チャンドラが捉えた宇宙の“手” パルサー風星雲「MSH 15-52」の最新画像と研究成果をNASAが紹介

こちらは、コンパス座の方向・約1万7000光年先にある天体。 まるで、青色の手が赤色の炎に向かって伸ばされているような姿をしています。 星空に浮かぶ手のようなパルサー風星雲「MSH 15-52」 X線宇宙望遠鏡チャンドラの打ち上げ25周年記念画像から NASA=アメリカ航空宇宙局によると、“手”のように見える部分はパルサー風星雲「MSH 15-52」、“炎”のように見える部分は超新星残骸「RCW 89」の一部です。 パルサー風星雲(パルサー星雲とも)とは、高速で自転する中性子星の一種「パルサー」から吹き出すパルサー風(電子と陽電子の流れ)によって形成される天体。パルサー風が周囲の物質と衝突することで、X線などの電磁波が放射されていると考えられています。 MSH 15-52を形作っているパルサー「PSR B1509-58」は、“手のひら”の付け根にある明るい部分に位置しています。中性子星は直径20~30km程度のコンパクトな天体ですが、MSH 15-52は150光年以上にわたって広がっているといいます。 一方、超新星残骸は超新星爆発が起こった後に観測される天体のこと。爆発の衝撃波が広がって周囲のガスを加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されていると考えられています。 研究対象として興味深いMSH 15-52は、その外見も相まって、これまでにたびたび画像が公開されてきました。今回公開されたこの画像は、チャンドラ(Chandra)X線宇宙望遠鏡のデータ、オーストラリアの電波干渉計ATCA(Australian Telescope Compact Array)で取得したデータ、それに地上の望遠鏡で取得したHα線(電離した水素ガスから放出される赤色の光)のデータを使って作成されています。

香港大学のShumeng ZhangさんとStephen C.Y. Ngさん、INAF=イタリア国立天体物理学研究所のNiccolo’ BucciantiniさんがX線と電波のデータを比較したところ、MSH 15-52の“手首”へと伸びていくジェットや、“指”のうち両端以外の3本は、電波では見えないことがわかりました。この結果からは、衝撃波付近から漏れ出した高エネルギー粒子が磁力線に沿って移動することで“指”を形作っている可能性が示唆されます。 また、電波で観測されたRCW 89の構造は一般的な若い超新星残骸とは異なり、X線や可視光線で検出される塊に一致した斑状に放射されている他に、X線放射を大きく越えて広がっていることがわかりました。この結果は、RCW 89が付近にある高密度な水素ガスの雲に衝突しているという考えを支持するものとされています。

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