ルクレール、裁定に異議「ピアストリだけの責任じゃない」アントネッリにも矛先―サンパウロGPで”巻き添え”リタイヤ
2025年F1第21戦サンパウロGP決勝で、リスタート直後のターン1で3台が絡む連鎖クラッシュが発生し、シャルル・ルクレール(フェラーリ)がリタイアに追い込まれた。スチュワードはオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に「全責任」があるとして10秒ペナルティを科したが、ルクレールは「アントネッリにも50%の責任がある」と異議を唱えた。
ターン1での接触、ルクレール巻き添え
事故は6周目、セーフティーカー(SC)明けのリスタート直後のターン1で発生した。
ピアストリは、前を走るアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)をターン1のイン側から追い抜こうとした。だが、ピアストリはアントネッリの横に十分に並びきれないままコーナーに進入。ブレーキをロックさせながら接触を避けようとしたが、アントネッリの車体側面に接触してしまった。
この衝撃でアントネッリのマシンはアウト側に押し出され、走行していたルクレールに二次接触。ルクレールのマシンは致命的なダメージを負い、リタイアを余儀なくされた。
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インテルラゴス・サーキットのターン1で接触するオスカー・ピアストリ(マクラーレン)とアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)そして巻き込まれたシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝(インテルラゴス・サーキット)
ルクレール「アントネッリも50%の責任」
巻き添えでレースを終えたルクレールは、ピアストリだけに責任を負わせるスチュワードの判断に異議を唱えた。
「ルールブックがあることは理解しているし、スチュワードが誰に責任があるかをルールに基づいて判断していることも分かっている。でも今回は、キミ(アントネッリ)はオスカー(ピアストリ)がイン側にいることを認識していたはずだ」とルクレールは語る。
「確かに、オスカーはルールブックに書かれている『サイド・バイ・サイド』の状態じゃなかった。だけど、イン側にクルマがいると分かっていながら、その存在を無視して通常のラインを取るのは違うと思う」
「だから僕にとっては、キミとオスカーで50:50の責任だ。オスカーがすべての責任を負うべきだとは思わない。でもまあ、僕にとってはどうでもいい。あれでレースが終わってしまい、本当に悔しい」
3番手からのスタートであっただけに、その失望は大きい。「表彰台以上があったかどうかはわからないけど、表彰台は確実に狙えたと思う」とルクレールは付け加えた。
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アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の事故に巻き込まれリタイヤしたレースを経てインタビューに応じるシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年11月9日(日) F1サンパウロGP決勝(インテルラゴス・サーキット)
では、元F1ドライバーのペドロ・ラミーを含む5名のスチュワードはどのような根拠で「ピアストリに全責任がある」との判断を下したのだろうか?
スチュワードは、「ピアストリの前輪はアントネッリのミラーに達しておらず、イン側からのオーバーテイクに必要とされる“オーバーラップ”を形成していなかった」と指摘した。これはドライビング標準ガイドラインを根拠としている。
同ガイドラインでは、イン側から仕掛ける際に「前走車のミラーと自車の前輪が並ぶ」状態を“オーバーラップ”と定義している。この条件を満たしていれば、前走車はイン側に十分なスペースを残す義務を負う。
だが、ピアストリはこの基準を満たしていなかった。したがって、アントネッリには通常のレーシングラインを走る権利があり、ピアストリが無理な追い抜きを試みたことになる――これがスチュワードの判断だ。
なお本ガイドラインの運用については、杓子定規的な解釈をめぐってたびたび物議を醸している。
この裁定によりピアストリには、10秒のタイムペナルティと2点のペナルティポイントが科された。その結果、ピアストリの直近12ヶ月間の累積ペナルティポイントは8点に達した。12点で1戦出場停止となるため、残り4点の余裕しかない。
ドライバーズ選手権でチームメイトのランド・ノリスとタイトル争いを繰り広げる立場のピアストリにとって、この累積は、今後のレースで慎重な走りを強いられ得ることを意味する。
いずれにせよ、ルクレールにとっては他車のミスに巻き込まれた不運なリタイアであり、レッドブルにコンストラクターズ選手権3位の座を奪われるなど、フェラーリにとっても痛手の大きい一戦となった。
2025年F1第21戦サンパウロGPでは、ランド・ノリス(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインを達成。2位にアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)、3位にピットレーンスタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が食い込む結果となった。
ラスベガス市街地コースを舞台とする次戦ラスベガスGPは、11月21日(金)のフリー走行1で幕を開ける。