91歳で逝去、動物行動学者ジェーン・グドールがまっとうした「人生の3つの使命」(クーリエ・ジャポン)
2025年6月、動物行動学者のジェーン・グドールが来日した。御歳、91歳。来日記念講演のために壇上に現れたその人は、写真で見て想像していたよりもずっと華奢で小さかった。 【画像】ゴンベの森での若き日のジェーン・グドール ジェーンは1960年にチンパンジーが「道具を使う」ことを発見し、当時考えられていた「人間」と「動物」の定義を問い直したことで知られる。そのときの彼女はまだ、秘書の専門学校を卒業しただけの、科学的な知識はほとんど持たない駆け出しの研究者だった。 その後、32歳で動物行動学の博士号を取得し、タンザニア・ゴンベの森を中心に、野生動物の研究・保護活動に取り組んできた。また、環境破壊によって希望を失った子供たちと出会ってからは、若者向け環境・人道支援プログラム「ROOTS & SHOOTS(ルーツ・アンド・シューツ)」を立ち上げ、その発展と「希望」の伝道に心血を注いできた。 来日時に予定されていた対面インタビューは、ジェーンの体調を鑑み、メールインタビューに切り替わった。講演の途中、ときおり声がかすれて咳き込む姿を見ると、年齢が彼女に与える影響の大きさを感じざるをえなかった。 そして10月1日、ジェーンが亡くなったというニュースが飛び込んできた。生前語っていたとおり、彼女は次の「冒険」に旅立ったのだ。 亡くなる直前まで世界中を飛び回り(亡くなったのは講演のため訪れていた米国だった)、ジェーンは私たちに語りかけ続けた。クーリエ・ジャポンが受け取ったメールの文面からは、希望に向けた「行動」を促すための励ましが溢れている。
私たちは暗い時代を生きています。政治的にも社会的にも、そして特に、環境の面で。ですから、希望を失う人が増えていても不思議ではありません。多くの人が私に「こうした現実を前に希望が持てない」、「無気力になって、何もしたくない」と言います。 よく「グローバルに考えて、ローカルに行動せよ」と言われますが、それは逆です。 というのも、グローバルに考えると当然、希望が持てなくなるからです。ですから、逆に考える、まずローカルに考えるのです。 自分の住む地域で何ができるか。気になることは何か。ゴミ、プラスチック汚染、自然を破壊しているうえに不必要に思える開発など、こうしたことについて、自分に何ができるかを考えるのです。 友達と話し合い、袖をまくって行動に出る。そうすれば、世界の変革に自分が貢献していることを実感できるでしょう。 その感覚は良いもので、さらに何かしたくなるはずです。そして、そんなあなたに他の人も刺激され、一緒に何かしたいと思うようになる。すると、世界には自分以外にも行動している人たちがいることに気づく。そうすると、グローバルに考えられるようになります。 一人ひとりが日々、世界に影響を与えているという事実、そして「どんな影響を与えるかは選べる」という事実に、私たちは気づかなければなりません。