【ボイジャーを超えられるか】中国の星間飛行計画「神梭」が太陽圏の果てを目指す 小型原子炉の搭載も
1977年に打ち上げられたNASAの探査機「ボイジャー」が、太陽圏の境界「ヘリオポーズ」を越えたという歴史的な偉業から10年以上。その間に得られたデータは、私たちの宇宙観を大きく広げました。
そして今、その後継とも言える新たな壮大な探査計画が動き出しています。中国が主導する「神梭(Interstellar Express)」プロジェクトをご紹介していきます。
目的は太陽圏の“輪郭”を描くこと
ヘリオスフィアのイメージ図 出典:NASA/JPL-Caltech「神梭」では、太陽系を包み込む「ヘリオスフィア(太陽圏)」の構造を調査するため、2機の探査機を異なる方向に打ち上げることが計画されています。ひとつは太陽系の進行方向、もうひとつは逆方向に向かいます。
この“ヘリオスフィア”は、太陽から吹き出す太陽風が星間空間とぶつかることで形成された巨大なバブル構造で、冥王星よりはるか彼方まで広がっていると考えられています。形状はかつて「彗星の尾のよう」とされていましたが、近年は「クロワッサン型」である可能性も指摘されており、全貌は謎に包まれています。
ボイジャーを超える旅へ
ヘリオポーズと探査機の位置関係 出典:パブリック・ドメイン中国では、この探査機のうちの1機を2020年代後半に打ち上げ、約25年をかけてヘリオスフィアの外縁に到達させる計画です。別の探査機も2030年代に打ち上げ予定で、ヘリオスフィア内部の未観測領域を調べる役割を担います。探査機の質量は約200kg、50kg以上の科学機器を搭載する予定です。電源は原子力電池を搭載することが計画されています。現在は検討段階である3号機では、小型原子炉による電力供給を行う可能性も示唆されています。
どちらも宇宙空間での長期観測が想定されており、ボイジャー以来の“星間飛行探査”のギャップを埋める唯一の計画として世界中から注目を集めています。その道中には、小惑星クアオアとその衛星ウェイウォットを経由しながら、接近探査をすることも計画されています。そして、冥王星よりも遠く、カイパーベルトの天体を超えていき太陽圏の果てを目指します。
この計画の目標は、2049年までに合計100天文単位の距離を航行することです。これは、中華人民共和国の建国100周年を記念する年という節目に当たります。
NASAのボイジャー1号と2号は、当初5年の運用予定を大きく超え、現在も星間空間を飛行中です。しかし電源やスラスターの劣化が進み、今後数年で通信不能となる可能性が高いとされています。その後、星間空間を観測している探査機はなくなってしまう懸念があります。その中で「星間特急」はボイジャーの偉業を引き継ぎ、新たに星間空間へ向かう探査計画となっているのです。
なぜ星間探査が必要なのか?
2005年5月当時のボイジャー1号の航行位置。2021年現在は太陽圏外にある。 出典:NASAヘリオスフィアの境界では、太陽風と星間風が衝突し、プラズマ粒子の混沌とした領域を形成します。この「ヘリオポーズ」の内側と外側で、放射線の強さ、粒子の分布、磁場の構造が劇的に変化することが、ボイジャーの観測から判明しました。
そして、太陽の磁場が太陽風を“クロワッサン型”に閉じ込めている可能性が考えられており、太陽進行方向の逆側の観測が特に重要になると言われています。また、ヘリオスフィアに“穴”があり、そこから銀河宇宙線が侵入している可能性も示唆されています。
宇宙の99%がプラズマ状態にあるという事実からも、このような観測は宇宙物理学や基礎科学への貢献度が極めて高いと考えられています。
今まいた種が、果実をつけるのは何十年も先かもしれませんが、その一歩を踏み出すことが、科学の未来を変えるかもしれないのです。皆さんは数十年を要する壮大な計画についてどのようにお考えになりますか?是非コメントお待ちしています。
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