【分析】ロシアのラブロフ外相、姿を見せず 大統領府内で「非常ベル」作動

(CNN) ロシアの首都モスクワから届いたニュースは、ニュースとはやや言いがたい内容だった。ラブロフ外相が依然として職にとどまっているというのだ。 【映像】ロシアの爆撃機、滑走路で炎上 ロシア大統領府のペスコフ報道官は7日、ロシア外交トップの交代の可能性をめぐるメディアの激しい臆測を抑え込もうと動いた。きっかけは、ラブロフ氏が5日の安全保障会議に姿を見せなかったこと。プーチン大統領は会議の席上、本格的な核実験の可能性に言及していた。 ペスコフ氏は記者団との7日の電話会見で、「こうした報道は事実とまったく異なる」「もちろん、ラブロフ氏は外相として職務を継続している」と述べた。 これがなぜニュースなのかを説明するには、少々の「クレムリノロジー」(ロシアの権力分析)が必要になる。ロシアの日刊経済紙コメルサントは5日、「情報筋」の話として、ベテラン外交官のラブロフ氏がプーチン氏とのハイレベル会合を「合意の上で欠席した」と報じ、波紋を広げた。 さらに観測筋が注目したのは、欠席した安全保障会議の常任メンバーがラブロフ氏ただ1人だった点だ。これと並行して、ラブロフ氏が南アフリカのヨハネスブルクで今月開催される主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の代表団を率いないことも判明。プーチン氏は今月4日、ラブロフ氏より格下のオレシキン大統領府副長官を代表団長に任命する文書に署名した。 詮索(せんさく)好きなウォッチャーからはすぐさま、「ラブロフ氏はプーチン氏の不興を買ったのではないか」「ロシア政府内での人事刷新の兆候ではないか」と問う声が上がった。 ラブロフ氏不在の報道が浮上する数週間前には、ハンガリーの首都ブダペストで予定されていたプーチン氏とトランプ米大統領の対面首脳会談が消滅していた。ラブロフ氏は首脳会談実現に向けたロシア側のキーパーソンだったが、ラブロフ氏とルビオ米国務長官の電話協議を経て、首脳会談は棚上げになった。米国の当局者は、ロシアがウクライナに関する強硬姿勢を崩していないと指摘し、トランプ政権は新たな対ロシア制裁を科した。 ただ、もし明白な外交上のつまずきを巡ってロシア政府内で反発の声が上がっているとしても、大統領府は内部対立の表面化を防ごうと躍起になっているようだ。ラブロフ氏はまだ職務を継続しているかとのCNNの質問に対し、ロシア外務省のザハロワ報道官は、ラブロフ氏はいまでも外相職にとどまっていると説明。5日の会議を欠席したことを認めた上で、「そういうこともある」と付け加えた。 ラブロフ氏は20年以上にわたりロシア外交の顔として存在感を発揮し、過去には国連大使を務めたこともある。短期間で収束した2008年のロシア・ジョージア戦争から、14年のクリミア侵攻と併合、さらには15年のシリア内戦介入に至るまで、ラブロフ氏はロシアと西側の緊張が高まった時期を通じてプーチン氏に忠実に仕えた。22年のウクライナ侵攻を全面的に支持したことでも知られる。 75歳のラブロフ氏はまた、対決姿勢を前面に出した強気の外交スタイルを磨き上げ、プーチン氏の帝国への野心と足並みをそろえる場面も多い。米アラスカ州アンカレジで最近行われたトランプ大統領との首脳会談では、キリル文字でのソ連の略称「CCCP」をロゴとしてあしらったセーターを着て登場した。 だが、特にトランプ政権相手には、あおり戦略にも限界があったのかもしれない。トランプ氏がブダペストでの会談中止を示唆した後、ロシア政府系ファンドのトップで、大統領府の特使も務めるキリル・ドミトリエフ氏が米国を訪問した。一部の観測筋の間では、火消しのための訪米との見方も出ている。 もっとも、プーチン氏の下で忠誠心と継続性が重視されることに変わりはない。たとえばロシア大統領府は昨年、長年国防相を務めたショイグ国防相の交代を発表したが、戦果の乏しさを理由に解任するのではなく、安全保障会議書記のポストに横滑りさせた。 大きな後退に直面しても、プーチン氏の対応はどうやら「椅子の並べ替え」にとどまることが多いようだ。 ◇ 本稿はCNNのネイサン・ホッジ記者による分析記事です。

CNN.co.jp
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