ジム・ロジャーズ「これから史上最大の弱気相場がやって来る。今は株は持つべきではない、持つべきは米ドルだ」(東洋経済オンライン)
1.史上最大の弱気相場がやって来る ロジャーズ氏は現在、自身のポートフォリオの大部分を「米ドル建ての現金」で保有しています。二番目に多いのがスイスフランだと言います。 アメリカの市場は2009年以来、16年間にわたり繁栄を続けてきました。これはアメリカの歴史でも最長の上昇局面です。多くの人は「AI革命があるから今回は違う」と楽観視しますが、ロジャーズ氏は「歴史を見れば、本当に違ったことは一度もない」と切り捨てます。
「潮が引けば誰が裸で泳いでいたのかわかる」というウォーレン・バフェット氏の言葉を引用し、ロジャーズ氏は今を「何もしないことが最良の結果を生む時期」と定義しています。 2. なぜスイスフランではなく米ドルを持つべきなのか かつて、日本円やスイスフランは、危機の際の「避難通貨」として絶対的な地位を誇っていました。しかし、ロジャーズ氏はその認識をアップデートすべきだと警告します。 特にスイスフランについて、氏は2つの懸念を挙げています。
中立性の喪失: 近年の国際政治情勢の中で、スイスは完全な独立性を失いつつあると言います。 経済規模の限界: 世界中のマネーが逃げ込めば、通貨急騰を抑えるための介入が不可欠となり、かえって安定性を損なうということです。 では、なぜ債務大国であるアメリカのドルを保有するのでしょうか。それは消去法的な選択です。「完璧ではないが、現時点で他に代わる基軸通貨がない」からです。氏は将来的に中国の通貨が候補になると見ていますが、現状では「兌換性(他の通貨と自由に交換できること)」がないため、まだその時期ではないと分析しています。
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■金や銀は「保険」という位置づけで持て 3. 金と銀は「投資」ではなく「保険」として持つべき理由 ロジャーズ氏はポートフォリオの一部に「金」や「銀」などのコモディティを加えていると言います。実際に自宅にも金杯や銀杯があったりしますし、コインを上着のポケットに忍ばせるなどをしています。 26年1月末に金と銀などコモディティ価格が大きく下落しました。しかし、地政学リスクが引き続き残り、新興国の年金基金等が金を保有するニーズは依然としてあります。短期的に大きな調整はあったものの、長期的には保有できるという見解です。
「金や銀は、『投資』というよりは『保険』として位置づけている。将来の不測の事態に備えるための安全弁だ」 通常、株と金は逆の動きをしますが、現在は両方が上昇しています。これは世界中で紙幣が刷られすぎた結果、マネーが実物資産に逃避している証拠です。ロジャーズ氏は、ポートフォリオの10〜15%と言われてきた貴金属の比率を、現在はそれ以上に高める投資家が増えていることにも理解を示しています。 ■投資すべき「価値」をよく見極め、「バブル」を疑え
4. 暴落時に「狙うべきもの」と「避けるべきもの」 市場が暴落すると、すべての資産が安くなります。しかし、ロジャーズ氏は「安いからといって買うのは危険だ」と警鐘を鳴らします。 ではどんなことに気をつけるべきでしょうか。 人口と政治: 暴落した国でも、人口が増えており、政府が投資に前向きな改革を行っているなら、それは「人生最大のチャンス」になると言います。 不況に強い企業: 供給が減る中で生き残る「健全な財務」を持つ企業には投資できると言います。意外なことに、タバコや酒類などの嗜好品セクターは、不安な時代に強い傾向があるようです。
農業への注目: 「シリコンバレーではなく農場へ行け」というほどロジャーズ氏は農業に注目をしています。高齢化で農家が減る中、食料需要はなくならないからです。氏は「トラクターを運転できなくても、農業ビジネスには大きな将来性がある」と説きます。 短期間で急騰したもの: 高級ブランドバッグや宝石(ダイヤモンド)など、短期間で価格が数倍になったものはバブルの典型だと警告します。 理解できない技術: AIについては将来性を認めつつも、「仕組みを理解できないなら投資すべきではない」と警告します。
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5. 日本の都心の不動産と好調なインバウンドをどう評価すべきか 東京都心のマンション価格が高騰していますが、ロジャーズ氏は「23区の新築平均が1.3億円を超えた」という現状に、安易に飛びつくことを戒めます。 「かつてニューヨークの自宅を高値で売り抜けたときは、メディアで『不動産暴落』を予言して妻を怒らせたものだ。不動産は流動性が低く、売るのが難しい。投資するなら、東京以外のエリアや、流動性の高いREIT(不動産投資信託)を検討すべきだ」とロジャーズ氏は言います。
一方で、観光産業には極めて楽観的です。25年の訪日客は、4268万人と初めて4000万人を超えました。足元では中国人観光客の減少から勢いが落ちていますが、日本は「安くて素晴らしい観光地」として世界に再発見されています。このインバウンド需要は、「日本経済に残された数少ない希望の光」と言います。 ■ロジャーズ氏から「新NISA世代」へのメッセージ 「投資のタイミングを予言できる人はいない。しかし、準備をしておくことはできる」
ロジャーズ氏は、新NISAのような制度を「資産形成の第一歩」として高く評価し、今すぐ投資しないとしても「口座だけは開設しておくべきだ」とアドバイスします。チャンスが来たときに、すぐに動ける状態にしておくことが重要だからです。 投資とは、流行を追うことではありません。自分が深く理解している分野で、大きなチャンスが来るまで「静観」する忍耐力こそが、最終的に富を築く道なのです。 (当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載されています)
花輪 陽子 :ファイナンシャルプランナー