【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─高値警戒で短期調整含みも、押し目には買い
11月の東京株式市場は、基本的に堅調な展開が続きそうだ。高市早苗氏が新総理となり、積極財政による経済拡大期待が高まっていることが背景にある。国内企業の決算発表についても、米関税の影響は限定的との見方が広がる可能性がある。米国経済の堅調さも後押し要因となる一方、日経平均株価の200日線との歴史的なカイリ率(+28%)や19倍と高水準にあるPER(株価収益率)など高値警戒感もあり、短期的には調整含みになる場面もありそうだ。NT倍率(日経平均株価÷TOPIX)が15.5倍と、過去最高水準にあることも意識される(データはいずれも10月30日時点)。
高市政権では物価高対策として、年内に成立が見込まれる補正予算ではガソリン税の暫定税率廃止が想定される。少数与党ではあるが、認識が近い国民民主党などとの連携により「年収の壁」議論も進む可能性がある。手取り額の増加による消費拡大へと連想がつながりやすい。押し目には買いが入ることが想定される。 日経平均株価の予想レンジは4万8000円~5万6000円。 重要スケジュールでは、すべて米国で3日にISM製造業景況指数、7日に雇用統計、13日に消費者物価指数(CPI)、14日に小売売上高、21日に製造業PMIなど。28日がブラックフライデーで、以降年末商戦が本格化する。今後の金融政策動向を占ううえで、特に雇用統計、CPIが注目される。なお、米政府機関閉鎖の影響で、経済統計の公表が遅れる可能性があることには留意したい。また、2日から取引時間が冬時間入りとなる。 なお、FOMC(米連邦公開市場委員会)、日銀金融政策決定会合ともに11月は開催がない。次回はFOMCが12月9日~10日、日銀金融政策決定会合は12月18日~19日の予定となっている。 ●好決算、FA、造船、データセンターなどが切り口に 物色面では、決算関連にスポットライトが当たる時期だ。日本では中旬にかけて3月期決算企業の第2四半期決算がピークを迎える。関税の影響などで全体としては上方修正を見込みにくいものの、個別では好決算企業が物色される展開が想定される。日経平均株価の1株利益の上昇により、PERが低下するかもポイントだ。また、決算と同時に自社株買いや増配を発表する企業が好感されることも予想される。第1四半期に好決算を発表したエムスリー <2413> [東証P]、オルガノ <6368> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]、JX金属 <5016> [東証P]などに関心が高い。
また、サーボモーターや産業用 ロボット大手の安川電機 <6506> [東証P]は、先に発表した26年2月期の第2四半期決算で、通期業績予想を上方修正している。自動化投資でロボットの需要が堅調に推移している。FA(工場自動化)関連では、小型自動旋盤のツガミ <6101> [東証P]、工作機械向けNC(数値制御)装置や多関節ロボットのファナック <6954> [東証P]、空圧制御機器のSMC <6273> [東証P]、直動案内機器のTHK <6481> [東証P]、大型減速機器のナブテスコ <6268> [東証P]、マテハン機器のダイフク <6383> [東証P]などにも期待できる。
造船関連も引き続きテーマとなりそうだ。先に開催された日米首脳会談でも、造船分野を巡って建造能力の拡大や対米投資に協力する覚書を結んでいる。経済安全保障で中国に対抗する必要性で日米の認識は一致している。造船は現在、中国が受注量で7割の世界シェアを持ち、経済安全保障上の観点からも日米韓の立て直しが急務となっている。
報道によれば、日本の造船業の建造量倍増を目指し、日本造船工業会が近く3500億円の設備投資を表明するという。大型つり上げクレーンなどを導入し、生産能力を高める。一方、今年8月にオーストラリア海軍の次期フリゲート(小型・高速)艦に、三菱重工業 <7011> [東証P]が建造する「もがみ」型護衛艦を原型とする新型艦の採用が決まるなど、前向きな話題も出ている。もがみのエンジンライセンス生産は川崎重工業 <7012> [東証P]が行っている。民間造船では名村造船所 <7014> [東証S]、三井E&S <7003> [東証P]、内海造船 <7018> [東証S]、ジャパンエンジンコーポレーション <6016> [東証S]、中国塗料 <4617> [東証P]などが注目される。
データセンターでは、電気や空調などの専門工事を請け負う企業にも恩恵がある。電気工事大手のきんでん <1944> [東証P]やトーエネック <1946> [東証P]が業績を上方修正した。空調工事では大気社 <1979> [東証P]、ダイダン <1980> [東証P]、新日本空調 <1952> [東証P]、三機工業 <1961> [東証P]などもチェックしておきたい。
半導体、AI(人工知能)関連はやや過熱感が指摘されるものの、テスターのアドバンテスト <6857> [東証P]の上方修正のインパクトは大きかった。パッケージ基板のイビデン <4062> [東証P]、切断・研削・研磨装置のディスコ <6146> [東証P]、データセンター向けメモリーのキオクシアホールディングス <285A> [東証P] 、後工程材料のレゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]、成膜装置のKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]などの押し目は投資チャンスともなりそうだ。なお、エヌビディア<NVDA>の8-10月期決算は20日前後に発表される見通し。
(2025年10月31日 記/次回は11月30日 配信予定) 株探ニュース