「水ビジネス」関連株に熱視線、歴史的猛暑で株価沸騰へ秒読み開始!<株探トップ特集>
水不足が深刻だ。ここ数日は久々にまとまった降雨となったものの、いまだ一部地域を除き水不足は解消されていない。更に、ここからの8月後半には再び 猛暑が戻って来るとの気象予想もある。気象庁の観測史上最も早い梅雨明けに始まり、連日の晴天と記録的な猛暑の影響もあり少雨によるダムの渇水、農作物への影響が懸念されている。こうした異例の少雨を背景に、株式市場においては飲料水など「水ビジネス」関連株に熱い視線が向けられ、テーマ性を帯びることがある。往々にして思惑含みの面は大きいが、世界的にみても枯渇する水資源を巡り、関連するビジネスは拡大の一途をたどっている。宅配水から海水淡水化技術まで、多岐に渡る分野で注目される関連株の動向を点検した。
●暑さ戻り予断を許さない状況ここ数日、九州から北陸にかけ激しい雨が降り大きな被害を出した。国土交通省の渇水情報総合ポータルによると、12日現在の全国の渇水状況は、「前線による降雨により、ダムの貯水率が回復するなど、渇水状況が改善してきている」という。ただ、同日現在で「19水系25河川で渇水調整協議会等の開催、取水制限などの渇水体制をとっている」としており、いまだ予断を許さない状況が続く。既に、きょうは西日本などで猛暑が戻ってきている。ウェザーニューズ <4825> [東証P]が今月5日に発表した「猛暑見解2025」によると、8月下旬には「再び“ダブル高気圧”となり、暑さが一層厳しくなるタイミングがある」という。
こうした水不足は、株式市場において折に触れて水ビジネス関連株を刺激してきた。猛暑の長期化も予測されるなか、水ビジネスに投資家の関心が向かう可能性もある。いわゆる水ビジネスとは、身近な宅配水、飲料、加えて海水淡水化といった高度な技術を用いたものまで幅広い。更に、最近では関連株のすそ野が大きく広がりをみせている。今年1月に発生した埼玉県八潮市の県道で、下水道管の破損が原因とみられる道路の陥没事故が発生したことで、未然防止に向けて各地で緊急点検が相次いでおり、上下水道に絡む銘柄などにも関連株の一角として注目が集まっている。 ●サントリBF、伊藤園の王道銘柄に注目清涼飲料大手で「サントリー天然水」などを手掛けるサントリー食品インターナショナル <2587> [東証P]や、「お~いお茶」をはじめとする茶葉製品のトップランナー伊藤園 <2593> [東証P]も水不足の状況下では注目されやすい。
サントリBFが7日に発表した25年12月期第2四半期累計(1~6月)連結営業利益は、前年同期比11.2%減の718億3600万円で着地。ただ、通期では前期比0.5%増の1610億円の見通しを据え置く。サントリー天然水は大容量で価格改定の影響を受けたが、昨年新容器にリニューアルした1リットルペットボトルや、「サントリー天然水 特製レモンスカッシュ」が好調に推移。今年の暑さが長引くことが伝わるなか、その影響を見守りたいところだ。株価は、上値の重い展開が続いていたが、決算通過で潮目の変化も。一方、伊藤園は6月25日に、一部ドリンク・リーフ製品の価格改定を10月1日から実施すると発表。株価は下値を暫時切り上げているが、3400円近辺はボックス圏上限にあり、ここをブレークできれば一段高期待も。 ●Lドリンクに成長期待ライフドリンク カンパニー <2585> [東証P]は、LDCブランドのミネラルウォーター、炭酸、茶系飲料などの製造・販売を手掛ける。7月30日には、最終年度となる29年3月期の連結営業利益目標を120億円(25年3月期実績は47億4200万円)とする新中期経営計画を策定したと発表。自社グループ飲料工場の設備更新・改良による生産能力増強や人員増強によるフル生産化に加え、既存工場のライン増設や新工場建設、M&Aによる生産能力獲得を進め、売上高成長とそれを上回る利益成長を目指す。株価は、こうした成長期待を背景に新値街道を快走する展開で、投資家の同社に向ける視線も熱さを増している。同社がきょう取引終了後に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は、前年同期比21.8%増の15億1600万円で着地している。
●宅配水でエアウォータ、プレミアムW 水不足や猛暑を背景に、思惑が高まりやすいのが宅配型のウォーターサーバーや飲料水を手掛ける銘柄だ。ウォーターサーバーは、災害時の備蓄水としても活用できることに加え、高齢化が急速に進展するなか重い水を自宅まで届けてくれることも利点だ。エア・ウォーター <4088> [東証P]は工業用ガス大手だが、グループ会社が宅配水を手掛けており思惑が向かいやすい銘柄のひとつだ。「AW・ウォーター北アルプスの天然水」のウォーターサーバーに加え、「北アルプスの清らか天然水」をはじめ天然水関連製品を数多く展開している。同社は7日、26年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算を発表し、営業利益は前年同期比20.5%増の168億200万円で順調な滑り出しとなった。通期営業利益は、前期比11.6%増の840億円を計画している。株価は上昇一途、8日には2517円まで買われ年初来高値を更新している。もちろん、こうした飲料水に絡む事業が同社の業績を大きく左右することはないが、関連株の一角として注視が必要だ。
天然水の製造販売を展開するプレミアムウォーターホールディングス <2588> [東証S]だが、同社の宅配方法は、採水地より定期配送される「ワンウェイシステム」。リサイクル可能な使いきりのペットボトルを使用し、面倒なペットボトルの返送が必要ないという特長を持つ。また、さまざまなウォーターサーバーを取り揃えていることや、商品ラインアップを拡充することでニーズを捉えている。同社は12日取引終了後、26年3月期第1四半期連結決算を発表し、営業利益は前年同期比12.2%増の32億8500万円で着地。通期計画120億円に対して、順調な滑り出しとなった。流動性に乏しい点は留意が必要だが、目を配っておきたい銘柄だ。
●海水淡水化で東洋紡、日東電など注目 水不足は、もはや日本だけの問題ではない。気候変動の影響に加え、世界人口の増加が水の使用量の増加につながっており、水資源枯渇への対応が大きな課題になっている。経済協力開発機構(OECD)によると、「50年には、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は、39億人(世界人口の40%以上)となる可能性もあると予想される」という。こうしたなか、市場規模を急速に拡大させているのが逆浸透(RO)膜による海水淡水化プラントだ。東レ <3402> [東証P]は炭素繊維で名を馳せるが、総合水処理膜メーカーとしても世界トップクラスなだけに注目度が高い。7月16日には、現地子会社を通じサウジアラビア王国のシュアイバ3海水淡水化プラントに逆浸透(RO)膜を供給したと発表。水需要が拡大することが見込まれる中東地域をはじめとして、世界の水問題解決をリードしている。同社は8日の午後1時、26年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算を発表。売上高は前年同期比6.6%減の5958億2900万円、営業利益は同27.8%減の275億600万円と大幅な減益となり、これを嫌気し高値圏にあった株価は10%近く急落。環境・エンジニアリング部門では水処理事業が中東向けの大型案件の出荷遅れなどが響く。ただ、きょうの株価は押し目買いに下げ止まっている。
東レの株価は急落したとはいえ、海水淡水化市場は海外を中心に拡大しており、技術的にも優位に立つ日本メーカーの活躍期待は大きい。更に、国内で水不足が叫ばれるなか、渇水地域における飲料水、生活用水、加えて工業用水の確保などで海水淡水化ニーズが高まっているだけに、株式市場での注目度が増す可能性もある。グループの東洋紡エンジニアリングが 海水淡水化装置を手掛ける東洋紡 <3101> [東証P]、海水淡水化から食品プロセスまで幅広い用途で使用される逆浸透膜を展開する日東電工 <6988> [東証P]、海水淡水化プラントのカナデビア <7004> [東証P]などへの注目は怠れない。このなか東洋紡エンジニアリングの海水淡水化装置は、国内外のプラントで実績豊富な東洋紡エムシーの中空糸型RO膜「ホロセップ」を使用。同製品は中空糸膜の間隔が広く、原水中の濁質成分や汚染物質の蓄積を抑える耐濁質性を有している。東洋紡が7日に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は、前年同期比80.2%増の55億6600万円で着地した。株価も好調で、年初来高値圏を舞う展開。日東電の株価も新値街道を快走している。
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