「愛子さまを天皇に」という議論の盲点。皇室典範を“いびつ”と断じる現代人の「生者の傲慢」とは(All About)

皇室典範は、日本国憲法に付属する法典の一つです。皇位継承について、憲法では「世襲制」を規定しています。 この世襲というのは、本当は男子による世襲のみを意味するのですが、現代の人々には男とも女とも規定していないではないかと解釈されてしまうため、具体的なことは皇室典範に定められています。 その皇室典範の第1条には「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と記されています。 「愛子天皇」を待望する人たちはその論拠の1つを、「男性しか天皇になれないルールはいびつ」だとしていますが、「皇統に属する男系の男子が皇位を継承する」と法律で定められているのですから、彼らは「法律がいびつだ」と言っているのと同じことになります。

現行の法律をどのように評価するかは個人の自由です。ですから、私は皇室典範を「いびつ」と評価する人たちを責める気は毛頭ありません。 しかし、法律がいびつだからと言って、即「愛子さまを天皇に」というのは、皇室の伝統や歴史をまったく考慮していない、あまりにも飛躍した話と言わざるを得ません。 日本は実在が確実な天皇である第26代継体天皇から数えても1500年以上の長い皇統の歴史を持つ国です。この事実を一顧だにせず皇室の在り方を議論するのは、皇室の方々に対して失礼きわまりないことです。 日本は法治国家です。法律が時代の変化とともに実情に合わなくなり、それを改正するにしても、法律にしたがって行うのがルールです。 皇室典範はいびつ、だから「愛子天皇」というのは、ルールと理屈と歴史を無視した馬鹿げた話、現代人による傲慢な話というよりないのです。


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私は世論調査を否定するつもりはありません。ごくごく最近の問題、たとえばマイナンバーカードと保険証の合体のように、今を生きている人の意見を求める必要がある場合、世論調査は参考になると思います。 しかし、女性天皇を誕生させるかどうかは、まさに日本人が築いてきた歴史を十分に考慮して判断しなければならない重要な問題です。 あえて言わせていただくなら、「イエス」「ノー」「どちらとも言えない」くらいの選択肢しか用意されていない世論調査で、女性天皇を認めるかどうかを問うこと自体そもそもナンセンスなのです。 皇統の男系男子で築かれてきた1500年以上の皇室の歴史は、決してお金やモノと交換することはできません。しかし、いったん女性天皇が誕生すれば、1500年の歴史に終止符を打つことになります。 1500年続いた歴史は、1500年たてば蘇るものではありません。たとえ1500年たったとしても、それは以前の1500年とは違う新しい歴史です。 なんとなくムード的に「女性天皇もありでは?」と考えている人たちにお願いします。どうかこの点に心を向けて、今後の皇室の在り方をじっくりと考えていただきたいと思います。 この書籍の執筆者:竹内久美子 プロフィール 1956年、愛知県生まれ。作家、動物行動学研究家。京都大学理学部卒業。同大学院で日高敏隆教授に動物行動学を学ぶ。博士課程を経て著述業に。『そんなバカな!』(文藝春秋)で第8回講談社出版文化賞科学出版賞を受賞。主な著書に『女は男の指を見る』『本当は怖い動物の子育て』(以上、新潮新書)、『パラサイト日本人論 ウイルスがつくった日本の心』(文藝春秋)、『皇室論 なぜ天皇は男系でなければならないのか』(方丈社)など。

竹内 久美子

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