銀行株買い・不動産売りの「高市トレード」再燃-防衛株は大幅高
6日の日本株市場では、東証株価指数(TOPIX)銀行業指数が逆行安。金融引き締めに慎重な高市早苗前経済安全保障担当相が自民党総裁に就任し、日本銀行の追加利上げが遠のくとの見方から銀行売り・不動産買いの「高市トレード」が再燃した。
三菱UFJフィナンシャル・グループ株は一時3.4%安の2235.5円と1カ月ぶりの日中安値をつけた。銀行業指数は午後に一時プラスに転じる場面もあったが、TOPIX33業種中で唯一下落し、一時2.5%安まで下げた。一方、有利子負債が多く、低金利の恩恵を受ける不動産業指数は一時5.2%高と4月10日以来の日中上昇率となった。
事前の報道や海外予測市場では小泉進次郎農林水産相が優勢とみられていただけに、景気刺激を重視する高市氏の勝利の織り込みが急速に進んだ。日経平均株価は一時4.8%高の4万7976円まで急伸し、日中最高値を更新した。
コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、リチャード・ケイ氏は、高市氏は利上げに消極的なため、日銀利上げ観測の恩恵を受けてきた銀行株は「再び軟調となる可能性がある」と指摘する。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では6日午後1時半すぎの時点で10月利上げが約25%の確率で織り込まれ、3日時点の57%から低下した。
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防衛株に追い風
IHI株が一時16%高、三菱重工業株が15%高、川崎重工業株が13%高など防衛関連株が上昇率上位に浮上した。高市氏は、防衛費など必要な投資には赤字国債の発行も選択肢とするなど、防衛力拡大に前向きな姿勢を見せており、関連株の追い風になった。
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ゴールドマン・サックス証券は、防衛費は国内総生産(GDP)比2%を超える水準へ段階的に引き上げられる可能性があるとみている。同証の日本株ストラテジスト、ブルース・カーク氏らは、新政権下で米国との通商摩擦が再び高まるリスクは比較的限定的で「防衛、造船、サイバーセキュリティーといった経済安全保障分野での協力は、むしろ今後さらに加速する可能性がある」と指摘している。
経済安全保障担当相としての経験がある高市氏の勝利で、政策支援期待から半導体関連株も買われている。高市氏は原子力発電の推進派でも知られており、原発関連株も高い。原発では、東京電力ホールディングスが6.5%高、日本製鋼所が15%高など。次世代原発の核融合関連銘柄の浜松ホトニクスは12%高、東洋炭素株は8%高など。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は6日付リポートで、政策物色テーマとして防衛や核融合に加えて、量子コンピューターを挙げた。関連のNEC株は一時12%高、富士通株は11%高など。
モルガン・スタンレーMUFG証券の中沢翔氏らはリポートで、高市氏は経済安全保障の観点から国産半導体産業の強化を掲げ、ハイテク輸出株は円安の追い風と政策支援期待から上昇が見込まれると指摘。高市氏の掲げる国防強化やインフラ投資、原発推進政策も関連銘柄の追い風になるとの見方を示した。
— 取材協力 Alice French and Kentaro Tsutsumi