村上宗隆、岡本和真は今オフにメジャー移籍か 近本光司が残留なら阪神V2へ視界良好 鬼筆のトラ漫遊記

就任1年目でリーグ優勝を果たし、選手らに胴上げされる阪神・藤川球児監督=7日、甲子園球場(林俊志撮影)

阪神・藤川球児監督(45)が夜空に5度舞った7日の甲子園球場。球団史で初の新人監督Vの余韻が覚めぬ中、「虎のわが世の春は来季も続く」という見通しが早くも浮上しています。ヤクルト・村上宗隆内野手(25)に続き、巨人・岡本和真内野手(29)も今オフの米大リーグ移籍が濃厚であることが判明。ライバル球団の4番打者が相次いでポスティング制度を利用して海を渡るならば、戦力格差はさらに拡大する!? 懸案は近本光司外野手(30)が国内フリーエージェント(FA)権を行使するかどうかですが、慰留に成功すれば戦力の低下は考えにくく、左うちわは来季も継続といえそうです。

何度も見られないはずが…

阪神が優勝する瞬間というのは、人生でそう何度も見られるものではないと思っていました。これまでは…。

2023年9月14日。巨人戦に勝利し、岡田彰布監督が18年ぶりのリーグ優勝を飾り、甲子園球場の夜空に舞ったとき、記者席から見つめながら「生きててよかった」と思いました。それがどうです。あれから2年後の25年9月7日、優勝マジック「1」の状況で行われた広島戦に2-0で勝利し、藤川監督が5度、甲子園球場の夜空に舞った。何度も見られない…どころかまた勝った。すぐに勝ったのです。

リーグ優勝の祝勝会で、ビールを浴びる阪神・藤川球児監督=7日、兵庫県内(水島啓輔撮影)

虎番時代はほとんど暗黒時代。8月下旬になると駅のロッカーにジャケットを預けて球場入り。試合前になると、ひそかに球場を抜け出して預けていたジャケットを引っかけて阪神電鉄の首脳の家に向かっていました。当然、家の前では他社の記者と会う。ならば、わざわざジャケットを隠す必要はないのに、なんとか抜け駆けしたい…という記者魂?が奇妙な行動を取らせていたのでしょう。あの頃は悲しいほど弱かった。監督を代えたってどうなるものでもない…と分かっているのに結果責任はどうしたって監督問題になる。

あの頃は新聞記者には休みなんてなかった。8月の長期ロード(別名・死のロード)は20泊21日とか、23泊24日の出張が当然のようにありましたし、途中で休むなんて気もなかった。広島-横浜-名古屋-東京…なんて長期出張もザラ。ところが、担当している阪神は全く勝たない。どうしたって誰が悪い、どこが悪いにファンの視線が集まります。そんな時代を経験している者からすれば、この3年間は思いもしない、経験したこともない日々です。

総額300億円規模の契約も

2年前はリーグ優勝と日本一、昨季も最後まで優勝を争っての2位。そして、今季は優勝を決めた段階で2位の巨人に17ゲーム差をつけた独走。こんな強いチームになるなんて、想像もできませんでした。しかも、この夢のような?時代はまだまだ続きそうという球界情報が流れています。なぜなら来季、優勝を争うとみられるライバル球団の4番打者が今オフ、相次いで大リーグに移籍し、さらに戦力低下を招くと予想されているからです。

まずヤクルトの4番・村上宗隆です。年俸6億円の3年契約が今季で切れます。それに伴い「将来的にはメジャーで勝負したい」という本人の強い意志を球団側も容認の方向です。ポスティング制度を利用して今オフ、大リーグに移籍する-という情報は海を渡り、メジャー30球団にも知れ渡っています。

長期離脱から復帰後、本塁打を量産しているヤクルト・村上宗隆。球団はポスティングシステムによる今オフの米大リーグ移籍を容認している=5日、横浜スタジアム(長尾みなみ撮影)

大谷翔平や山本由伸が所属するドジャースだけではなく、ジャッジが所属するヤンキースやイチロー氏が会長付特別補佐兼インストラクターを務めるマリナーズ、ダルビッシュ有や松井裕樹が所属するパドレスなどによる争奪戦の様相…と噂されています。

村上がバックスクリーンに豪快に3発(12、13、14号)ほうり込んだ8月30日の広島戦(神宮)では、パドレスのプレラー・ゼネラルマネジャー(GM)が来日して視察。当然ながら高評価です。4~5球団による争奪戦の結果、総額300億円の契約もあり得るといいます。

「憧れていた場所」

そして、もう一人。巨人の主砲・岡本にも今オフの大リーグ挑戦の可能性が膨らんでいるようです。昨年12月3日の契約更改交渉で、年俸は1億2千万円アップとなる5億4千万円の単年契約に。更改終了後の会見で「年俸1億円」「24年契約」と大ボケ発言を連発後、メジャーに対する憧れを口にしています。

「やっぱり昔から憧れていた場所。目標にしていた場所でもある。毎年毎年、上を目指してずっとやっている。野球をしていたら、そういう風な目標はみんな持っていると思う。僕もその一人で、しっかり頑張りたいな」と発言しています。

今オフの米大リーグ挑戦の可能性が高まっている巨人・岡本和真=3日、京セラドーム大阪(林俊志撮影)

来季中には海外FA権を取得する、という背景もあります。FAでなんら見返りなしに出ていくよりも、ポスティング制度でメジャーに移籍する方が、育ててくれた巨人に対する金銭的な恩返しにもなります。シーズン全日程が終了すれば、「岡本メジャー」の機運が一気に増してくるかもしれません。23年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で活躍した経緯もあり、大リーグ側でも村上に匹敵すると評価されているようです。

ともに長期離脱

村上、そして岡本も…となると、来季のヤクルトと巨人の戦力事情はどうなるのでしょうか。今季、村上は昨オフに受けた右肘のクリーニング手術で出遅れました。復帰初戦となった4月17日の阪神戦(神宮)で今度は右脇腹を故障。約3カ月の調整を経て、7月下旬に1軍に再昇格しました。そこから打つわ、打つわ…で今季はわずか37試合の出場にもかかわらず、リーグ3位の18本塁打。もし、シーズンを通じて出場していたら、最下位に沈むヤクルトの成績は大きく違っていたでしょう。

巨人の岡本も同じですね。5月6日の阪神戦(東京ドーム)で一塁守備の際に打者走者と交錯し、左肘靱帯(じんたい)損傷で長期離脱。8月16日の阪神戦(東京ドーム)でようやく1軍に復帰しました。岡本が万全の状態で試合に出続けていたら、阪神にここまでの独走を許していなかったかもしれません。

祝勝会でビールかけを楽しむ阪神・近本光司。国内FA権を行使するかどうか注目される=7日、兵庫県内(中井誠撮影)

村上も岡本も今季は故障離脱しましたが、来季は海の向こう…となると、阪神との戦力格差は誰がどう見たってさらに広がります。阪神の懸案は国内FA権を取得した近本の残留交渉だけです。うまく残留の運びとなれば、来季も優勝候補の一番手は阪神!となりませんか? ひいき目なしでそうなるでしょう。

藤川球児監督が宙に舞った夜、虎の視界はさらに良好であることが分かりました。

=金額は推定

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て客員特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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