米政権、AI半導体輸出の新規制を計画-マレーシアとタイが対象
トランプ米政権は、エヌビディアなどによるマレーシアとタイへの人工知能(AI)向け半導体輸出を制限する計画だ。中国に半導体が密輸されるリスクを阻止する取り組みの一環となる。
米国は、中国によるエヌビディアの最先端半導体の輸入を制限している。事情に詳しい複数の関係者によると、米商務省の草案は、中国が最先端半導体をマレーシア、タイ両国の仲介業者を通じて入手するのを防ぐことを目的としている。この規制案はまだ最終決定には至っておらず、内容が変更される可能性もあるという。
当局は、マレーシアとタイに対する新たな規制を導入する一方、バイデン前政権が打ち出した「AI拡散ルール」を正式に撤回する計画という。この規則はバイデン氏の退任直前に発表され、エヌビディアなどの米企業や同盟国からの反発を受けていた。
関連記事:バイデン米政権、AI半導体輸出で新規制発表-大半の国に数量規制
今回の規制案は、トランプ氏が公約していた「バイデン政権のAI拡散アプローチの見直し」の第一歩となる。ただし、関係者によると、草案は包括的な代替策とは程遠い。米国製AI半導体チップが海外データセンターで使用される際の安全条件などについての明確な規定はなく、中東を巡るリスクも依然として未解決だという。トランプ政権が今後、マレーシアやタイにとどまらず、より多くの国々への規制を導入するかも現時点では不透明だ。
米商務省は取材へのコメント要請に応じなかった。AI半導体チップ市場の支配的企業であるエヌビディアはコメントを控えた。タイ、マレーシア両政府の報道担当者も回答していない。
米当局者らは長年、米国製のAI半導体チップを輸入できる国や、条件について議論を重ねてきた。
一方で、 世界各国・地域はエヌビディアの半導体を必要としている。米政権は、中国が魅力的な代替を提供する前に、米技術を用いたAIシステムを各国・地域が構築する状況を整えたい考えだ。
ただ、ひとたび半導体が米国やその同盟国から離れると、何らかの形での中国への流出や、アジア諸国外のデータセンターが中国AI企業によるリモートアクセスを許すとの懸念がある。
特に、東南アジアは焦点となっている。オラクルなどの企業がマレーシアで積極的にデータセンターに投資しており、貿易統計でも、このところマレーシアへの半導体出荷が急増していることが示されている。米政府からの圧力を受け、マレーシア当局は関連する輸入品の厳格な監視を約束しているが、今回の米商務省の規制案は、米国側の懸念が依然として根強いことを示している。
原題:US Plans AI Chip Curbs on Malaysia, Thailand Over China Concerns(抜粋)