ソフトバンクスカウト「石垣元気の“変化球”がスゴい」高校日本代表に密着…「長すぎる夏」に末吉良丞“ついに本音”「帰りたい…勉強やばいです」(Number Web)
U-18野球ワールドカップの日本代表に選ばれた唯一の2年生・末吉良丞(沖縄尚学)のピッチングに触発されたのか、3年生のピッチャーたちも大会が進むにつれて調子を上げていく。その代表格が、最速158km右腕の石垣元気(健大高崎)だった。 今年のドラフト1位競合必至と噂される石垣が、世界を相手に復活を遂げた。群馬県大会では5イニングしか投げず、甲子園でも初戦の京都国際に敗れたため、2イニング計28球のみで不完全燃焼のまま甲子園を去った。2日の沖縄選抜との壮行試合でも、150km以上は出るものの球が高目に浮くなど制球力が悪く、1イニングで2点を奪われていた。 球速は出ているのに、抑えられないジレンマ。もっともやきもきしていたのは石垣自身だったはずだ。出力が大きいため力めば150kmは優に超える。しかし力むほど球は上ずり、空振りを取れずジャストミートされる。自問自答を繰り返し、まずは力まずに投げることを心がけた。石垣は復調の原因を語る。 「韓国戦の前日のブルペンでノーワインドアップを試して、下半身に粘りができたので変えました」 誰かにアドバイスされたわけでなく、自分で試してみた結果だという。ぶっつけ本番でも不安はなかった。沖縄の“なんくるないさ”の空気が、石垣の葛藤も洗い流してくれたのかもしれない。
ソフトバンクの古澤勝吾スカウトは、大会を通じて目に留まった選手についてこう語っている。 「バッターでは横浜の阿部葉太君、あそこまで引きつけて打てる技術は目を見張るものがあります。ピッチャーは石垣君で、やはり速球のアベレージが高く、まず高校生では投げられない140km以上のスプリットもすごい」 スーパーラウンドのアメリカ戦。延長タイブレークの8回1死満塁というシチュエーションで登板した石垣は、最初の打者に154kmの火の玉ストレートを連発して三球三振。最後の打者には144kmのスプリットを見せつけ、2球連続の155kmでねじ伏せた。球数はわずか8球ながら、そのうち7球が150km以上という圧巻の投球だった。
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末吉から石垣につなぐ日本代表の必勝パターンが確立された。決勝のアメリカ戦では、ふたたび末吉が先発。名実ともにエースの扱いを受ける末吉は万雷の拍手を浴びてマウンドに上がった。 初回、四球と単打で2死一、二塁となるも、走者を背負っても動じない末吉は後続をライトフライに打ち取る。2回も1死一、二塁と得点圏にランナーを置いたものの、スライダーで後続を連続三振に仕留める。3回はサードライナー、145kmのストレートで空振り三振、そして143kmを詰まらせてのファーストゴロ。アメリカ打線を完全に手玉に取った。 4回は微妙な判定による内野安打と、レフト前ヒットで1死一、三塁のピンチを招く。ここでも末吉はストライク先行で追い込んだものの、ボテボテのファーストゴロが内野安打となって失点。ここでお役御免となった。3回3分の1を投げて、被安打5、3奪三振、1失点。だが、完璧に打たれての失点ではない。緩急を織り交ぜながらの投球に、この日もアメリカ打線は末吉の球を捉えることはできなかった。 リリーフの石垣が引き継ぎ後続をピシャリと抑えるも、5回に連続四死球から満塁となり犠牲フライで失点。1点を失ったものの、石垣は3回3分の2を投げて被安打0だった。 結局、決勝は身長198cmの剛腕コールマン・ボスウィックに散発3安打、1四球、6奪三振と完璧に抑えられ、0対2で惜敗した。 優勝したアメリカの選手たちがマウンド上で喜びを爆発させる最中、スタンドでは自然発生的に「USA」コールが響きわたる。この沖縄の地での「USA」コールは、スポーツが国境を超えることを十分に示唆してくれるものでもあった。
先のソフトバンクの古澤スカウトの証言通り、バッター陣では日本代表の4番を打った横浜の阿部葉太が注目を集めた。阿部は早稲田大学への進学を希望しているとも伝えられている。 春に右太ももを痛めたものの甲子園では4試合で3割7分5厘、4打点、三振はゼロ。左右に打ち分けるシュアなバッティングで、順当に日本代表に選ばれた。 社会人の沖縄電力との練習試合、さらに大学日本代表、沖縄選抜との壮行試合の3試合でそれぞれヒットを放ち、木製バットへの高い適応力を見せた。しかし大会に入った途端、快音が止まり、オープニングラウンドの第4戦・南アフリカ戦ではスタメンを外れる。だが、スーパーラウンドで4番に復帰してから本来の姿を見せつけた。3試合連続でマルチヒットを放ち、スーパーラウンドでは12打数6安打の打率5割。代表キャプテンも務めた阿部はこう自己分析する。 「割り切って打席に立つようにしました。速球派の投手が多いなかで振り遅れがあったので、今の身体の状態を考えて軽くて振りやすいバットを選択しました」 880gのバットを大会途中で850gの軽いバットにマイナーチェンジして短期間できっちりとアジャストするあたり、さすがはプロが注目する逸材だ。