カナダ経済、関税戦争でリセッション入りの公算-エコノミスト予想

カナダ経済は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以来、最も深刻な打撃を受ける見通しで、関税戦争が続けばおそらくリセッション(景気後退)に陥ると、有力エコノミストらが指摘している。

  トランプ米大統領がカナダから輸入する大半の製品に25%の関税を課すと発表し、これを受けてカナダのトルドー首相が合計1550億カナダ・ドル(約16兆4000億円)相当の米製品に報復関税を課す計画を打ち出したことで、実質国内総生産(GDP)成長率は2-4ポイント押し下げられると、エコノミストらは予測している。

  2025年に1.8%成長が見込まれていたカナダ経済にとって、これはパンデミック期を除けば16年ぶりに年間でマイナス成長になることを意味する。消費者物価の上昇率はカナダ銀行(中央銀行)の目標である2%を上回るペースとなり、失業率は上昇し、カナダ・ドルは一段と下落するとみられている。

  エコノミストらの見解は以下の通り。

トロント・ドミニオン銀行(TDバンク)

  チーフエコノミストのベアタ・カランチ氏とシニアエコノミストのジェームズ・オーランド氏は、北米の株式市場とカナダ・ドルに「急激なネガティブ反応」が起こり、カナダの通貨は1カナダドル=65米セントまで下落する可能性があると予測している。関税が5-6カ月間継続すれば、カナダ経済はおそらくリセッションに陥ると指摘。それ以上続けば、経済の落ち込みはさらに深刻化し、失業率が7%を超える可能性があるという。「カナダ中銀の対応を予測するのは時期尚早だ」とコメントした。

モントリオール銀行

  チーフエコノミストのダグラス・ポーター氏は、米国の関税とカナダの報復関税によりカナダのGDP成長率が約2ポイント押し下げられる可能性があると分析。「発表された関税が1年間維持された場合、経済は軽度なリセッションに陥るリスクに直面する」と見込んだ。関税を巡るニュースを踏まえ、カナダ中銀が10月まで各会合で政策金利を0.25ポイントずつ引き下げ、その後1.5%で維持すると予想している。

ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)

  チーフエコノミスト、フランシス・ドナルド氏とアシスタントチーフエコノミスト、ネイサン・ジャンセン氏は、米国および世界全体で25%の追加関税が賦課された場合、カナダのGDPは3.4-4.2ポイント縮小するというカナダ中銀の調査結果と自身らの予測は一致していると指摘。「関税はすでに苦境に立たされているカナダ経済に打撃を与える。カナダは依然として金利ショックからの回復途上にあり、カナダ銀行が政策金利を200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げたにもかかわらず、失業率は引き続き上昇している。またカナダはなお供給過剰で、生産能力はフル稼働に至っていない」との見方を示した。

キャピタル・エコノミクス

  北米チーフエコノミスト、ポール・アシュワース氏は、米国への財の輸出がカナダのGDPのほぼ5分の1を占めていることを踏まえると、25%の関税は同国にとって「実存的な脅威だ」と述べた。カナダ・ドルが一段と下落したとしても、関税は輸出、投資、消費に打撃を与え、GDPを2.5-3%縮小させると予想。その上で、カナダ中銀には少なくともさらに50bpの利下げ余地があり、財政および金融の両面からの刺激策により、リセッションの深刻さを抑えることが可能とした。

RSMカナダ

  エコノミストのトゥ・グエン氏は、米国とカナダの関税戦争により、カナダ経済は今年2%縮小し、総合インフレ率は2.7%に上昇する可能性があると指摘。物価上昇により需要が減少するため、製造業、観光業、運輸業など、あらゆる業界で雇用が失われると予想した。今後数週間のうちに、果物や野菜の価格が急上昇する可能性が高い一方、家電製品や自動車の価格は上昇するまでに時間がかかるという。

原題:Tariff War Likely to Plunge Canada Into Recession(抜粋)

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