大人の心臓の細胞が「自己修復の力」を発揮する仕組みを解明
英国・ロンドンおよび日本・名古屋を拠点とするLYMPHOGENiX Limited(本社:英国ロンドン、Director:岩宮貴紘、松永昌之)と名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学の研究チームは、成人の心臓に存在する線維芽細胞の心筋梗塞後および虚血性心不全の心臓修復を促す新たなメカニズムを世界で初めて明らかにしました。この成果は、Nature系列の国際学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。
虚血性心不全は、心筋梗塞などによって心臓の一部が壊死し、炎症や線維化(硬くなること)によって心臓の働きが低下する病気です。本研究では、炎症性サイトカイン TNF-α と IL-4 による刺激が成人心臓線維芽細胞を特殊なサブタイプ(VCAM1陽性細胞)へと変化させ、強力な修復因子 アドレノメデュリン(Adrenomedullin) を分泌することを発見しました。この細胞群は心筋梗塞後および虚血性心不全の心臓において「リンパ管新生」を誘導し、浮腫・炎症・線維化を抑え、心機能の保持と回復に寄与することを明らかにしました。
本研究の成果は、患者自身の細胞を活用した新しい心不全治療の可能性を示すものであり、今後の心臓再生医療の大きな一歩と期待されます。
【本研究のポイント】
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成人心臓の線維芽細胞が炎症に応答して「リンパ管新生細胞」に変化
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リンパ管新生細胞から産生される修復因子アドレノメデュリンがリンパ管新生を促進し、炎症・線維化を抑制
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患者自身の細胞を活用した虚血性心不全治療の可能性を提示
【論文情報】
タイトル:Adrenomedullin production by adult cardiac fibroblasts via NF-κB/STAT6 signaling enhances post-infarction lymphangiogenesis and cardiac repair掲載誌:Scientific Reports(Nature Publishing Group)公開日:2025年9月16日