トランプ氏の関税延期、大言壮語は「こけおどし」という臆測を助長
トランプ米大統領は、世界経済を再構築するために、数千億ドル規模の関税を課すと宣言し、最も親しい隣国さえも標的にした。
しかし、今のところは断固とした行動というよりも駆け引きの色合いが強い。
トランプ氏は3日、カナダとメキシコに対する広範囲にわたる関税の計画を棚上げした。前週にはコロンビアに対しても同様の行動を取っている。
いずれの場合も、相手国は国境警備や移民に関するわずかな変更しか約束しなかったにもかかわらず、トランプ氏はひいた。
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トランプ氏とその支持者たちは、これらの譲歩を同氏の手法の正しさを証明するものとして持ち上げている。
しかし、米大統領が関税の適用を少なくとも現時点では先延ばしにしていることは、トランプ氏の貿易に関する苛烈(かれつ)な言動が「こけおどし」に過ぎないことの証拠ではないかという疑念を強める。
同氏が市場の動向に強く執着していることは有名だ。
もちろん、トランプ氏はいつでも方針を再転換し、より過激な措置を講じることもできる。幾つかの国内政策のために必要と見込まれるコストを賄うために関税を課すこともあり得る。
しかし、延期はトランプ氏が貿易に関して大言壮語はするが実行は控え、関税を交渉の駆け引きとして利用しているという臆測を裏付けるばかりだろう。
トランプ氏が週末に関税の実施を表明した後も、影響を限られたものにするような譲歩がなされることをアナリストらが予想したため、市場の下落は限定的だった。
それでもなお、不確実性は渦巻いている。トランプ氏は、週内にも予定されている習近平中国国家主席との電話会談を前に、中国への関税を一時停止するとは言わなかった。中国に対する関税は共和党内でより多くの支持を集めている。
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また、欧州連合(EU)や重要セクターへの課税も公約している。さらに、メキシコとカナダへの課税の一時停止は1カ月間だけだと強調し、望む結果が得られなければ課税を再開する可能性を示唆した。
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トランプ氏の動きは、たとえ完全に実施されなかったとしても、コストを伴う。
トランプ氏の脅しとそれが現実になる可能性が、米国の株価と、カナダドル、メキシコペソ、ユーロ、南アフリカランドなど、標的となった国の通貨を下落させた。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏(シンガポール在勤)は「交渉がまとまったとしても、不確実性は依然として高く、関税の話題は今後数週間、数カ月間、続くだろう」と述べた。「企業にとって、この高い不確実性は計画立案の著しい妨げになる」と付け加えた。
トランプ氏が関税に関して威嚇しているだけなのか、それとも米国を100年前の時代に戻し、輸入税を主な財源とすることを目指しているのか、依然として不明だ。
同氏は、さまざまな関税を課すことをほのめかしているが、実際にどの関税を課すつもりなのかは明らかにしていない。
医薬品、半導体、鉄鋼、アルミニウム、銅などの分野に対する関税、EUに対する関税、トランプ氏が「2.5%より大幅に高く」設定したいとしている全世界を対象とした一律関税などが言及されている。
トランプ氏はかねてから、関税をより積極的に活用して政府の財源を確保したいと語っている。一方で、米国から不当に利益を吸い上げていると認識している諸国への報復としての関税も視野に入れている。
カナダとメキシコへの関税を一時停止するという大統領の決定により、これらの目標は当面は達成されないことになった。
原題:Trump Tariff Reversal Feeds Reputation as Trade Paper Tiger (1)(抜粋)