「業界に泥を塗られた」前伊東市長・田久保被告にハンコ業界からの声…“ニセ証書”作成のため「ネット業者に印鑑注文」の深刻な悪質性【学歴詐称疑惑】(NEWSポストセブン)
まず、この前代未聞の事件を振り返ろう。 静岡県伊東市前市長の田久保眞紀被告(56)が3月30日、有印私文書偽造・同行使の罪と地方自治法違反の罪で在宅起訴された。起訴状によると、田久保被告はインターネットを通じて業者に作成させた印鑑を押印し、卒業証書を偽造。作成時期は、市長に就任した5月29日から6月4日までの間とされている。 以前、NEWSポストセブンが田久保被告に直撃取材した際、記者が学歴詐称疑惑に対してコメントを求めると、こんな発言が飛び出すこともあった。 「(卒業証書の真贋について)深掘りする気はない。せんなきことかと思います。ゴシップネタのような」 今回、起訴内容が明らかになってからは、世間の目は厳しさを増している。地元紙記者の話。 「起訴状などによれば、被告はネットを経由して業者に『文学博士(教授名)之印』という学長名の印鑑と、『法学博士(教授名)之印』という法学部長の名前が刻まれた印鑑の2つを発注していました。当時の大学長印とは肩書きや書体が異なっていたことなどから、実物ではないと判断されたようです。 起訴内容が事実だとすれば、被告が繰り返してきた『証書は本物だと思っている』という主張は根底から覆ることになります。自ら印鑑を発注して証書を偽造したという一連の行為は、非常に悪質性が高い。呆れてものも言えない、というのが市民の本音では」(地元紙記者) そして、田久保被告に巻き込まれた形で注目が集まってしまったのが、"ハンコ業界"だ。
冒頭の「全日本印章業協会」は、印章業の小売店で組織された公益社団法人。印鑑登録制度の健全な発展の寄与を目的とし、印鑑登録事務に関する協力・助言や、印章彫刻技術の技能検定の協力・助成などを行っている。 今回、「実物ではないハンコ」を用いて被告が卒業証書を偽造したという報道を受け、同協会は4月1日、公式サイトに声明文を掲載。協会としての立場をこう表明している。 〈会員は、「印章憲章」に記されている「印章は真証の具で唯一無二の物である」という基本理念のもと日頃からはんこと向き合っております。このようにハンコを悪意を持って使用されることは遺憾に思います〉(声明文より一部抜粋) 一部報道では、ニセの卒業証書作成のために用いられた印鑑が「偽造」と表現されている。福島氏は「偽造印鑑」の定義について次のように述べる。 「我々の業界において『偽造印鑑』とは、実際の印影や印章から同型印を作成されたものを指します。つまり、既存の印鑑を"複製"したものが『偽造印鑑』です」(福島氏) 前述の通り、被告が偽装に使用したとみられる印鑑は「実際の証書に押印されている大学長印と異なる肩書き、書体」のものだ。これが事実だとすれば、田久保被告は印鑑のコピー品を作らせたのではなく、身分を偽って"他人名義の私印"を新たに作成させた可能性が高い。 「印章の本質は『唯一無二』。我々としては、複製物を作らない、同型を作らないということをプライドに、日々ハンコと向き合っています。また、法律として『私印不正使用罪(刑法167条2項)』に印章偽造の罪(第19章)が定められています。偽造印鑑を不正に使用した者だけでなく、それを知った上で偽造した業者も3年以下の懲役に課せられます。そういう法律だってあるわけです。 だから偽造印鑑を作ることは、信念としてやりません。今回の報道によって、あたかも業界内に『偽造を行う業者がいる』と受け取られかねない状況になっていることには、非常に心を痛めています」(同前)