グーグルの「クローム」、売却不可能-部門トップが独禁法訴訟で主張
米アルファベット傘下グーグルのウェブブラウザー「クローム」を巡る反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、クロームに備わる機能や性能はグーグルの他部門との「相互依存」に基づいており、他社では代替できないとアルファベット側が25日証言した。米司法省は同社にクローム売却を要求している。
グーグル部門ゼネラルマネージャーのパリサ・タブリズ氏はワシントンの連邦地裁で、クロームはグーグル全体による「17年間の協力」の成果だと述べ、「切り離そうとするのは前例がない」と指摘。「再現は不可能」との考えを示した。
セーフブラウジングモードや、パスワード漏えい時にユーザーに通知するシステムといった機能の一部はクローム単独ではなく、グーグル全体のインフラ共有で実現しているとも説明した。
3週間の審理では、グーグルの事業慣行にどのような変更を求めるかが争点となっている。同社は昨年、検索市場を違法に独占していたと認定され、司法省は検索エンジンをハードウエアのデフォルト設定にするためのメーカー側への支払いをグーグルに禁じる裁判所命令も求めている。「Gemini」を含む人工知能(AI)もこうした命令の対象とする方針だ。
クロームはグーグル独自のブラウザー。ウェブトラフィック解析のスタットカウンターによると、クロームは2024年3月時点で世界の推定66%の人々に利用される最も人気のブラウザーだ。
クロームの基盤はオープンソースプロジェクト「Chromium(クロミウム)」。クロミウムはグーグルが開発したが、他社からの技術的な貢献も受け入れており、メタ・プラットフォームズやマイクロソフト、リナックス財団などから支援を得ている。
司法省側の証人でハーバード大学でコンピューター科学を研究しているジェームズ・ミッケンズ教授はこの日、グーグルがクロームの所有権を手放しても、その機能は損なわれないと反論し、「クローム売却は技術的には実現可能だ」との見解を示した。
同教授は、人気ゲーム「フォートナイト」開発元のエピックゲームズがグーグルに対して起こした基本ソフト(OS)「アンドロイド」エコシステム(生態系)に関する反トラスト訴訟でも専門家として関与。たとえクロームを売却したとしても、グーグルはクロミウムに技術貢献を続ける動機があり、クロミウムは競合ブラウザーにも使われていると話した。
原題:Only Google Can Run Chrome, Company’s Browser Chief Tells Judge (抜粋)