なぜ水たまりができにくい道路が増えたのか? 雨水を通す舗装のひみつ。【川辺謙一の「道路の科学」Vol.9】

交通技術ライター川辺謙一が語る「道路の科学」。第9回は、雨水を通す舗装に迫る。

今は、国内の一部地域を除いて、梅雨を迎えていますね。雨が多く降り、道路に水たまりができやすい季節です。自動車が水たまりを通過したときに、水がはね上がっているのを見たことがある人は、おそらく多いでしょう。

ところが近年は、雨水を吸い込み、水たまりができにくい道路が増えています。「排水性舗装」や「透水性舗装」と呼ばれる特殊なアスファルト舗装を施した道路が増えたからです。

なぜこのような道路が増えたのか。今回は、その理由と、「排水性舗装」や「透水性舗装」の詳細に迫ってみましょう。

目指すは走行安全性の向上

結論から言うと、水たまりができにくい道路が増えたのは、それにさまざまなメリットがあるからです。その代表例には、(1)「ハイドロプレーニング現象の抑制」と(2)「視認性の向上」による車両の走行安全性の向上があります。

雨の日の夜の道路。濡れた路面が光って、区間線が見えにくくなる。画像:写真AC

(1)の「ハイドロプレーニング現象」とは、タイヤと路面の間に水膜が介在し、双方間に働く摩擦力が失われる現象で、車両が濡れた路面を高速で走るときに発生しやすいです。これが発生すると、タイヤが滑り、車両の操作性が失われます。

(2)の「視認性の向上」は、前方確認において重要です。とくに雨の日の夜は、濡れた路面が路上の照明やヘッドライトに照らされて光り、区画線(車線の境界を示す白や橙の線)が見えにくくなります。

雨の日の高速道路。車両が高速で通行するため、ハイドロプレーニング現象が起きやすい。画像:写真AC

もし、路面が雨水を吸い込むようにできれば、水たまりができにくくなり、「ハイドロプレーニング現象の抑制」と「視認性の向上」が実現します。これによって、操縦性の低下や操縦ミスによる事故を減らすことができます。

このため、近年は、雨水を吸い込む舗装を施した道路が増えました。

「排水性舗装」と「透水性舗装」

「排水性舗装」と「透水性舗装」。透水層がポーラスアスファルトの場合。画像提供:大成ロテック株式会社

雨水を吸い込む舗装の代表例には、「排水性舗装」と「透水性舗装」があります。どちらも「密粒舗装」と呼ばれる従来のアスファルト舗装とは異なり、雨水を路面以外で排出する構造になっています。

「排水性舗装」は、路面に水を通しやすい透水層を敷き、その下に水を通しにくい不透水層を敷くものです。雨水は、透水層に浸透し、不透水層の上を通って排水(排出)されます。

いっぽう「透水性舗装」は、路盤の上に透水層を敷くものです。雨水は、透水層から路盤、路床へと浸透します。

かつて日本では、ほぼすべての舗装道路で、雨水を浸透させない「密粒舗装」を採用していました。路盤や路床に水が浸透すると、それらがやわらかくなって、繰り返しの交通荷重(車両の通行によって生じる荷重)に耐えられずに舗装が壊れる、もしくは雨水によって路盤・路床の材料が流され、空洞ができて道路が陥没するなどの悪影響が及ぶからです。

東京都では、1970年頃から歩道に「透水性舗装」を施しました。これは、街路樹の育成が目的でした。

「排水性舗装」(左)と「密粒舗装」。「密粒舗装」とくらべると、「排水性舗装」の路面が濡れていないのがわかる。画像提供:大成ロテック株式会社

いっぽう車道では、「排水性舗装」が導入されました。道路が、通行する車両から受ける荷重に耐えるのは、路盤や路床に水を浸透させないからです。

なお現在、「排水性舗装」は、雨水の排水だけでなく、路面にある小さな穴(多孔質な空隙)によって騒音を小さくする機能も持つ舗装として活用されています。

<参考資料> [1] ポーラスペーブ/排水性・透水性舗装(大成ロテック株式会社) https://www.taiseirotec.co.jp/technicalinfo/porlas/ [2] 透水性舗装と排水性舗装はどこがちがう(ミツカン 水の文化センター)

https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no17/06.html

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