タクシーで「戦利品」の真珠見せ合い 宝石泥棒2人組が帰る先

真相・ニュースの現場から

毎日新聞 2026/4/13 06:00(最終更新 4/13 06:00) 有料記事 1944文字
ルーブル美術館で展示されているルイ15世の王冠。ダイヤモンドがちりばめられているが2025年の事件では被害には遭わなかった=パリで2024年9月、春増翔太撮影

 その輝きは数千年前、紀元前の時代から、富の象徴として人々を魅了する。故に宝石は、ある者たちを引き寄せ続けてきた。

 「世界最古の職業」の一つとされる、泥棒だ。

 2025年10月、パリのルーブル美術館で、王族ゆかりの宝石など8点が盗まれた。被害総額は8800万ユーロ(約160億円)。何人かの容疑者は数日後に捕まったが、品物は戻ってこなかった。既に闇市場に流された可能性が高いと、海外メディアは報じている。

 実は、こうした「宝石泥棒」は日本でも毎年のように捕まっている。

 複数の事件からは、海外の窃盗団が「簡単に盗める」と日本を狙い、盗品を国外に持ち出している実態が浮かび上がる。

 海外から日本を狙う「宝石泥棒」が後を絶ちません。なぜ日本の展示会が標的にされるのか。前編ではその背景に迫ります。 後編:見え隠れする泥棒の「指南塾」 日本は元が取れる?

「戦利品」のお披露目会

 24年1月の白昼、東京の湾岸部を羽田空港に向けて走る1台のタクシーがあった。後部座席に、2人の女性がいた。

 「×××大丈夫か?」

 1人がどこかに電話をかけ、なまりの強い中国語でまくしたてる。湖南省特有の方言だ。隣でもう1人がかばんの中から大量の真珠や指輪を出し始めた。

 数時間前、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれていた宝飾品展から消えた盗品だった。

 車載カメラには、2人が「戦利品」を見せ合う様子が映されていた。

真珠564粒手に中国へ

 手口は大胆で荒かった。

 2人は出店ブースを次々に回った。「宝飾品コンサルタント」と書かれた赤い名刺を差し出し、展示品のネックレスや指輪を手に取った。

 「私にも見せて」

 受け取った方の女性が、近くにいた店員のすきを突いてバッグに入れる。2人が巡った3ブースからは、真珠564粒とアクセサリー数点(計573万円相当)が消えた。

 会場での滞在は2時間弱。2人はすぐにタクシーを拾って羽田空港に向かい、日付が変わった頃には中国行きの機上にいた。

 警視庁幹部によると、そうした姿の大半が防犯カメラに映っていたという。

 「熟練の技もなにもない。万引きみたいな手口だった」

展示会狙い次々と

 各地で開かれる宝飾品展を狙う窃盗グループは、後を絶たない。

 25年4月には甲府市であった見本市が荒らされ、モンゴル籍の男女4人が捕まった。東京近郊に暮らす40代の女性とその弟、20代の息子…

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