ジャクソンホール、パウエル氏擁護で連帯へ-中銀総裁ら独立性を支持
- トランプ氏の執拗なパウエル議長批判、金融政策の信頼損なう恐れ
- 「独立性は中央銀行のDNAの一部」-ドイツ連銀総裁
米カンザスシティー連銀が主催する毎年恒例の経済政策シンポジウム、ジャクソンホール会合が21日に始まる。各国・地域のセントラルバンカーは、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長を援護する決意を伴って一堂に会する。
トランプ米大統領は利下げに応じないパウエル議長を執拗(しつよう)に攻撃し、来年5月に任期が満了する議長の後任には、より従順な人物を充てると公言した。こうした攻撃姿勢は、世界中の政策担当者を動揺させ、インフレ抑制に不可欠と思われる中央銀行の独立性を損なう不安が高まった。
グランドティトン国立公園に臨むワイオミング州ジャクソンホールを欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁、イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁らが訪れる。
経済がより脆弱(ぜいじゃく)な国・地域の政治指導者が、トランプ氏の言動で意を強くする場合は特にそうだが、選挙で選ばれた為政者が金融政策担当者に圧力をかける危険を警告し、パウエル氏への強い支持が表明されることになるはずだ。
ECB政策委員会メンバー、 ナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁は「独立性は中央銀行の DNAの一部だ。これが至る所で認識されれば、望ましいことこの上ない」とブルームバーグ・ニュースに語った。
各国・地域の中銀総裁にとって、21-23日の日程で開催されるシンポジウムは、今年に入り開かれた他の会合と同様、独立性を巡る闘争の最前線にメッセージを発信する新たな機会となる。
6月の国際決済銀行(BIS)年次総会、ECBが7月初めにポルトガルのシントラで開催した会議の様子について、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「セントラルバンカーらがジェイ(パウエル氏)とFRBの周りに結集し、米連邦準備制度の独立性を公然と支持した」と振り返る。
「今度は米国の聴衆向けにメッセージを発信する機会になる」とポーゼン氏は指摘するが、そうしたメッセージが米国で必要になることは、最近までなかっただろう。
米連邦準備制度は1970年代にインフレ抑制に失敗し、大統領からの金利引き下げ要請に応じることもあったが、ボルカーFRB議長の下で、確固たる独立性に基づく金融政策決定を開始した。
政治家は中銀に低インフレ、あるいは低インフレと完全雇用を同時に目標とする責務を要求するが、より長期的に経済に最適な政策の決定は中銀に任せる。これがインフレ抑制の最も効果的な方法だと研究も示す。
今年1月のホワイトハウス復帰後、トランプ大統領はパウエルFRB議長に公然と圧力をかけ続けており、前例がないわけでないとしても、先進国での不快な変化と映る。
こうした状況は金融市場にも影響を及ぼしている。トランプ大統領の連邦準備制度への攻撃は、二転三転した関税政策や財政見通しの悪化懸念と共に「米国売り」のトレードに拍車を掛けた。ドルは先進国市場通貨バスケットに対し、上期に10%余り下落し、1973年以来で最悪のパフォーマンスとなった。
国内でもドル安の影響はほぼ見られず、株価は相次いで最高値を更新し、インフレが深刻な問題になる兆しは、今のところほとんど表れていない。しかし、トランプ氏がパウエル議長を絶えず批判することで、金融政策への信頼が損なわれる危険がある。
日銀やFRB、ECBがメンバーの各国・地域中銀の協力機関、BISのカルステンス総支配人は今年6月の最後の会見で、「誤った金融政策運営がインフレや金融システムに壊滅的な影響を与え、個人の生活や企業経営に波及効果を及ぼし、国を瀬戸際に追い込んだ例は歴史上幾つも存在する」と警告した。
原題:Powell’s Global Peers to Cheer for Fed in Rebuke to Trump (抜粋)