【日本の人工太陽計画 2030年代の発電商用化を目指す】核融合炉の実現はどこまで近づいたのか
「人工太陽」とも呼ばれる核融合発電の実現に向け、日本発の技術が存在感を高めています。核融合スタートアップのヘリカルフュージョンは2025年10月、実用炉を想定した「高温超電導コイル」の実証に世界で初めて成功したと発表しました。2030年代の実用発電を目指す同社は、いったいどこまで核融合炉の実現に近づいているのでしょうか。本記事では、その成果と今後の計画を紹介します。
地上につくる「人工太陽」への挑戦
太陽の内部構造©Kelvinsong核融合が「人工太陽」と呼ばれるのは、太陽が輝くしくみと同じ反応を、地上で再現しようとする技術だからです。太陽の中心では、水素の原子核同士が融合し、膨大なエネルギーを生み出しています。核融合発電は、この原理を人間の手で制御し、電気として利用する挑戦です。
人類はこれまで、太陽から届くエネルギーを受け取っていましたが、核融合が実現すれば人類はエネルギーの「つくり手」へと進化する可能性があります。
核融合は、発電時にCO2を出さず、燃料のもとを海水から得られるため、持続可能なエネルギーとして期待されています。また、原理的に暴走しにくく、安全性の面でも注目されています。
核融合は、単なる新しい発電方式ではありません。地球の環境問題やエネルギー制約を乗り越え、人類の未来を大きく変える「人工太陽」への挑戦なのです。
LHDのプラズマ真空容器の内部 出典:National Institute for Fusion Scienceヘリカルフュージョンが採用するのは「ヘリカル方式」と呼ばれる核融合炉の仕組みです。ヘリカル方式では、らせん状に曲がったコイルを使って、プラズマを閉じ込める磁場を作ります。特徴は、プラズマそのものに大きな電流を流さなくても、安定した閉じ込めが期待できることです。
核融合炉を発電所として使うには、ただ核融合反応を起こすだけでは足りません。長時間安定して運転できること、投入したエネルギー以上の電力を取り出せること、そして保守やメンテナンスが現実的にできることが必要です。
同社は、ヘリカル方式こそが、こうした商用核融合炉に求められる条件を満たしやすい方式だとしており、最終的に「正味発電」「定常運転」「保守性」という実用発電に必要な要件の確立を目指すとされています。
2030年代の実用発電を目指す「Helix HARUKA」
ヴェンデルシュタイン7-Xで使用されるコイルの配置。 青色のコイルが黄色のプラズマを囲う。磁力線は黄緑色。 出典:Max-Planck Institut für Plasmaphysik2025年10月に発表されたのは、実際の核融合炉に近い磁場環境の中で、大電流を流してもコイルが安定して機能するかを確かめる試験結果についてです。同社によると、コイル自身が発生させる磁場に加え、外部からの磁場も同時に作用する複雑な環境を再現し、実機向けの大型導体を使った高温超電導コイルの通電に成功しました。
高温超電導コイルは、強力な磁場を生み出すための装置です。核融合では、太陽の中心のような超高温のプラズマを閉じ込める必要がありますが、物質の壁で直接触れることはできません。そこで、磁場の力でプラズマを空中に閉じ込める必要があります。つまり、高温超電導コイルは、核融合炉の中で“人工太陽”を閉じ込めるための重要な部品といえます。
この成功を受け、ヘリカルフュージョンは最終実証装置「Helix HARUKA(ヘリックス・ハルカ)」の製作・建設に着手します。Helix HARUKAは、2030年代の実用発電に向けた統合実証を行う装置と位置づけられており、核融合炉に必要な主要技術を個別に確かめるだけでなく、実際の発電炉に近い形で組み合わせ、核融合エネルギーを安定して利用できるかを検証する役割を担います。
今後の「Helix HARUKA」の進展に注目が集まりそうです。日本の核融合技術は、世界のエネルギー競争をリードする存在になれるのでしょうか?ぜひ皆さんからのコメントお待ちしています。
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