中東依存9割超:日本の原油備蓄と隠れたリスク
トウシル編集部(以下、トウシル):中東情勢が緊迫化する中、日本が原油の9割以上を中東に依存していることのリスクの大きさに不安の声が上がっています。そもそも、なぜこれほどまでに依存度が高まってしまったのでしょうか。
岩瀬昇氏(以下、岩瀬氏):戦後一貫して石油消費量は増加していましたが、1970年代のオイルショックを経て日本は脱石油にカジを切りました。その結果、逆オイルショックで油価が下落するまでは減少に転じました。その後、再び右肩上がりで増加に転じ、この期間は供給源の多様化を模索した時期もありました。
しかし、2000年代に入ってからは長期的な減少傾向にあります。資源エネルギー庁の調査によると、2000年度には年間2億5,460万キロリットル(439万バレル/日)だった原油輸入量が、2023年度には年間1億4,480万キロリットル(249万バレル/日)にまで落ち込んでいます。
経済合理性に基づき経営をしている石油会社は輸送効率を考慮し、サウジアラビアやUAEを中心とした特定の産油国から大型タンカー(VLCC)で大量輸送することでコストを抑えるため、供給源を中東へ集中したのです。
トウシル:中東原油が不足した場合、他の地域の原油、例えば米国のシェールオイルなどで代替することはできないのですか。
岩瀬氏:日本の石油産業には、戦後復興期から続く歴史的・技術的な制約があります。
日本の石油精製企業は、程度の違いがありますが欧米の石油資本(メジャー)の技術的・資金的援助や原油供給を受けることで再興に乗り出しました。例えば、エクソンモービルの援助を受けた製油所は、サウジアラビアの中・重質な原油を精製するのが最も効率的なモデルで設計されています。
BPやシェルから支援を受けた会社は、中・重質油の割合が高いイランやクウェートの原油をベースにした設計になっています。
もちろん、その後数十年を経ていますのでこのままではありませんが、基調は不変です。
一方、米国のシェールオイルは「超軽質原油」です。中東産原油に特化した日本の製油所では軽質すぎるため、精製効率が低下します。
また、日本の製油所は、重質な原油を分解してガソリンなどの付加価値の高い製品を作るための二次装置に大きな投資を行っており、シェールオイルを扱っても設備を有効に活用できません。
シェールオイル以外では、アフリカや北海(ブレント)の原油もありますが、これらの原油も多くは軽質です。最近、サウジアラビアの紅海側、ヤンブー港からホルムズ海峡を迂回(うかい)して原油を輸入したと報じられましたが、この石油会社はそのような超軽質原油を精製するのに適した装置を持っており、通常の輸入行為でした。
これらの原油は中東原油に比べて輸送距離が長く、輸送コストが増大します。国際市場全体での原油価格高騰により、日本はこれまで以上に高値で購入せざるを得なくなるでしょう。
迂回ルートの輸送能力は「限定的」
トウシル:ホルムズ海峡から紅海側に迂回して原油を輸送することはできますか?
岩瀬氏:サウジアラビアとUAEには、ホルムズ海峡を迂回して紅海やオマーン湾に原油を輸送するパイプラインが存在します。サウジのペトロライン(東西パイプライン)やUAEのハブシャン・フジャイラ・パイプラインなどがその代表です。
しかし、これらのパイプラインの輸送能力には限りがあります。
サウジの東西パイプラインは約700万バレル/日の能力で、国内製油所への供給と限られた数量を紅海沿岸から輸出するために使われており、余剰能力はホルムズ海峡経由分を全て代替できるほどの余力はありません。
UAEのパイプラインは現在、100数十万BDの能力をほぼフル稼働させており、失われた輸出量を全てカバーすることは困難です。両国合わせても、ホルムズ海峡経由の原油輸出量(約1,500万バレル/日)のうち、最大で300万〜400万バレル/日程度しか代替できないとみられています。
つまり、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く限り、残りの約1,000万バレル/日以上が供給停止となることを意味します。
このような状況の中、サウジアラビアは5月船積みの価格を大幅に引き上げました。アジア向け価格は、オマーン原油とドバイ原油の月間平均価格に毎月サウジが定めるプレミアム(上乗せ価格)を加減する仕組みなのですが、5月のプレミアムを4月対比で約20ドル引き上げてきたのです。
ベースのオマーン原油、ドバイ原油が高騰している上にプレミアムの増額ですから、ホルムズ海峡が開放され、従前通りの原油が輸入できるようになっても価格高騰の影響をもろに被ることになります。
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