続投要請に沈黙守る日本ハム・新庄監督 希代のエンターテイナーは引き際の美学を貫くのか 鬼筆のスポ魂

ホーム最終戦セレモニーでファンの声援に応える日本ハム・新庄剛志監督=23日、エスコンフィールド北海道(三浦幸太郎撮影)

球団オーナーからの事実上の続投要請にも沈黙を続ける日本ハム・新庄剛志監督(53)が、どんな結論を下すのかに注目が集まっている。プロ野球はシーズン終盤を迎え、各球団の監督の去就が明らかになってきた。セ・リーグでは最下位に沈むヤクルト・高津臣吾監督(56)の退任が決定。一方で、2年ぶりのリーグ優勝を飾った阪神・藤川球児監督(45)をはじめ、巨人・阿部慎之助監督(46)や広島・新井貴浩監督(48)も、球団オーナーの「来季も続投」発言を受ける形で留任が決まったが、日本ハムの指揮官は全く違う状況下にある。

最大級の賛辞

日本ハムの井川伸久オーナーが事実上の「続投要請」を明らかにしたのは17日、東京都内で行われたオーナー会議に出席した後だ。今季で就任4年目を終える新庄監督について「続けてもらいたいと思っているが、ご本人が決める話。結果としてどうなるか分からないが、辞めていただく理由はない。(手腕は)非常に評価している。うちのチームに合っている」と最大級の賛辞とともに、5年目の続投を希望した。

取材を受けながら練習を見守る日本ハム・新庄剛志監督=23日、エスコンフィールド北海道(三浦幸太郎撮影)

親会社の社長も務めるオーナーがこれほどの言質を残して続投を希望するならば、監督はよほどの健康上の理由でもない限り、即座に受諾するのが球界の常識だ。だが新庄監督は自身のインスタグラムでも「今は先を見ず 今日の1戦を全員で勝ち取り 更にファイターズファンの皆を笑顔にする ただそれだけです」とシーズンに集中する姿勢を強調し、自らの進退には全く触れていない。

抜群の発信力

新庄監督は栗山英樹前監督の後任として2022年から指揮を執っている。就任初年度から2季連続で最下位に終わったが、昨季は手塩にかけて育ててきた若手選手が成長。75勝60敗8分けで2位に躍進した。今季もソフトバンクとの激しい優勝争いを繰り広げ、25日現在で79勝56敗3分けの2位。逆転Vは風前の灯(ともしび)だが、育成手腕は高い評価を得ている。

さらに独特な発信力でチームをアピールし、主催71試合の観客動員数は実数発表が始まった05年以降で最多となる223万2364人。成績、営業の両面で右肩上がりの状況となれば、球団側は「監督を代える理由がない」のだ。

春季キャンプ初日に2軍を視察し、大型三輪バイクで颯爽と引き揚げる日本ハムの新庄剛志監督=2022年2月1日、沖縄県国頭村(尾崎修二撮影)

しかし、チーム内では「今季限りで退任するのではないか」という声が根強い。その根拠として挙がっているのは「辞めるときは惜しまれながら辞める」という新庄監督の美学や、就任4年目を迎えるまでの経緯がある。2位で終わった昨季はシーズンの最後まで去就を明らかにせず、続投を表明したのは10月24日に行われたドラフト会議の1位指名終了後。「今年がマグレじゃなかったというところを(来季は)証明したい」と発言し、4年目がラストイヤーになるとのニュアンスを醸し出していたからだ。

球団は待つ姿勢

球団首脳は最後の最後まで新庄監督の結論を待つ姿勢だ。いざとなれば稲葉篤紀2軍監督(53)の昇格や外国人監督招聘(しょうへい)のプランもあるようで、本社内には将来的にダルビッシュ有投手(39)=パドレス=のプレーイングマネジャー案もあるとされる。ただし、現時点では新庄続投が最善手と見ており、日本シリーズ(10月25日開幕)進出がかなえば、同23日のドラフト会議も新庄監督出席のもとで臨む方針のようだ。

球界屈指のエンターテイナーの心は続投か辞任か、どちらに振れるのだろう。=記録は24日現在

優勝パレードに私服で参加し、ファンの声援に応える日本ハム・新庄剛志。日本一を花道に惜しまれながらユニホームを脱いだ=2006年11月21日、北海道札幌市

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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