「日本は簡単だ」教えを広める宝石泥棒 「指南塾」も存在か
東京都荒川区の大通り沿いにある11階建てのマンションに2025年4月、段ボールを抱えて入る捜査員の姿があった。
「宝石泥棒」を追う警視庁捜査3課の刑事たちだ。
4階にある2DKの一室。犬猫の尿が染みついたような臭いが漂う中、室内からはダイヤモンドをあしらった19セットのピアスが見つかった。
その2週間前、甲府市であった宝飾品の見本市で盗まれた品の一部だった。
「あの部屋では外国語を話す派手な身なりの女性が暮らしていました」(近隣住民)
日ごろから何人もが出入りし、時に外の廊下にまで10足以上の靴が並ぶ「おかしな部屋」だったという。
海外から日本を狙う「宝石泥棒」が後を絶ちません。後編では日本を標的にする窃盗グループの組織的背景に迫ります。 前編 「緩い警備」を狙う者たち 羽田から飛んだ母国とは
一族で役割分担、マンション拠点に
各地で開かれる宝飾品の展示会や見本市に合わせ、海外から日本に来る「宝石泥棒」たちがいる。
いったい何者なのか。警視庁が摘発した事件からは、その一端が見えてくる。
荒川区のマンションに住んでいたのは、20代の夫婦だった。この2人を含むモンゴル人一族4人で、宝石盗を繰り返していたとみられている。
警視庁などによると、4人には分担した役割があった。盗みの実行役が40代の姉弟、盗品を預かって保管したとされるのが姉の息子夫婦だ。
事件は、25年4月に甲府市であった宝飾品の見本市で、ダイヤ付きのピアス59セット(1400万円相当)を盗んだとして弟が逮捕されて明るみに出た。
ほどなく、姉やその息子夫婦も窃盗や盗品等保管の容疑で逮捕される。そうして冒頭の家宅捜索へとつながった。
容疑者が口にした「師匠」の存在
一連の捜査で浮かび上がったのは、モンゴルから日本に「仕事」として宝石を盗みに来る者たちの存在だ。
夫婦のうち夫は、調べに対し「叔父(姉の弟)から宝飾品を受け渡され『誰かモンゴルに帰る知り合いに渡せ』と言われた」と供述した。
実際、盗まれたピアス59セットのうち、捜索で見つかったのは19セットだった。残りは既にモンゴルへと持ち出されていたとみられる。
一方、その指示を出したとされた弟は、捜査員に盗みを始めたきっかけを明かした。
「モンゴルにいた20年くらい前、知人から『日本で簡単に宝石が取れるぞ』と聞いた」
その知人を「師匠」と呼び、自分は「弟子」だと言ったという。
慣れてきたら一人前?
その供述から見えてくるのが、当地に「泥棒塾」とも言えるコミュニティーがあった可能性だ。
実は「師匠」とされた男性も、同じ25年の甲府の見本市で、ペンダント16個(500万円相当)を盗んだとして逮捕され…