恋愛関係の不均衡「スワッグ・ギャップ」、心理学者が解説する「有害な3パターン」(Forbes JAPAN)
現代の恋愛に関して、新たな悲劇がTiktok上で嘆かれている。「スワッグ・ギャップ(Swag Gap)」として知られる力関係の感覚だ。 具体的には、カップルの間で感じられる微妙だが否定できない「格好よさ」の不均衡を指す。一方は格好よく、もう一方は格好よくない。一見「格好いい方 」の側はどの部屋にも我が物顔で入っていき、完璧なスタイルで悠々と自信を持っている。一方、もう一方は気まずそうに後ろをウロウロしており、服装はきちんとしているが「すごくキマってる」わけではない。 お気楽なミームとして始まったこのトレンドは今や自己像や魅力、恋愛関係における力の考え方について現実的な論争を巻き起こしている。このトレンドの核心には自分を他者と比べる心理のようなものが潜んでいる。 この力学が有害となりうる3つのパターンを紹介しよう。 ■1. スワッグ・ギャップは自尊心を蝕む カップルの片方がパートナーと自分を比較したとき、たとえそれがあまり明白でなくても、その人の自尊心に静かに影響を与えることがある。これは不均衡を引き起こし、一見「あまり格好よくない」側が萎縮したり、遠慮したり、あるいは劣等感を持ち始めたりするかもしれない。 科学誌『プロスワン』に2021年に掲載された大規模な縦断研究では、自尊心と恋人との対立のとらえ方が時間の経過とともにどのように影響しあうかを調べた。若年成人のカップル約1100組を調査した。 その結果、恋愛関係においてさほど自信がなかったり、大切にされていないと感じたりすると対立の影響を受けやすくなり、繰り返し対立に直面すると自尊心がさらに損なわれることがわかった。この2つの間には相互作用があり、影が薄いと感じることが、個人の自信と恋愛関係に絡む全体的な感情面の健全性の両方に静かに影響することを物語っている。
■2. スワッグ・ギャップが力の認識を変える 力は恋人間の中心的な要素だ。通常、誰が決定の主導権を握るかを決める要素だ。さらに重要なことに、カップルが自分自身や互いについてどう感じるかに影響する。恋愛関係では力は明白な形では現れない。社会的プレゼンスや、受け止められる「格好よさ」の違いからいとも簡単に生じる。 専門誌『Journal of Social and Personal Relationships(ジャーナル・オブ・ソーシャル・アンド・パーソナル・リレーションシップス)』に2021年に掲載された研究では、181組の異性愛者のカップルを調査し、力のさまざまな側面が関係の満足度にどう影響するかを探った。 研究者らは、個人的な力の感覚(どれだけ力があると感じているか)、立場的な力(形式的な優位性)、一般的な力の動機、力のバランスを区別した。 その結果、客観的な立場的な力や全体的なバランスよりも、主観的で個人的な力の感覚がカップルの関係の質を予測することを発見した。力を得たように感じられ、自分の影響力に満足していると感じているカップルは、より高い関係満足度を報告した。これは、形式的または構造的な力の差に関係なく当てはまった。 恋愛関係において本当に重要なのは形式的な支配や公平さではない。個人の価値や影響力の認識の方がはるかに重要だ。スワッグ・ギャップという点では、パートナーより格好悪いと感じることは、非常に影響力のある力の不均衡の感覚を生み出し始め、関係のとらえ方が変わる。 やがて日常の極めてわずかなずれが蓄積し、全体的な関係の満足度に徐々に悪影響を及ぼす可能性がある。