米司法省、280万ドル超の暗号資産を犯罪資産として押収。財務省はBTC準備金巡り発言を訂正(あたらしい経済)
米司法省が、ランサムウエア攻撃に関わった人物から280万ドル超の暗号資産(仮想通貨)を押収したことを8月14日に発表した。 公開された捜査令状によれば、司法省はテキサス北部地区連邦地裁の起訴に基づき、ランサムウェア攻撃に関与したとされるイアニス・アレクサンドロヴィッチ・アントロペンコ(Ianis Aleksandrovich Antropenko)氏の資産を差し押さえたという。 280万ドル(約4億1,325万円)超の暗号資産に加え、7万ドル(約1,033万円)の現金および高級車1台が押収対象になった。なお、暗号資産はすべて、アントロペンコ氏が管理するウォレットから押収された。 アントロペンコ氏は今回、コンピュータ詐欺と悪用、および資金洗浄の共謀の罪で起訴されている。 司法省によるとアントロペンコ氏は「ツェッペリン(Zeppelin)ランサムウェア」を用い、米国内外の個人・企業・団体を標的に攻撃を行い、データを暗号化・流出させた上で復号や削除を引き換えに身代金を要求していたという。 押収された資産はランサムウェア活動の収益、もしくはその資金洗浄に使われたものとされ、暗号資産ミキシングサービス「チップミキサー(ChipMixer)」などを経由して資金洗浄が行われていた。さらに、暗号資産を現金化し、システム化された現金預金に預ける手法で資金隠しを行なっていたとも指摘されている。 この事件は、FBIダラス支局およびノーフォーク支局、バーチャルアセット部門が捜査を進めている。米司法省のコンピューター犯罪・知的財産課(CCIPS)も捜査に関与している。同課は2020年以来、180人以上のサイバー犯罪者の有罪を認めさせ、3億5,000万ドル超の被害資金を返還してきた実績を持つ組織だ。 なお、起訴はあくまで容疑を示すものであり、有罪が確定するまでは無罪と推定されるとのことだ。 ⚫︎戦略的ビットコイン準備金関連で混乱も また同日には、米国の暗号資産政策を巡り混乱も広がった。 財務省のスコット・ベッセント(Scott Bessent)財務長官は、8月14日のCNBCのインタビューで戦略的ビットコイン準備金に関して、米国政府がBTCを買い増すことはないと発言したが、同日午後にXにてこの発言を修正した。 ベッセント長官は「連邦政府に没収されたビットコインは、トランプ大統領が3月の大統領令で設立した『戦略的ビットコイン準備金』の基盤になる」と説明。そのうえで「財務省は予算中立的な手法を通じてビットコインをさらに取得し、準備金を拡大する方法を模索している」と強調した。 「戦略的ビットコイン準備金」は、3月にドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領による大統領令への署名で設立された。この「戦略的ビットコイン準備金」は、刑事または民事の資産没収手続きで押収されたビットコインを原資とし、売却せずに価値保存の手段として保管する仕組みだ。大統領令には「追加取得を検討するが、納税者に新たな負担を生じさせない(予算中立の範囲で)」と明記されている。 しかし、ベッセント長官の一連の発言が出た14日は、ビットコイン価格が史上最高値更新後に急落し、インフレ懸念や利下げ観測後退も重なり、市場が乱高下する展開となった。加えて、ホワイトハウスのクリプト評議会エグゼクティブディレクターを務めていたボー・ハインズ(Bo Hines)氏が8月初旬に辞任したこともあり、政権の暗号資産戦略、特に国家準備金における「予算中立的なビットコイン取得」を巡って不透明感が強まっている。
髙橋知里(幻冬舎 あたらしい経済)