患者・市民の臨床研究、臨床試験への参画目指すALS Caféハイブリッドで開催 動画公開も

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者・市民が、将来の臨床研究や臨床試験にチームの一員としてかかわることを目指す患者・支援者養成プログラム「ALS Café(日本神経学会主催、田辺三菱製薬医学教育助成事業)」が2025年10月4日、東京都内の会場とオンラインのハイブリッドで開催された。ALSの治療、研究に携わる20人の医師、研究者が登壇し、ALSという病気、医療と研究の仕組み、新薬ができるまで、ALS治療開発の今とこれからについて分かりやすく解説した。会の模様はALS CaféのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@ALSCaf%C3%A9channel)で公開している。

患者療養支援事業として2017年にALS symposiumを開催。翌2018年からはALS Caféに名称を変更し、前回までは患者療養支援とPatient and Public Involvement(PPI:患者・市民参画)の場として実施されてきた。10回目となる今回はPatient Advocacy Program(PAP:患者・支援者養成プログラム)として「ALSを学び、未来を変える」をテーマに開催された。 前年までのALS Caféで行われていたPPIは患者・市民が臨床試験・研究の仕組みを理解し、意見表明されたものを臨床試験・研究にフィードバックすることを目的としている。今回の目的として掲げたPAPは、「患者の視点を生かす」という点ではPPIと共通するが、さらに参画のレベルを上げ、たとえば患者・市民が診療ガイドラインを最初から医療者、研究者と一緒に作ったり、政策提言をしたり、資金調達や啓発活動に参加したりと、幅広い領域で社会・制度へ働きかける役割を担う人材の育成を目指して行われる。 今回のALS Caféは、患者・市民が将来の臨床研究や臨床試験でチームの一員としてかかわることができるようになるための第一歩として、試行的に実施された。 開会のあいさつでは、東邦大学の狩野 修(かの おさむ)さん(医学部内科学講座神経内科学分野 教授)が「今日のゴールは、治療薬開発に向けた全体像を把握し、皆さんと共有することです。研究の推進などにあたり企業、行政、アカデミアが連携する『産学官』という言葉が使われます。しかし、これは一昔前の言い方で、現在はこれに患者さんが加わって『産学官患』と言っています。この中で一番大事なのは患者さん・市民です。彼らはよりよい治療を受け、生活の質を高めたいと思っているはずです。今までは待つことしかできませんでしたが、今後は臨床研究や臨床試験に主体的に参画することが大事になってきます。立場によって向いている方向は少しずつ違いますが、ALSを克服したいという気持ちは一緒です。皆さんと一緒にALSを学び、ALSの未来を変えていきたいと思っています」と話した。 約4時間にわたり医師、研究者らが▽ALSとはどのような病気か▽遺伝カウンセリング▽日本の医療制度と医療費の仕組み▽研究を支えるお金▽治験(臨床試験とは何か)▽日本と世界のALS治験の動向――などについて簡潔に分かりやすく説明し、会場の参加者との意見交換も行われた。 最後に日本神経学会代表理事の西山 和利(にしやま かずとし)さん(北里大学医学部脳神経内科学 主任教授)が「治験をうまく進めること、新しい治療を患者さんに届けたり当局に認めてもらったり企業に開発を働きかけたりすることなどは、全て(当事者に代わって権利を擁護・代弁する)アドボカシーの一環です。日本神経学会は、ALS患者さんに貢献するため何ができるのか、しっかり考えていきたいと思います」と、学会としても、患者・市民参画にかかわっていく意向を示した。

メディカルノート

Medical Note
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