」があるとした。
英国の見通し
英国についてOECDは、米国を除く主要7カ国(G7)の中で今年最も高い成長率を記録するが、インフレ抑制には依然として苦慮しているとした。成長率は1.4%と前回から0.1ポイント上方修正されたが、翌年は財政引き締めや米国による関税の影響で1%に減速する見込みだ。
OECDはまた、英国のインフレ率予測を25、26年ともに0.4ポイント引き上げ、それぞれ3.5%、2.7%とした。これはG7で最も速い物価上昇となり、イングランド銀行(英中央銀行)の目標2%を大きく上回る。英中銀はインフレ再燃を抑えるため、利下げペースを鈍化させる方針を示している。
さらに英国では「賃金上昇率が依然としてインフレ目標と整合的な水準を上回って」おり、家計のインフレ期待も根強く高止まりしているとした。
原題:World Economy Yet to Feel Full Force of Trump Tariffs, OECD Says
UK Set to Be Second-Strongest G-7 Economy This Year, OECD Says
(抜粋)
— 取材協力 Dana Morgan