米金融市場に2007年の影、過熱LBOと債務膨張-サブプライムに返済遅れ
大規模なレバレッジドバイアウト(LBO)、積み上がりが続く高リスク債務、信用力の低い個人に返済遅延の兆しが出始めている-。
2007年の再来ではないかもしれないが、少なくとも似た展開をたどっている。当時はエネルギー会社TXUによる440億ドル(現在のレートで6兆5800億円)規模のLBOだったが、今は米ゲームソフト大手エレクトロニック・アーツ(EA)で約500億ドル規模のLBOが実現する可能性がある。
当時はサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン担保証券が問題だったが、今はプライベートクレジットをはじめとするさまざまな債務が焦点になっている。当時はサブプライム層の消費者が住宅ローン返済を滞納していたが、今は自動車ローンの返済が遅れている。
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ただ、今と07年にはいくつかの重要な違いがある。規制強化で銀行は自己資本に厚みがある。消費者の借り入れは今回、それほど多くない。LBOを手掛けるファンドは、買収の際により多くの自己資本を投入している。プライベートクレジットが金融市場に広範な損失をもたらすかどうかは、まだはっきりしない。
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しかし、たとえ世界金融危機2.0が起きなくても、投資家は今後数カ月間、波乱含みの展開となる可能性が高い。バブル的な様相を呈した金融市場が、景気減速に直面しているためだ。ここ数カ月で上昇してきた株式や債券は現実的な水準に戻るかもしれない。米国の投資適格社債のリスクプレミアムは今月、27年ぶりの低水準に達し、今もその付近にある。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ビル・ゾックス氏は「これほど高いバリュエーションでは、小さなきっかけで市場に警戒感が広がりやすい」と語る。ただ、米連邦準備制度が現在、利下げに動いていることで「金融危機の影は薄い」という。
景気に不調の兆しがあるとしても、まだ初期段階にとどまっている。8月の米失業率は2021年以来の高水準に上昇し、雇用者数の伸びは大きく減速した。米ミシガン大学が26日発表した9月の消費者マインド指数(確報値)は4カ月ぶりの低い水準となった。
債務市場はこの10年、全般的に急拡大してきた。米国の投資適格債市場の規模は15年初めには4兆ドル未満だったが、現在は約7兆6000億ドルに達している。プライベートクレジットも比較的短期間で1兆7000億ドル超の市場に成長した。
「毎日のように『これはバブル的』と思う場面はあるが、こうした明らかに行き過ぎた注目案件がどの程度、波及するかを見極めるのは非常に難しい」とイントレピッド・キャピタル・マネジメントのハンター・ヘイズ最高投資責任者(CIO)は話した。
原題:The Echoes of 2007 Are Starting to Become Louder: Credit Weekly(抜粋)
— 取材協力 Isabella Farr