日米財務相会談、貿易・為替問題を協議:識者はこうみる
[東京 22日 ロイター] - 加藤勝信財務相とベセント米財務長官は21日、主要7カ国(G7)財務相会議の合間に会談し、貿易・為替問題を協議した。両者は為替レートは市場で決定されるべきであり、現時点でドル/円相場はファンダメンタルズを反映しているとの共通認識を再確認したという。
市場関係者に見方を聞いた。
◎米金利高が先々の波乱要因に、日本株は調整継続か
<SBI証券 投資調査部長 鈴木英之氏>
会談の内容が伝わったが為替の円高圧力は弱まっておらず、基本的には米債売りのドル安が続いている構図ではないか。ここにきて超長期金利が急上昇し、先々の相場の波乱要因になる可能性はある。関税の影響を含めて、今後数カ月でだんだん米経済指標に悪い数字が出てくるリスクもあり、注意が必要だろう。
株式市場は、関税の影響はそこまで大きくないと前のめりになりすぎてトランプ関税ショック前の水準まで戻していた。しかし、今後は日経平均は調整が続くとみている。決算発表が一巡して買い材料が少ないところに米金利上昇という悪材料が加わり、売りが出やすい状況だ。日経平均は4月7日に付けた3万1000円割れから3万8400円台まで戻したが、この上げ幅の3分の1ほどの調整はあるとみている。
◎円債への影響限定的、目下のテーマは財政
<りそなホールディングス 市場企画部チーフストラテジスト 梶田伸介氏>
日米ともに、財政懸念が強まる中で超長期国債の需要が低迷し、金利が急上昇している。債券市場にとって目下のテーマは、金融政策よりも財政だといえる。
根本的には国債の発行が過多であるとの問題があり、発行減額が必要だと思われるが、当局から何らかのサポートがほしいところだ。このままでは金利は低下しづらい状況が続くだろう。
また米金利上昇を巡っては「米国資産離れ」というテーマも意識されている。実際にはじわじわとゆっくりしたペースで起きていることだと考えるが、短期的には米国債売り・米ドル安となりやすい。
そんな中、日米財相会談では為替水準については議論していないと伝わり、ドル円がやや円安に振れたが、一時的で、この時間は再び円高ドル安に戻っている。日銀の利上げ観測への影響も特にないだろう。
けさの円債相場は、米国債売り(金利は上昇)の流れに追随した動きとなっており、日米財相会談からの影響は限定的だ。
◎米国の信認問題と綱引き、ドルは下げ加速も
<オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ) 外国為替・コモディティ営業部ディレクター 町田広之氏>
米中関税引き下げ合意後に、日米財務相会談での円安是正を巡る警戒感などからドル/円が下げてきた。その間に米国債の格下げや米減税の話もあり「米国の信認」も新たな材料として出てきた。日米財務相会談では為替レートは市場が決める、ドル/円は現時点でファンダメンタルズ通りであるなどとは出たものの、途中から材料となってきていた信認の問題がドル/円を下押しし、その綱引きになっている。
日米財務相会談でドル/円が落ちていたのであれば戻るだろうが、米国の信認の問題の方が強く意識されるようだとドルの下げは加速する。減税法案で信認低下が止まらないとの見方が強まって、日米金利差に関係なくドル/円が下がるのであれば、ドルが140円を割れる可能性もあるが、2022年以降の日米2年債金利差の相関に基づくと140円が下値めどとなる。
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