米国はウクライナへの「パトリオット」追加提供検討、トランプ氏表明

トランプ米大統領は25日、ウクライナへの地対空ミサイルシステム「パトリオット」の追加供給を検討すると表明した。同盟国から米国に対し、ロシアに戦争終結を迫る圧力を強めるよう要請を受けている中で、トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領と会談。会談は「良好」だったとトランプ氏は評価した。

  北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて行われた45分間の会談について、ゼレンスキー氏は「長時間に及び、中身のある」ものだったと説明していた。両者の会談は、ウクライナとロシアが戦争終結に向けた直接交渉を再開させて以降で初めて。この交渉は暗礁に乗り上げ、ロシアはここ数週間、ウクライナに対する空襲を激化させている。ウクライナ側には多くの死傷者が発生し、防空強化が喫緊の課題となっている。

  ハーグで行われた記者会見で、パトリオットについて質問を受けたトランプ氏は「いくつか提供できるかどうか、調べることになる。入手は極めて難しい」と述べ、「ウクライナはそれを何よりも欲しがっている」と続けた。

  ゼレンスキー氏はウクライナへの兵器売却でトランプ氏を説得しようと、会談に臨んだ。会談後に同氏は「本当に重要な課題を全て協議した。どのように停戦と真の平和を成し遂げるか、ウクライナ国民を守るかについて話し合った」とX(旧ツイッター)に投稿。詳述はせず、「詳細は追って話す」とした。

  両者の会談は4月にバチカンで行われて以来。当時はフランシスコ前教皇の葬儀の前に、約15分間話し合っていた。今月初めにカナダで行われた主要7カ国(G7)首脳会議に際して会談する予定もあったが、トランプ氏が帰国を前倒ししたため実現しなかった。

  ロシアのプーチン大統領は、停戦や本格交渉への参加を求める米欧の要請に応じていない。

  トランプ氏は25日の記者会見で停戦実現への自身の取り組みについての質問に、プーチン氏と話すだろうと回答。プーチン氏は戦争終結が必要だとも述べた。

  英国のスターマー首相は同日、首脳会議の「出席者ほぼ全員」の意向は「今こそウクライナ支援をいっそう強化」し、プーチン氏を「交渉の席に着かせる」べき時だと記者団に語った。

  ゼレンスキー氏はトランプ氏の「平和に近づくための用意と目配り」に謝意を示した。

  バイデン前大統領の下で承認されたウクライナ向け軍事支援の米国予算は、この夏にも尽きる見通しだが、トランプ氏は支援を更新しない意向を示している。地対空ミサイルシステム「パトリオット」など、米国しか供給できない兵器を必要とするウクライナにとっては、大きな課題だ。

  このためゼレンスキー氏は支援としての兵器の供与ではなく、購入を認めるようトランプ氏を説得しようとしている。また、プーチン氏を真剣な和平交渉に引き出すべく、ロシアへの制裁強化も求めている。 

  トランプ氏はこれまでのところ、プーチン氏に対する圧力強化には慎重な姿勢を崩していない。ロシアによるミサイルと無人機(ドローン)攻撃は激しさを増しており、24日の攻撃では21人が死亡、300人以上が負傷した。  

  ウクライナとロシアの代表団は、これまでイスタンブールで2回協議を行った。両国は捕虜交換と戦争終結に向けた提案書の提出には合意した。だが、ロシア側は、非占領地も含むウクライナ4州全ての割譲など強硬な要求を突きつけ、ウクライナは拒否した。

原題:Trump Meets With Ukraine’s Zelenskiy on Sidelines of NATO (2)(抜粋)

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