『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は科学的にアリ? タイムトラベル映画を実証分析

過去への移動、とりわけ過去の特定の場所への移動は、タイムトラベル映画でもっともよく見られるものだ。過去への移動についてはふたつの理論がある。 1.タイムライン(年表)が固定している。起きたことはすべてタイムラインに書き込まれており、過去に戻っても出来事を変えることはできない。あなたのタイムトラベルもすでにタイムラインに書き込まれている。 2.タイムラインが変動する。過去に戻ってあなたが起こす変更が、別の未来をもたらす。それによってあなたの存在が消えてしまうこともありうる。 第一の理論の例として挙げられるのが、『12モンキーズ』と『LOOPER/ルーパー』だ。この両作品では、未来はすでに決まっている。過去への移動によってあなたは過去に生き、過去と関われるが、歴史を変えることにはならない。過去に戻る原因となった出来事はすでに起きている。あなたは世界の運命を知りながらただ生きるのだ。 一方で、未来からやってきたとしても、あなたの未来が決まっていない可能性もある。 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『ターミネーター』、『ターミネーター2』は、この点をとても慎重に扱っている。タイムトラベルの物理的な仕組みについて、主要な構成要素以外は詳しく描かれていないが、タイムトラベラーのとる行動でその未来が変わる。 カイル・リースとサラ・コナーは、立ち上がる機械たちと戦うことになる少年を殺す(あるいは生まれるのを阻止する)ために未来から送り込まれたターミネーターと戦って、審判の日を回避したり遅らせたりすることができる。 マーティ・マクフライは、友人の命を救うために時間を移動するが、その過程で自分の存在をないものにしないよう注意しなければならない。この二作は、未来を変えられるタイムトラベル映画の好例だ。 『スター・トレック』、『スタートレック ファーストコンタクト』『スタートレックIV 故郷への長い道』も同様で、実に効果的にこのタイプのタイムトラベルを扱っている。 ◾️科学者が推す正しいタイムトラベル映画 タイムトラベルを詳細に描きつつ、科学的にも正確なことで際立っているのが、『インターステラー』と『コンタクト』の2作だ。皮肉なことに、どちらも科学者のキップ・ソーンがコンサルタントを務めており、どちらもブラックホールやワームホールの概念を取り入れている。 『インターステラー』では、ブラックホールの重力場の奥深くで時間が異なる速さで進み、それが映画の後半での相対論的ゆがみにつながる。『コンタクト』では、地球上での一瞬が、銀河系、ひいては宇宙全体でのほぼ一日の旅に相当する。これらの映画では、ワームホール、ブラックホール、一般相対性理論の物理学がふんだんに、そして見事に描かれている。 最後に、“タイムループ”によってタイムトラベルを描いているもっともリアルで興味深い映画を挙げよう。『恋はデジャ・ブ』だ。 一般相対性理論の解として、時間的閉曲線を認めるものはふつうは受け入れられない。祖父殺しのパラドックスといった哲学的懸念が生じるからだ。だが、数学的解は内的に自己矛盾がなく、特に、ループの始まりが毎回リセットされた状態になるということにすれば、現実を表すことができる。『恋はデジャ・ブ』はこれを実にうまく利用しており、やさしさと自己発見を描いたこのユーモラスで道徳的な物語では、充分な変化を起こしてはじめてタイムループが切れる。この作品も科学の描き方は十分とは言えないものの、タイムループの描き方としてはこれ以上のものはない(『オール・ユー・ニード・イズ・キル』はまだ見ていないのでなんとも言えないが)。 以上が、私がこれまで見た中で、タイムトラベルを科学的に正しく扱った映画だ。

Ethan Siegel

Forbes JAPAN
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