マクロスコープ:日本政府内に長期化懸念、和平交渉進まず ペルシャ湾船舶が喫緊の課題
[東京 13日 ロイター] - 米国とイランの和平交渉が物別れに終わった翌13日、日本の政府・与党内からは本格的な長期化を覚悟する声が多く聞かれた。ペルシャ湾に滞留する関係船舶の「脱出」が喫緊の課題で、年明けまで確保したとする原油の手当てなども見直しを迫られる可能性がある。いずれも現時点で有効打は見当たらず、足元では長期金利が急上昇するなど市場も不安の色を増している。
<「すでに人道問題だ」>
「交渉はこのまま継続だが、早期の妥結とはならないだろう」。外交・安全保障政策に精通する政府関係者は13日朝、ロイターの取材にこう述べた。トランプ米大統領が世界のエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡を封鎖すると表明したのは交渉を有利に進めるためと分析した上で、イラン側の反発は必至だとし、「しばらくは一進一退の不安定な状況が続くことになるだろう」と見通した。
2月末から続く中東危機は、原油や石油製品の価格高騰を通じて日本経済を直撃しており、政府・与党内では11日の和平交渉に賭ける期待が強かった。木原稔官房長官は13日午前の会見で、米イランの協議を念頭に「関連の動向を注視しているところだ」とし、「最も重要なことは今後ホルムズ海峡の航行の安全確保を含む事態の沈静化が実際に図られることだ」と説明。「外交を通じて最終的な合意に早期に至ることを期待している」と述べた。
金融市場も交渉の不成立に反応し、国債市場で 新発10年物の利回り(長期金利)は一時2.490%に上昇。29年ぶりの高水準となった。日経平均は一時600円以上下げ、為替は1ドル=159円台後半まで円安が進んだ。 原油相場も再び上昇に転じた。先行きの不透明感を色濃く反映した動きとみられる。
高市早苗首相は同日昼の政府与党連絡会議で、「ペルシャ湾内にとどめ置かれている船舶、日本関係の船舶を含むあらゆる船舶の安全確保に向けて、引き続きあらゆるレベルで主体的に取り組みを進める」と強調した。米とイスラエルがイランを攻撃した2月末、ペルシャ湾内には日本の関係船舶45隻がいた。これまでに3隻が湾外へ出たものの、2週間の停戦で合意した4月8日以降は新たな動きがない。
前出の政府関係者は「日本として真っ先に取り組まなければならないのは、関係船舶をペルシャ湾から出すことだ」と指摘。「船員が置かれた状況を考えれば、すでに人道問題だ」とした上で、イランとの個別交渉を強める必要性に言及した。
<「俯瞰した戦略」の欠如>
もう一つの課題は、事態の長期化が見えてきた中で原油と石油製品の需給をどうやりくりするかだ。高市氏はこの日、ガソリンや重油などの価格を抑える措置や、ナフサ由来の化学製品などの供給確保などに取り組んでいるとし、「国民の皆さまの命と暮らしに影響が生じないように力を尽くす」とも強調した。
だが、与党内には依然として危機感が強い。政務三役経験がある自民党衆院議員は「政府は全体像を俯瞰した戦略が立てられていない」と苦言を呈する。いくら財政支援をしても、実際の原油や石油製品が不足すれば元も子もないからだ。同議員は「党も経産省も高市早苗首相の顔色を見ている。何が効果的な政策なのかまったくまとめ切れていない状況が続いている」と語った。
見通しが晴れない中、間もなく大型連休を迎える。前出の政府関係者はこう高市氏の心境を推し量った。「国民に節約を呼びかける気はまったくない。経済最優先で、国民にとってきつい話はしない。もはや、それが政権のポリシーになっている」
(鬼原民幸、竹本能文 取材協力:杉山健太郎 編集:久保信博)
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ロイター通信記者(Senior Economic News Correspondent)。日本の経済、政治を中心に取材しています。日々のニュースや政策の変化を深掘りし、金融市場への影響を読み解く「マクロスコープ」シリーズを執筆中。タイムリーなスクープも積極的に報じていきます。2005年から全国紙で記者活動をスタート。2025年にロイターの一員になりました。休日に家族と行く温泉旅行が何よりの楽しみ。