欧防衛スタートアップ、低コスト巡航ミサイルを月300発のペースで生産中
欧州の防衛スタートアップ=デスティナスはロイターの取材に「欧州で1,750発以上の低コスト巡航ミサイル=ルタ Block1を製造し、月の生産率は300発近い」「我々はウクライナ侵攻以前に欧州が1年で生産していたよりも多くの巡航ミサイルを1ヶ月で生産している」と明かし、低コスト巡航ミサイルの導入が本格化している。
参考:Destinus’ monthly output tops Europe’s pre-war annual cruise missile production 参考:Ruta B1: the production system behind 1,750 missiles
欧州の防衛スタートアップ=Destinus(デスティナス)は反プーチンのロシア人=ミハイル・ココリッチ氏がスイスで立ち上げた企業で、元々は水素動力の極超音速旅客機を開発するスタートアップだったが、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発すると防衛分野に進出し、2024年にロシア国籍を捨ててスイス国籍を取得、さらに武器輸出規制が厳しいスイスからオランダに本社を移して欧州を代表する防衛スタートアップの一角にまで急成長する。
デスティナスは迎撃ドローン=Hornet(ホーネット)シリーズでも一定の成功を収めているが、現在の主力はKryla(クリラ)やRuta(ルタ)といった低コスト巡航ミサイルで、2026年4月にドイツのラインメタルと大量生産に向けて合弁企業=Rheinmetall Destinus Strike Systemsを立ち上げ、既にドイツ国内でクリラの初期生産が始まっており、2027年末までに射程800kmのルタ Block2、2028年末までに射程2,000km以上のルタ Block3の資格取得(各種試験とNATO基準準拠への証明=航空機の型式証明取得のようなもの)を終えることが目標だ。
ロイターの取材に応じたココリッチ氏は「欧州で1,750発以上のルタを製造した」「我々はウクライナ侵攻以前に欧州が1年で生産していたよりも多くの巡航ミサイルを1ヶ月で生産している」「ルタの生産率は月300発近い」「来年には巡航ミサイルに使用している自社製ターボジェットエンジンの供給量がウクライナを含む欧州全域の需要を満たすことができるだろう」「このエンジンは自社製ミサイルだけではなく他社製ミサイルにも供給している」「250kgのペイロードを搭載して700km以上飛行できるルタ Block2の生産も開始した」と述べ、生産上の課題が解決されると次は軍の運用能力がボトルネックになると指摘している。
“十分な抑止力を得るには数万発のミサイルが必要だが、最大の課題は欧州の顧客が膨大な数のシステムを運用するための部隊と兵站能力を構築する必要があるということだ。ルタ Block2は専用コンテナに収められて保管、輸送、発射までを行うよう設計されており、Block1に比べてミサイルの大量備蓄における物流を簡素化できるが、将来のミサイル備蓄には保管、輸送、保守、標的設定のための支援インフラが必要で、欧州は精密攻撃兵器の備蓄と配備の方法を再考する必要がある”
要するに大量のミサイル備蓄があっても実際に発射するまでのパイプラインが量に応じた太さになっていなければ「ミサイルを大量に持っているだけで投射能力自体が拡張されるわけではない」という意味で、これはミサイルを実際に発射するランチャーや運用する兵士の数の拡張だけではなく、ミサイルを保管する場所、備蓄しているミサイルの保管体制、備蓄から取り出したミサイルの運搬能力、これだけのミサイルをどこに発射するのかを決めるターゲティング能力をセットで拡張しなければ「潜在的な敵対者への十分な抑止力にならない」と言いたいのだろう。
さらにココリッチ氏は「中国のサプライヤーにアクセスできるならミサイルをより安く、より早く、より簡単に製造できるが、我々は中国製部品を一切使用しない」と述べ、需要が高まる長距離能力の射程についても「より遠距離の目標を攻撃できるミサイルも必要になると思うが安価で短距離のミサイルが必要だ」と言及し、射程1,000km未満の安価なものが将来のミサイル需要の大半を占めると予想した。
ちなみにデスティナスで製造・サプライチェーンの最高責任者を務めるシドニー・ベルント氏も「我々はルタ Block1を1,750発完成させ、月300発近いペースで生産している。ルタ Block1に搭載されているT150ターボジェットエンジンは自社で製造しており、2026年6月に1,000基目のT150が納入された」と述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:Destinus