なぜロッテリアは消え、ドムドムは残ったのか ハンバーガー市場、2つの生き残り方

ゼッテリアの1号店(編集部撮影)

都市ジャーナリストでチェーンストア研究家の谷頭和希氏が、現代のビジネスシーンを深く掘り下げる。都市再開発の成功例や課題、企業戦略の変化、消費者文化の進化に注目し、表面的な現象だけでなく、その背後にある背景を探る。日々変化する消費トレンドを通じて、社会や企業の動きに迫り、これからのビジネス環境や戦略について考えさせられる視点を提供していく。

このところ、「ゼッテリア」が話題を呼んでいる。

大手ハンバーガーチェーンである「ロッテリア」が外食大手「ゼンショーホールディングス(HD)」に買われて以後、順次その店舗を「ゼッテリア」に変えているのだ。

この動きは数年前から行われていたが、文春オンラインでの記事を皮切りに、Webメディアや新聞社などが一斉に取り上げ、一気に「ゼッテリア」の認知度が高まった。

ゼッテリアの「とろたま牛すき焼きバーガー」(単品620円、出典:ゼッテリア)

しかし、ハンバーガーチェーンに関するニュースは、これだけではない。例えば、日本最古のハンバーガーチェーンとして知られる「ドムドムバーガー」はMBO(経営陣による買収)を行い、「ドムドム」の名前を残したまま、経営陣による運営を続けるという。

実は、このドムドムバーガーとゼッテリアの動きは、現在のハンバーガー市場における「生き残り方」をよく表している。簡単にいえば、「効率化」か「推し活化」である。

グルメバーガーとチェーン店の勢い

ハンバーガー業界は活況を呈しているが、その一方で淘汰も進んでいる。

数字だけを見れば、市場は好調だ。サカーナ・ジャパンの調査によれば、市場規模は2024年に8403億円、2025年は9062億円の見込みだという。前年比から7.8%も上昇している。

(出典:サカーナ・ジャパン)

東京商工リサーチは、ハンバーガーが「1000円の壁」を突き抜け、2000円超えになる例も紹介している。確かに「グルメバーガー」ブームは、ここ10年ぐらいですっかり定着し、都心部に限らず全国でこだわりのハンバーガーを食べられるようになった。そうした店舗では、ハンバーガーは往々にして1000円を超え、具材を豪華にしたり、セットにしたりすれば2000円も余裕で超える。

マクドナルドの業績も好調(出典:日本マクドナルド)

一方、低価格帯のハンバーガー店、つまりチェーン店も好調だ。日本マクドナルドホールディングスの2024年の全店売上高は8291億円で、9年連続で過去最高を記録している。また、営業利益も過去最高を更新。2025年12月期の連結営業利益予想も、495億円から510億円へ引き上げられており、その勢いは止まらない。

モスバーガーも業績は堅調だ。運営会社のモスフードサービスは、2025年3月期は増収増益となり、2026年3月期も増収増益予想である。コロナ禍以前の売上高は600億円台で推移していたが、今期は970億円を見込んでいる。

新規チェーンも参入の裏で起こる淘汰

この市場に参入しているのが、新規チェーンだ。

韓国発で、チキンバーガーを主力商品とする「マムズタッチ」は2024年4月16日、東京・渋谷に1号店をグランドオープンさせた。現時点では店舗展開も好調で、2026年5月までには100店舗の展開を目指すという。2026年には、街で「マムズタッチ」を見かけることも増えそうだ。

マムズタッチのボリュームセット(1200円~、出典:マムズタッチ)

日本市場に再参入したバーガーキングも成長している。2025年10月時点で、店舗数は過去最大の300店舗に到達しており、2028年末までに全国600店舗を目標に掲げている。

2025年末、香港の投資ファンドが事業を米ゴールドマン・サックスに売却したことも記憶に新しい。これは、業績不振期に買収した事業の企業価値が高まり、売却益を見込める水準に達したことを示している。その意味でも、ここからの攻勢が気になるところである。


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バーガーキングの店舗数が300店を突破(出典:ビーケージャパンホールディングス)

市場規模の拡大を背景に、個人店・チェーン店が群雄割拠しているのが、現在のハンバーガー市場である。

だが、成長市場だからといって、どの店も繁盛するわけではない。当然のことながら、プレイヤーの数が多くなれば、淘汰される店も増えてくる。実際、東京商工リサーチによれば、ハンバーガー店の2025年1~10月の倒産件数は8件で、年間最多を記録した。8件なのでまだまだ少ないように感じるものの、これからこの数値は増えていくかもしれない。

(出典:東京商工リサーチ)

こうした飽和市場においては、それぞれの店舗はより強く「個性」を求められる。「単にハンバーガーがある」だけでは価値にならず、「どのようなハンバーガーなのか」「ターゲットはなんなのか」を考えざるを得なくなるわけだ。

このような状況を押さえておけば、ゼッテリアとドムドムバーガーの動きも捉えやすい。

大前提として、ロッテリアもドムドムバーガーも中規模チェーンだ。個人店のようにエッジの立ったメニューがあるわけでもなく、マクドナルドやモスバーガーのように巨大な店舗網があるわけでもない。

では、これらの店舗はどのように戦っていくのか。

名前を守るドムドム

まず、ドムドムバーガーの事例から見てみたい。端的にいえば、その変化は「推し活化」である。

「ロッテリア」が「ゼッテリア」へと名前を変えるのに対し、ドムドムは「名前を守る」。

2026年1月16日の発表によれば、ドムドムフードサービスは株式を取得してMBOを実施し、共同出資者としてスガキコシステムズなどが参加したという。報道では「大切なブランドを未来へつないでいく」という言葉もある。「ドムドム」という名前は残し、他社の力も借りながら、競争が激化するハンバーガー市場で勝負する構えだ。

ドムドムフードサービスは株式を取得してMBOを実施(出典:ドムドムフードサービス、以下同)

ドムドムバーガーは、スーパーマーケット大手のダイエーグループが手掛けたハンバーガーチェーンである。マクドナルド上陸以前の1970年に1号店をオープンし、日本最古のハンバーガーチェーンとしても知られている。

ダイエーの衰退に伴って、その経営も傾き、近年では店舗数も減少の一途をたどっていた。しかし、SNSなどでは「ドムドム」について「懐かしい」といったコメントもあり、一部ファンから熱狂的な支持を集めている。ある種の「ファンダム」が生まれているわけだ。コロナ禍の際には、オリジナルキャラクター「どむぞうくん」が描かれたマスクが、一部店舗で販売されていることが話題となり、「コアなファン層」の存在も可視化された。

オリジナルキャラクター「どむぞうくん」が人気

マクドナルドと比べると、店舗規模は小さいが、むしろその「小ささ」こそが、ファンの一体感を生み出しているのだろう。「私たちがドムドムバーガーを支えたい」という心理が働いているのかもしれない。

その意味では、ドムドムバーガーがMBOという手法で、その名前を残すことに決めたのは、ある種の「推し活」的な流れに乗ったともいえる。商品やサービスがあふれている現在、顧客がある店を選ぶ要素の一つには「情緒的価値」がある。店を取り巻くブランドのストーリーや背景、その商品を手にしたときの「気分」が重要なのだ。その意味で「応援したい」という「気分」を高めさせる推し活的なあり方は、中小規模のチェーンの生き残り方の一つであろう。

だからこそ、ドムドムバーガーは、名前を守り、「コアなファン層」を重視する道を選んだ。

名前を捨てるゼッテリア

一方でゼッテリアは、ロッテリアという名前を「捨てる」。

ロッテリアは2026年3月末をもって国内の全店を閉店し、閉店後は順次「ゼッテリア」に転換する予定だという。2025年12月末時点でロッテリアは106店舗、ゼッテリアは172店舗であり、すでにその数はゼッテリアのほうが上回っている。

ゼッテリアの「とろたま牛すき焼きバーガー」(単品620円、出典:ゼッテリア)「倍盛り とろたま牛すき焼きバーガー」(単品990円)

そもそもロッテリアはゼンショーHDに買収されたわけだが、このグループは、現在の日本において最大級の外食コングロマリットといえる。コングロマリットとは、業種の異なる複数の企業が買収や合併(M&A)によって、一つの巨大グループを形成することだ。ゼンショーHDの傘下には「すき家」「ココス」「はま寿司」、そして「ロッテリア」など、いわゆる「外食チェーン」のありとあらゆる業態が含まれている。

なぜ、コングロマリット化が進むのか。一つには、チェーン同士の物流やオペレーションを一元化し、低コストで運営を可能にするためだ。その分、削減コストを価格に反映させるなどして、集客につなげる。

ハンバーガー市場に限らず、特に外食では材料費・人件費・燃料費の値上げなどが大きな負担としてのしかかっている。こうした中で、特に中小企業が生き残る術の一つは、このコングロマリット化の流れに乗ることである。

すでに「ロッテリア」の消滅に対して、ファンからは惜しむ声も上がっている。ドムドムバーガーのような「ファン」層も、確かにいるわけだ。ただ、あくまでもゼンショーHD、およびロッテリア側としては運営の効率化(つまり、コングロマリット化を円滑に進めること)のために店名を変えるのだ。

その意味では、ゼッテリアの誕生は「コアファンを重視する」方向ではなく、「経営の効率化」を進めるという姿勢がよく現れているといえるだろう。


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飽和したバーガー市場で、中小のチェーンが取る道は大きく2つに分かれるのではないか。

1つは、ブランド名と物語を守り、コアファン層の熱を生かして生き残ること。ドムドムは現在、それを目指している。

もう1つは、コングロマリットの一員として組み込まれることで、経営効率を重視すること。ゼッテリアがそうである。

ある意味、ドムドムバーガーとゼッテリアは、この2つの戦略が典型的に表れているといえる。もちろん、どちらが優れている、といった話ではない。

実際、それぞれの戦略には弱みもある。ドムドムの場合、スガキヤなどと連携した経営の効率化を進めてはいくものの、「コアファン層」以外への訴求を具体的にどのように進められるのか、見通しは不透明だ。

厳しい戦いが続くハンバーガー市場。今後はどうなる?(出典:ゲッティイメージズ)

ゼッテリアは逆に、これまで「ロッテリアなら行っていたけど……」というファンが店から離れ、戻ってこないかもしれない。ネット上では、変更されたメニューに対する失望の声も見られる。

それぞれのブランド改革は始まったばかりで、これらがどう転ぶかは分からない。両社ともうまく成功するかもしれないし、2つとも失敗するかもしれない。

いずれにしても、市場の過密化が進むほど、これまでとは異なる戦い方が求められることは確かである。その中で、この2社がどのような戦いを進めていくのか、注目していきたい。

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。

(ITmediaビジネスオンライン)

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